192kHz対応を果たしたヤマハ「NP-S2000」で味わう“現場の空気感”:山本浩司のアレを“聴く”なら是非コレで!(2/2 ページ)
176.4k/192kHzのWAV再生に対応したヤマハのネットワークオーディオプレーヤー「NP-S2000」。演奏現場の空気感がより生々しく再現される様は、ハイレゾファイル再生の妙味といえる。
さっそく愛用プリアンプとバランス接続し、本機でさまざまなハイレゾ音源を聴いてみた。本機NP-S2000が再生を保証しているのは、先述のようにWAV形式の176.4/192kHzの24ビットまでの音源だが、実際に試してみると、うれしいことにハイレゾファイルのデファクト・スタンダードとなりつつあるFLAC形式の176.4k/192kHz音源もそのほとんどが再生できた。
ただし、NASとの相性もあるようで、最新ファームウェアをインストールしていなかったQ NAP製のNASではFLAC形式の192kHz音源で音が途切れる症状が発生したし、その最新ファームウェア版でも一部で再生できない192kHz FLAC音源が存在した(HDトラックスからダウンロードした『What's New/リンダ・ロンシュタット』など)。それでも、本来は非対応の176.4k/192kHz FLAC形式が再生できたのはうれしい誤算だ。
演奏現場全体が眼前に出現したかのようなイリュージョン
さて、その音はこれぞヤマハ・トーンといいたくなる透明度の高さがあり、クリスタルクリアーな輝きに満ちている。演出臭が少なく、ハイレゾファイルならではの音の魅力をしっかりと伝える音調だ。
では、ハイレゾファイル再生の魅力とは何か。それは演奏現場の空気感の生々しい再現に尽きると思う。本機のような優れたネットワークプレーヤーでハイレゾファイルを聴くと、スタジオやホールなどの微細な空間情報がきめ細かく描写され、演奏者のみならず、その演奏現場全体が眼前に出現したかのようなイリュージョンが味わえるのである。そのイリュージョンは、音源のサンプリング周波数が上がるにつれてより濃厚に立ち現れてくるというのが、ハイレゾファイル再生を続けてきた筆者の実感だ。
それから、揺るぎない低音の安定感に支えられた隈取り鮮やかな音像描写、音像がまったくにじまないボーカルの空間定位のみごとさに、本機の電源回路の優秀さ、本格的な筐体設計が採られたドライブレス・プレーヤーのメリットを実感する。
データディスクからコピーしたアストル・ピアソラのアメリカン・クラーヴェ3部作(イーストワークス)のハイレゾファイル(176.4kHz/24ビット WAV形式)がじつにすばらしかった。これは、アルゼンチンタンゴの革新者だったピアソラが、1980年代にインディペンデント・レーベル「アメリカン・クラーヴェ」のキップ・ハンラハンをプロデューサーに迎え、クインテット(五重奏団)て録音した“人類の至宝”といってもおおげさではない音楽芸術。その中の1枚『ラ・カモーラ:情熱的挑発の孤独』の中の「Soledad(孤独)」の演奏をNP-S2000で聴き、ピアソラの弾くバンドネオンのりん然としたひびきの深さ、クインテットの奇跡的なハーモニーの美しさに心打たれた。
このアルバムは、オーディオファイル向けに緑色特殊コーティングが施されたハイブリッドSACDが発売されているが、わが家の再生システムでの比較では、100万円を超える高額なSACDプレーヤーで再生するよりも、NP-S2000でのデジタルファイル再生のほうが、明らかに先述した演奏現場の空気感が濃密に引き出されていることが実感でき、ぼくを驚かせた。
いずれにしても、約20万円という値段で何百万円もする超ハイエンド・プレーヤーで聴く16ビットCDを凌ぐ音の可能性を実感させるNP-S2000の凄さに、改めて畏敬の念を覚えた試聴だった。ぜひ多くの音楽ファンに176.4k/192kHzのハイレゾファイルに対応した新しいNP-S2000の音に触れていただきたいと願う。
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