先駆者東芝に聞く――LED電球の現状と未来:インタビュー(2/2 ページ)
「E-CORE」(イー・コア)というブランド名でLED電球を展開する東芝ライテック。同社はLED照明に早くから注目し、一般電球形のLEDについても低価格化や高性能化に積極的に取り組んできたメーカーだ。LED照明事業の現状と今後の展望について話を聞いた。
――LED電球を選ぶときはどんな点に注意したらいいですか?
竹中: LEDも万能ではなくて、例えば業務用途で色味を気にするような場所だと、今の段階では少し支障があります。当社の場合、一般電球形LEDの平均演色評価数は昼白色相当だとRa70、電球色相当だとRa80です。単体で見る分にはどのメーカーも一緒に見えるのですが、手をかざしてみたりすると違いがよく分かります。
色の再現力が悪いものを買うと、料理などが美味しそうに見えないので要注意ですね。とくに電球色相当のほうが差が大きくて、赤の再現力が悪いものが少なくありません。LEDはもともと青色で発光していて、それに黄色の蛍光体を付けて白く見せているので、赤を再現するのが苦手なんです。
だから、赤をうまく表現するために、蛍光体の混ぜ方や塗り方、材質などて技術開発要素はまだあるんです。色味をよくすると、今度は明るさが落ちてしまうという問題があるので、そのバランスも難しいです。ちなみに当社の業務用のダウンライト器具ではRa92という商品もあります。
演色性については公開しているメーカーと非公開のメーカーがあり、そのほかのスペックにしても、店頭パンフレットを見ると情報の開示の範囲が違います。LEDというのはメーカーごとに違いがあるので、その違いを踏まえた上で賢く選んでいただきたいですね。
例えば明るさにしても、白熱灯の時代は「○W」というのが明るさを表す目安として認知されていますが、ワットというのは消費電力であって、明るさの単位ではありません。当社では明るさを示す数値として、“ルーメン”という単位を前面に出していくことにしました。パッケージにもそれが表れていて、最初のころは「○W相当」という表記が上に来ていたんですが、今はルーメンを上に表示して、下に小さくワットを入れています。
当社が今春に店頭に置くパンフレットには、すべての商品の比較を載せていて、直下照度の比較や照射した場合の写真など、お客さまにお伝えしたい情報はとにかくすべて載せた充実した内容になっていますので、ぜひ店頭でご覧になっていただきたいと思います。
――一般電球形LEDは今後どのように進化していくと思われますか?
竹中: 性能面では、例えば演色性なら、LEDがもともと持っているポテンシャルを考えると、まだまだこんなものではないので、今後はより高演色性のもの出てくると思います。
寿命については現在4万時間としていますが、実はLEDの素子自体の寿命はもっと長く、コンデンサーなど回路の部品のほうが早く壊れる可能性が高いです。当社としては、そういうところにこだわって作っていきたいですね。
われわれは電球形蛍光灯の時代から、白熱灯と同じ形状の中にさまざまな回路を入れて小型化していく経験を積んできました。白熱灯と同じように口金の根本付近まで光る電球形蛍光灯を作っているのは、当社だけです。LEDになってもそれは同じことで、これまでやってきたことと同じことをしているだけなんです。
実は電球形蛍光灯についても当社としては捨てがたい市場であり、当面はLEDと共存していくだろうとは思いますが、今は市場全体の注目がLEDに移ってきています。現在、E26のソケットがだいたい一般市場で1億5000万個くらいありますが、すでにそのうちの半分以上が電球形蛍光灯になっています。LEDはこれからそこに飛び込んでいくわけです。
今年は市場全体で月に100万個以上、1年間でおよそ2000万個くらいになるのではないかと思います。予測を上回ってどんどん市場が大きくなっていますし、新規参入してくる会社が多いのにも驚きます。LED電球の場合、半導体の部品を組み合わせれば製品になることはなるのですが、ただ本当の“灯り”を作るという点では違った意味があると当社では考えています。われわれとしては老舗のメーカーだからこそ、配光や色味にはこだわっていきたいです。
――LED照明全般で見ると、これからどのように市場が動いていくのでしょうか?
現在は一般電球形が注目されていますが、これは従来の白熱灯と口金も形も同じということで、「LEDに置き換えができる」という具体的なイメージをお客さまに持っていただいたからだと思うんです。
でも実際にLEDモジュールを見ると分かるのですが、LED照明というのは電球の形をしている必要はまったくないんです。例えばモジュールを真っ平らに並べて、完全なフラット形状というのも考えられます。
また、現在、照明器具メーカーさんにLED照明をユニット化したものを売り込んでいるのですが、これを使えば照明器具メーカーは回路などを自社で開発する必要がなくなります。そのうちLEDのユニットを使ったユニークな形状の照明器具がどんどん登場するのではないでしょうか。
部屋全体を明るくするなら、現時点では蛍光ランプのほうが適していますが、LEDが抜くのも時間の問題だと思います。今は電球形を置き換えることに重点が置かれていますけど、これからはLEDであることの意味が問われていく時代になると。“灯り”自体が変わっていく、そんな新しい時代がやってくると思います。
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