今が“旬”のAVアンプ、価格帯別に注目機種をチェックする:AVアンプ特集(3/3 ページ)
2009年春の時点で、AVアンプは何度目かの旬を迎えつつある。HDオーディオ対応機がエントリーモデルにまで広がり、比較的安い製品でもBlu-ray Discの音を存分に楽しめるようになった。今回は価格帯別に注目の機種を紹介していこう。
上級クラス(20万円以上)
20万円以上の上級クラスは、2007年にHDMI1.3a対応していたメーカーも少なからずあったため、2008年秋組はどちらかといえば後発組というイメージがある。しかし“後出し”であるがゆえに、熟成された高音質テクノロジーをいくつも投入して、ハッと目をひく高レベルのサウンドを堪能させてくれた製品がいくつもあった。
まず、パイオニアの「SC-LX71」は、AVアンプという既成概念から考えるとかなりユニークな存在だった。定評ある自動音場調整機能によって音質を高度に整えるだけでなく、接続されたすべてのスピーカーの位相特性をそろえる「フルバンド・フェイズコントロール」によって、スピーカー自体のもちクセまでもことごとく矯正。これまでに体験したことのない“極上の音響特性”を持つサラウンド空間で、迫力溢れる映画を堪能することができた。またUSBやLAN、PHONO入力などの新旧オーディオ端子も用意。マルチメディアセンターとしての実力もいかんなく発揮してくれる万能機だ(→もっとも安い「フルバンド・フェイズコントロール」対応機、パイオニア「SC-LX71」)。
ソニーの「TA-DA5400ES」は、昨年多くのユーザーから好評を得た「TA-DA5300ES」の後継モデル。全体的にはマイナーバーションアップにとどまっているが、どんなスピーカーでも軽々と動かすパワーアンプの駆動力と、ピュアオーディオとの融合も充分果たせるサウンドクォリティーの高さは同シリーズならではのアドバンテージ。HDMI出力端子が2系統に増えたことで、フラットテレビとプロジェクターが同居するシステムを構築できるようになったこともありがたい(→ソニー、圧縮音源の音質を「向上」させるAVアンプ「TA-DA5400ES」)。
ヤマハ「DSP-Z7」は、フラッグシップ機「DSP-Z11」の思想と技術を受け継ぐものだけあって、アナログ部の物量投入とチューニングにより、目を見張るほどのサウンドクォリティーを見せつけてくれた。そういったしっかりした基盤のうえに、さらにシネマDSP3(キュービック)モードなどのヤマハが得意とする立体音響技術を投入。AVアンプとしての高い実力はもちろん、上級オーディオ用アンプとしても違和感なく活用できる懐の深さを垣間見せてくれた。HDMI端子が入力4系統/出力2系統も用意されているのもうれしいが、USBやLANなど、マルチメディア性の高さも光る。映画も音楽もワンシステムで、かつ上質な音で楽しみたい、というには大変魅力的な製品となるだろう(→価格に見合った満足度、ヤマハの準フラグシップ「DSP-Z7」)。
さらにハイエンド志向を目指したいという人には、マランツのセパレート式AVアンプ「AV8003+MM8003」をお勧めしよう。高級オーディオ機器の代名詞ともいえるプリ/パワーのセパレート構造によって、音質的に圧倒的なアドバンテージを持つと同時に、DLNA対応機器に保存されている音楽/動画ファイルが再生できる世界初のAVアンプという先進性も見のがせない。価格は桁違いに高いが、その分満足度の高さも約束できる製品である(→マランツのセパレート式AVアンプ「AV8003/MM8003」でBD「再会の街で」を聴く)。
この価格帯の製品は、今後マランツAV8003のようなネットワーク系の充実が推し進められそうだ。音質的な向上とともに、そういった使い勝手の改良にも注目していきたいと思う。しかしながら、この価格帯の新製品はひとまずリリースし終えた印象で、しばらくは大きな動向はなさそう。そういった意味では安心して買える時期ともいえる。
2009年春の時点でAVアンプは何度目かの旬を迎えつつある。近々に発売が予定されているエントリーからミドルクラスの動向も外さずチェックしつつ、それらを含めて幅広い価格帯から、自分にとってのベストワンを選び出してほしい。次世代HDMIの時代も確実に近づいているものの、その規格が生かされるのはもうしばらく先のお話。あまり心配せず、手持ちのシステムをグレードアップできる機種をじっくりと見定めたい。きっと多くの人が、「買い替えて良かった」と実感できるはずだ。
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