“Z”の音を継承した上級AVアンプ、ヤマハ「RX-V3067」:羊の皮を被った狼!?(2/2 ページ)
ヤマハのAVアンプ新製品「RX-V3067」をじっくりと視聴する機会を得た。価格的には「DSP-AX3900」後継のミドルクラスといえるが、実際に試聴すると、そう単純な存在でないことが分かった。
ユーザビリティーをチェック
事実上、販売終了となるDSP-Z7までフォローする役割を担うRX-V3067だが、そのユーザビリティーはどうだろう。今回の取材時、最終試作をヤマハの視聴室でじっくりと吟味する機会に恵まれたので、詳しく報告しよう。
まず機能面に関しては、先にも述べたとおり文句のない充実さを誇る。特に96kHz/24bitのWAVやFLACに対応するネットワークレシーバー機能は、PCオーディオシステムとの統合が図れることから、今後は多くの人が重宝することになるだろう。実際にNASを使った接続/再生を試みたが、セレクターでソースをあわせると、すでにNASが自動認識されており、当たり前のようにリストが表示され、フォルダ→楽曲と選ぶだけで音楽を再生することができた。シンプルでありながら的確なメニュー表示も含めて、ネットワークレシーバー機能は使いやすかったといえる。
一方で、さすが高級機というべきだろう、入力系統が多数用意されている点も特色だ。HDMIは入力が8系統あり、そのうち1系統はフロントパネル側に用意されている。これだけの数が用意されていれば、HDMI端子が足りないという事態はまず起こりえない。またHDMI出力も2系統用意されていて、薄型テレビとプロジェクターを同居させているユーザーにはありがたい限り。どちらもテレビ側の音声を受け取ることができるARC対応(メニューから切り替える方式)なので、こちらの接続も簡単だ。このほかにも、アナログ入力(10系統)やデジタル入力(光4/同軸3)、D4ビデオ、映像コンポーネント端子なども用意されているので、現在所有の機器を継続して使いたいという人にも重宝する。
話は変わって、フロントパネルに目をやると、すぐ隣に置かれた弟機「RX-V2067」と区別がつかないくらいそっくりのデザイン。確かにZシリーズのような重厚感はないが、いまどきの洒落た印象には好感が持てる。とはいえ中身の違いは姿に現れないものだなぁ、と何気なくボリュームダイヤルを回すと、しっかりとした手応えのある感触が返ってきた。試しにRX-V2067のダイヤルを回すと、こちらは軽く、クルクル回せそうな印象だ。姿は一緒だが、操作感にもこういった違いを与えているのは、嬉しくもあり驚きだった。
気になるサウンドを徹底チェック
さて、RX-V3067の真骨頂である、サウンドクォリティーはいかがなものだろう。まずは「セリーヌ・ディオン Live in Las Vegas:A New Day」を視聴すると、ノビと張りのある彼女の歌声が存分に堪能できた。伴奏の確かさや迫力も充分。音色的にはナチュラル指向で、筆者が会場で体験したサウンドにとても近い印象を持った。
続いて「アンジェラ・アキ in 武道館」を聴くと、こちらもなかなかの好感触。アンジェラの声に厚みがあり、歌がとても印象的に聴こえる。また観客の拍手の響きが、ここまで広がって感じたのも初めてだった。このとき、試しにシネマDSPのモードをいくつか試してみたが、こちらもなかなかよかった。エフェクトのタイプには人それぞれの好みがあるだろうが、好印象だったのは「まるで壁が存在しないかのように大きく拡がる音場」と「DSP効果を使っても劣化を感じない音質」だ。両者ともヤマハが以前から持ち合わせていたアドバンテージだが、RX-V3067ではシネマDSP3(キュービック)の名にふさわしい、Zシリーズ同等のクォリティーを確保していた。
さらに驚きだったのは、映画コンテンツだ。Blu-ray Disc「300」で無数の矢が飛んでくるシーンを見ると、遠くから急速度で近づいてくる矢の音がとてもリアルで、恐ろしく思えるほど。かつ刺さり方もとても鋭いので、思わず避けてしまうくらい臨場感はたっぷりだ。セリフに関しても、役者の微妙なニュアンスまで伝わってくるため、ストーリーにどっぷりとはまり込むことができる。そのいっぽうで、緻密なまでの音場再現を体感できた。俳優のセリフと効果音、そしてBGMが見事に分離し、別々のポジションとレイヤーから伝わってくるのだ。ここまで正確かつ超分解能的に、映画のサウンドフィールドを展開してくれたAVアンプはほとんどない。この音場感の正確さに関しては、DSP-Z7を超えた存在と断言しよう。
このようにRX-V3067は、機能的にはこれ以上はないくらい充実した内容を持つ最新モデルでありながら、フラッグシップのテクノロジーを受け継ぐことで、上級クラスを超えハイエンドに迫る実力を持ち合わせることとなった、貴重な存在である。外見は下位モデルと同じ意匠が与えられているが、性能面を見ればこれほど魅力的なモデルはない。Zシリーズに迫る、いやDSP-Z7に対しては部分的にアドバンテージを持つ実力派が、3分の2程度の価格で手に入るのだ。そう考えると、23万3100円という価格が、まるでバーゲンプライスのように見えてくるから不思議だ。
型番 | RX-V3067 | RX-V2067 | RX-V1067 |
---|---|---|---|
アンプ構成 | 140ワット×7(11.2chまで対応) | 130ワット×7(9.2chまで対応) | 105ワット×7(7.2chまで対応) |
シネマDSP | シネマDSP3(キュービック) | シネマDSP<3Dモード> | |
HDMI端子 | 入力×8、出力×2 | ||
そのほか入力端子 | 光デジタル×3、同軸デジタル×4、D端子×1、コンポーネント×4、S映像×5、コンポジット×5、USB、iPodドック(オプション)接続I/Fなど | ||
外形寸法 | 435(幅)×430(奥行き)×182(高さ)ミリ | ||
重量 | 17キロ | 16キロ | 14.7キロ |
価格 | 23万3100円 | 17万8500円 | 12万750円 |
発売日 | 10月上旬 |
関連記事
- “見えないトコロ”が進化したラックシアター、ヤマハ「YRS-1100」
しゃれたルックスのシアターラック、ヤマハ「POLYPHONY」(ポリフォニー)シリーズに新ラインアップが登場した。デザインコンセプトを継承したため、一見して違いは分からない。しかし、実は見えにくい部分にさまざまな進歩があったようだ。 - 隙のない進化を果たしたヤマハ「YSP-4100」
ヤマハの「YSP-4100」は、HDオーディオ対応を果たした新世代のサウンドプロジェクターだ。手軽に設置できる一体型ボディーから出てくるリアルサラウンドは、従来の5.1chから7.1chへと進化。その音をじっくりと聴いてみた。 - コンパクトなボディーからあふれる心地よい音 ヤマハ「TSX-70」
春の新生活シーズンに向け、そろそろ準備を始めた人も多いのではないだろうか。ヤマハの「TSX-70」は、お気に入りの楽曲でさわやかな目覚めを演出するiPod/iPhone対応デスクトップオーディオ。新生活のおともにいかが? - 価格に見合った満足度、ヤマハの準フラグシップ「DSP-Z7」
DSP-Z7は、多くのラインアップを持つヤマハAVアンプのなかでも、フラグシップの「DSP-Z11」に次ぐポジション。Z11から数々のテクノロジーを受け継ぎつつ、およそ半額のプライスタグを実現させた意欲作だ。 - 「硫黄島からの手紙」とヤマハ「DSP-Z11」のCINEMA-DSP HD3
同一の作品をAAC音声とロスレスHDオーディオで聴き比べると、その音質差にはげしく驚かされる。相応のサラウンド再生環境を整えてみれば、誰にでも分かる“違い”だ。そこで今回から、3回連続でHDオーディオに対応したAVアンプの旗艦モデルを取り上げよう。初回はヤマハ「DSP-Z11」だ。
関連リンク
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.