魅せる有機EL、技術押しのCrystal LED――CESまとめ(前編):2012 International CES(2/2 ページ)
今年のCESは、LGとSamsungの大型有機ELに始まり、第2世代Google TV、そしてソニーの“隠し球”「Crystal LED Display」と話題に恵まれていた。全体を通して感じた傾向とトレンドをまとめていこう。
Samsungの有機ELディスプレイは異なる色の発光素子を並べるタイプ、LGのものは白色の発光素子に液晶シャッターのカラーフィルターを採用したタイプといわれているが、実際にどの程度両者が異なるのかは分からなかった。後者は発色や視野角の面で不利だとされるが、実際に見た感じは色味も十分で、視野角も通常の液晶パネルと比べてかなり広く、十分にインパクトがある。
一方で、消費電力や価格、パネル寿命(あるいは焼き付き)など、大型有機ELディスプレイで課題になるとみられるポイントについてはLGとSamsungともにいっさい触れておらず、展示ブースを訪ねても情報は得られなかった。消費電力の低さが有機ELのメリットの1つであるが、同型サイズのLED液晶パネルと比較してどの程度差があるのかは気になるところ。また、有機ELパネルは構造がシンプルなため低コスト化が可能であるとされたが、実際には歩留まりなどの理由もあり、大型パネルの量産となるとハードルは高い。
なにより気になるのは、パネル寿命の問題だ。有機ELは3原色の発光素子をパネル上に並べることでTVにおける“ドット”を再現しているが、素子自体の寿命があり、さらに発光素子の種類(色)によってこの寿命が異なるため、時間が経つにつれてディスプレイの色が赤味を帯びてきたり、よく使う部位(操作パネル表示など)で焼き付きを起こしたりと、さまざまな問題が発生することが指摘されている。スマートフォンのように数年で買い替える製品なら問題ないだろうか、テレビは製品としての寿命が違う。実際のパネルとしての寿命がどの程度あるかは、今後の追加情報待ちだ。
ソニーのCrystal LED Display
韓国2社の話題が先行する形となったが、合わせて大きなインパクトをもって迎えられたのがソニーのCrystal LED Displayだ。有機EL(Organic Light-Emitting Diode:OLED)が文字通り有機物の発光素子を利用するのに対し、Crystal LEDは通常の“LED”を小型化したものを等間隔でパネル上に敷き詰めてディスプレイとしたもの。照明にも使われるLEDが600万個も並んでいるわけで、ある意味で究極の自発光デバイスといえるかもしれない。
こちらはLGやSamsungの展示ブースとは異なり、同型の液晶パネルと並べての技術展示が中心で、発色や明るさをアピールするものとなっていた。液晶とは明るさや色味が明らかに異なり、特に夜景を見たときのダイナミックレンジの広さや細部の再現(つぶれない)といった特長がある。一方で液晶では全体に補正がかかったようなシックな色調なのに対し、Crystal LEDではよりはっきりとした色合いに感じられる。どちらかといえば、ややきつい色合いだ。このあたりは好みにも左右されると思うが、Crystal LEDではより正確な色再現が可能とのことで、今後の調整次第だと思われる。
後編では、第2世代の「Google TV」などスマートテレビ関連の動向をお伝えしたい。
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