豊かな拡がりでノリのよい演奏を満喫、ファイナル 「Adagio V」:野村ケンジのぶらんにゅ〜AV Review(2/2 ページ)
今回は、ファイナルオーディオデザインの新製品「Adagio V」をピックアップ。新開発の8ミリドライバーを搭載するAdagioシリーズにあって、ステンレスの削りだし筐体を採用した上位モデルとなる。
「Piano Forte II」が進化したような音色
このサウンド傾向は聴いたことがある。そう、音色、というか音楽の表現がとても「Piano Forte II」に似ているのだ。あれを密度感の高い丁寧な音に進化させて、さらに高域への響きを伸びやかにした印象だ。低域の雄大さは多少影を潜めるものの、ベースのボリュームは充分以上だし、中域をしっかりと際立たせるところは相変わらずなので、女性ヴォーカルやピアノの主旋律がとても印象的で、音楽の臨場感が高い。さらに8ミリドライバーのおかげか、キレとスピード感が数段増しているので、ピアノなどは、アタックが力強く、それでいて余韻の響きが美しい演奏が楽しめる。
現代音楽との相性がいまひとつなのも相変わらず。低能率のフルレンジスピーカーで再生されることを想定している最新Jポップや打ち込み系などは、もともとトレブル(高域)をアップしているため、高域の反応がよい「Adagio V」で聴くと、キンキン、ザリザリといった耳障りな音が目立つようになってしまう。
このように、音楽ジャンルを多少選ぶ傾向があるものの、「Piano Forte II」よりは格段に懐が深いし、クラシックやジャズなど得意な音楽ジャンル(いわゆるアンプラグド系)では、それ専用に作られたのではないかと思えるくらい、臨場感あふれるサウンドが楽しめる。この点はとても魅力的だ。
なお、小口径のダイナミック型ドライバーながらも、エージングは結構時間をかけた方がよさそう。今回の試聴ではまる3日ほどエージングを行ったが、まだまだ低域が抜けきっていない気配がある。じっくりつきあって育て上げたい、そう思える良質な製品だ。
音質評価 | |
---|---|
解像度感 | (粗い−−−○−きめ細かい) |
空間表現 | (ナロー−○−−−ワイド) |
帯域バランス | (低域強調−−−○−フラット) |
音色傾向 | (迫力重視−−○−−質感重視) |
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