3Dテレビの新たな可能性を示す「AQUOSクアトロン3D」の明るさ:本田雅一が徹底分析(2/2 ページ)
“AQUOSクアトロン3D”の映像を一目見て、「おっ?」と軽い驚きを感じた。単に明るいだけではない。普通はトレードオフの関係にある「明るさ」と「クロストークの抑制」が見事に両立していたからだ。
二律背反の明るさとクロストーク
とはいえ、明るいだけで喜んではいけない。なぜなら、3Dテレビにおいて、“明るさ”と“クロストーク”はトレードオフの関係にあるからだ。クロストークとは、左右の映像が混ざって見えてしまうこと。明るさを稼ぐために3Dメガネの開口時間やバックライトスキャンの発光時間を長く取ると、クロストークが増加する。クロストークが増えると、左右像間にある両眼視差(両目の位置が異なることによる像の見え方の違い)が二重輪郭線として見えるなど、さまざまな映像破たんが生じてしまう。
いくら明るくとも、クロストークが増えしまっては“良好な3D画質”とは言えないのは自明。逆にクロストークが少なくとも、極端に暗い映像になってしまっては、映像制作者の意図を正確に伝えることはできない。このトレードオフを、どのあたりに落とし込むかが3D液晶テレビを作る上でのポイントになる。
LV3の映像を一目見て、「おっ?」と軽い驚きを感じたのは、この相反する2つの要素を両立できていたからだ。クロストークのレベルは、3D液晶テレビの中では明らかに少ない。また、3D視聴用に動作中のメガネを上に白い壁の方にかざしてみると、ほかの一般的な3Dテレビ用メガネに比べて透過率が高く見えた。液晶パネルや映像エンジンはもちろんだが、3Dメガネを含むさまざまな工夫の積み重ねが、クアトロン3Dの明るさと低クロストークを実現しているのだろう。
加えて感心したのは、無理のない色再現性。一般的に3Dメガネを通すと、色あいがやや青方向にシフトして見えてしまう。どの3Dテレビもメガネを通した時に正常な色になるように調整が施されているが、表現力に余裕がなければ補正しきれない。LV3の場合は、クアトロンの明るく濃度の高い黄色を再現できる特長が生かされているのか、補正後にも不自然さを感じない映像に仕上がっている。Blu-ray 3Dディスク「タイタンの戦い」では、3Dテレビとしての基礎体力の高さが感じとれた。
なにより、相反する“明るさ”と“クロストークの抑制”を両立したことは、液晶テレビの3D表示機能に関して全く新しい可能性を示したと言っても過言ではない。3D対応の大画面テレビを探しているのなら、LV3シリーズを検討リストの上位に書き込んでおくべきだろう。
すべてはUV2A技術から
クロストークを一口で説明すると、右眼用と左眼用の映像が混ざって二重に見えてしまうことだ。映像としての破たんであると同時に、視聴者にとってはストレスの原因にもなる。3Dコンソーシアムの安全ガイドラインによると、大きなクロストークは眼精疲労を引き起こす可能性があるという。
本文中で触れているように、クロストークと明るさはトレードオフの関係にあり、両立させることは極めて難しい。左目用と右目用の画像が混ざるのは、表示の切り替えがスムーズではないからだ。クロストークを抑えるには応答性能が早い液晶パネルとバックライトを高速にオン/オフする「スキャンバックライト」の組み合わせが有効だが、その条件はかなり厳しい。
シャープの研究によると、画面を上下2分割のスキャン点灯の場合では、液晶パネルが2ミリ秒以下の応答性能を持っていなければ見やすい3D画面にはならないが、より細かく制御する多分割バックライトスキャン点灯なら4ミリ秒以下で十分な効果が得られるという。もちろん従来の液晶技術では高いハードルといえるが、シャープの場合はUV2A技術で4ミリ秒の応答性を持つ液晶パネルをすでに実用化していた。さらに4原色化により光の利用効率を向上させ、FRED(Frame Rate Enhanced Driving)技術でシングル信号配線を実現。これら4つの独自技術を組み合わせることで、明るさを犠牲にしない低クロストーク化を可能にしたのだ。
4原色化のみならず、3Dでも大きな役割を果たしたUV2A。「AQUOSクアトロン3D」を見れば、2年前のUV2A発表時に「次世代液晶のコア技術」と呼ばれた理由が良く理解できる。
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提供:シャープ株式会社
アイティメディア営業企画/制作:ITmedia +D 編集部/掲載内容有効期限:2010年9月14日
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