「加速度センサー」――特徴と弱点、補完する角速度センサー:デジモノ家電を読み解くキーワード
ゲーム用コントローラを始め、携帯電話やデジタル家電での採用が進む「加速度センサー」だが、弱点もある。加速度センサーの特徴と弱点を挙げつつ、それを補完する「角速度センサー」の役割について解説する。
加速度センサーとは
加速度センサーとは、物体の動きを感知して数値化する装置を指す。衝撃や動きの速度(加速度)もあわせて感知することから、「モーションセンサー」とも呼ばれる。本格的な普及は自動車のエアバッグからスタート、物体の前後左右の動きと加速度を感知するこの装置は「2次元加速度センサー」と呼ばれ、近年ではノートPCの内蔵HDDを保護する用途などにも応用されてきた。
しかし2次元では検出範囲が限定されるため、肝心のときに作動しないケースもある。そこに登場したのが、前後左右に上下方向をくわえた「3次元加速度センサー」で、量産により価格が低下したこともあり、現在ノートPCやデジタル家電に搭載される加速度センサーの主流となっている。任天堂「Wii」の「Wiiリモコン」が人間の体の動きにあわせた入力デバイスとしての機能を提供できるのも、3次元加速度センサーの働きあってこそだ。
加速度センサーの弱点
加速度センサーにはいくつかの方式があり、現在の主流が「ピエゾ方式」と「静電容量方式」ということは、以前(デジモノ家電を読み解くキーワード:「加速度センサー」――新iPod nanoに見るトレンド)に紹介したとおり。今回は、前回触れなかった「軸」について説明してみよう。
3次元加速度センサーにおける「軸」とは、X/Y/Z各方向の動きに対する反応の有無を意味する。2次元加速度センサーならば、XとYの2軸だ。2軸では検出範囲が狭いことは前述したとおりで、3軸あればひととおりの動作は検出できるが、実際には難しい場面も存在する。
その例が、重力に変化がまったくない状態。通常、機器が傾けば重力に変化が生じ、加速度センサーも反応するが、傾かせずに(重力をまったく変えずに)機器を回転させれば、センサーはその動きを感知できない。垂直に設置した車のハンドルの中心にセンサーを置き回転させても、どれほど回転したのかを測ることは難しいのだ。
「加速度+角速度」がトレンドになる?
実際にはまったく重力が変化しないという場面は考えにくく、機器の中央にセンサーを設置しないなどの方法で対処できるが、近年では「角速度センサー」(ジャイロセンサー)を併用する事例が増えている。角速度センサーは基準軸に対して物体が何度の回転運動をしているか測定するために、加速度の影響を受けず、角度や角速度(1秒間に点が動く道のり)のすばやい変化に対応できることから、3次元加速度センサーでは対応しきれない場面を補正することが目的だ。
この2種類のセンサーを組み合わせた「6軸センサー」(加速度/角速度センサーが各3軸)は、重力に変化が現れない状況を含め、高精度で機器の動きを追うことができる。これまでは難しかった回転や手ブレなど微妙な動きも、かなりの確かさで感知できるようになるはずだ。コスト的な問題さえ解決できれば、今後ますます採用事例は増えることだろう。
執筆者プロフィール:海上忍(うなかみ しのぶ)
ITコラムニスト。現役のNEXTSTEP 3.3Jユーザにして大のデジタルガジェット好き。近著には「デジタル家電のしくみとポイント 2」、「改訂版 Mac OS X ターミナルコマンド ポケットリファレンス」(いずれも技術評論社刊)など。
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