ヤマハらしい“モニターサウンド”、カナル型イヤフォン「EPH-100」:野村ケンジの「ぶらんにゅ〜AV Review」(2/2 ページ)
ヤマハ初のカナル型イヤフォン「EPH-100」は、小口径のダイナミック型ドライバーユニットを耳穴の奥に配置することで、外耳道内の不要な反射を抑制するというユニークなコンセプトを持つ。さっそく試聴した。
付属品についても、ちょっとユニークなところがある。SSからLLまで5タイプのイヤーピースが付属するのは特殊な形状によるものだろうが、2メートルの延長ケーブルやステレオミニ→ステレオ変換プラグまでも付属するカナル型イヤフォンはめったにない(しかも本体ケーブルのステレオミニプラグも含めてすべて金メッキ仕様)。このあたりは、モニター用として活用されることを見越しての配慮かもしれない。
和製モニターと呼びたいサウンド
ヤマハサウンドというとつい自然で丁寧な再生をイメージしてしまうが、「EPH-100」はそういった共通項を持ちつつも、ハキハキしたキレの良い音が楽しめるのが特長だ。
高域がよく伸びるチューニングが施されているのに対し、低域はボトムラインへの伸びが弱いため(量感はそこそこある)、ちょい聴きするとハイバランスのように思えるかもしれないが、じっくり聴き込んでみると、実はモニター的なフラットバランスを目指して作り上げられていることに気づく。さらに変調を感じない自然な音色と、(ドライバーが鼓膜に近いためか)一見荒々しく思えるが実はなかなか良好な解像度感によって、録音クオリティーまで如実に感じられる高性能さも有している。シュアーやゼンハイザーとはまた別種の、和製モニターと呼びたいサウンドだ。
と、ここまで書いて思い出したのが、往年の定番モニタースピーカー、ヤマハ「NS-10M」の音。当然ながら音色や帯域バランスは異なるが、中高域を細やかに、かつストレートに鳴らすことで、サウンド傾向を分かりやすく披露する聴かせ方がどことなく似ている。例えば、上原ひろみさんのアルバム「Vioce」を聴くと、複雑さよりも美しさを重んじた響きを持つヤマハ製ピアノならではのサウンドが素直に堪能できるのだ。「ヤマハだけにピアノが得意なのは当たり前」と思うかもしれないが、逆にここまでヤマハらしいピアノの響きを聴かせてくれるカナル型イヤフォンはまずない。それだけでも充分に価値がある存在といえる。
音質評価 | |
---|---|
解像度感 | (粗い−−−○−きめ細かい) |
空間表現 | (ナロー−−○−−ワイド) |
帯域バランス | (低域強調−−−−○フラット) |
音色傾向 | (迫力重視−−−○−質感重視) |
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