“置く”だけで音の悩みを解決? ヤマハの調音パネル「ACP-2」に驚いた(2/2 ページ)
パネルを1枚、部屋に置くだけでオーディオの音が変わる。にわかには信じがたいかもしれないが、理屈を知り、実践してみると認識が大きく変わることもある。今回はそんな事例のお話だ。
ボーカルがそこに出てきましたよ
まずは、左右スピーカーの間、ちょうど真ん中の壁面にACP-2を1枚だけ設置してみた。するとどうだろう、あんなに気になっていた左側からのブーミーな低音が全くなくなり、中域のだぶつき感も解消、カメラのフォーカスがピッタリ合ったかのような、とてもクリアで、それでいて勢いのある元気なサウンドへと一変したのだ。コレには本当にびっくりした。効果の高さももちろんだが、中央にACP-2を“置くだけ”で、左側からの低音も解消されるのだから。
ちょうどスピーカー背面の中央が、この部屋の音響をコントロールするうえでの重要ポイントとなっていたのだろうが、実際にここまでの音の変化を経験すると、ただただ驚くばかりである。部屋の持ち主も「ボーカルがそこに出てきましたよ」と興奮気味だ。左側からの低音が消えたことで、しっかりと定位したと言いたいようだ。
その後、1〜3枚のACP-2を使っていろいろなレイアウトを試したが、結論からいうと最初の配置がベストだった。ACP-2の吸音能力はかなり高く、6畳ほどのスペースでは1枚で十分に効果が高い。例えばスピーカーの背面に1枚ずつ、合計2枚をおいてみたところ、音のピュアさはさらに高まるものの、吸収されすぎてしまうのか、かえって元気のない音になってしまった。
また、スピーカーの対面、試聴位置の背後に1枚だけ設置してみたところ、低域のブーミーさは解決しきれず。リスニングポイントの両脇にもおいてみたが、コレも同様だ。最後に真ん中の前と後ろに1枚ずつ、合計2枚を設置してみたが、コレもスピーカー背面2枚と同様、必要以上の吸音効果が発揮されてしまい、いまひとつ。結論として、6畳ほどのスペースでは、かなり音が回ってしまっている状態でも、ACP-21枚あればその効果は十分、ということが分かった。
大きめの部屋には2枚から
次に、リビングでのテストを行った。こちらにはエレクター(金属製のパイプと棚で構成されるラック)で組まれたAVシステムが設置されており、センター部分には大型のプラズマティスプレイ、その左右には少し大柄なB&Wのスピーカーが設置されている。
こちらもまずは、ディスプレイの背面、壁との隙間にACP-2を1枚置くところからスタート。確かに効果のほどは高いが、仕事部屋ほどではない。そこで、ACP-2をセンター(プラズマテレビの後ろ)に2枚並べてみたところ、先ほどと近い効果が得られた。次に2枚を離し、スピーカーの背面に持ってきたところ、コレもなかなかに良い。音がピュアになるという点ではこちらの方が上かもしれない。自然な響きを求めるなら中央に2枚横並び、よりピュアな音を得たいならスピーカーそれぞれの背面に計2枚。どちらにするかは、好みの範疇(はんちゅう)だろう。
続いて、スピーカーの対面、試聴位置の背面に1枚追加してみたが(計3枚)、効果はそれほど変化なし。ディスプレイ背面のACP-2を外し、スピーカーと垂直の壁側に持ってきてみたところ、ある程度の効果はあるものの、デット過ぎて少しつまらない音になってしまう。こちらの部屋でも、スピーカー背面の壁に設置するのが一番効果的なようだ。
それにしてもACP-2は、スリット部をふさぐようなことさえなければ、ディスプレイ裏のような、数センチほどの隙間しかない場所に設置しても、確かな効果が得られるのはとても興味深い。厚みが約28ミリと、自身の設置性も自由度が高いうえ、部屋に1枚ポンと置くだけで十分という、効果の高さと手軽さを併せ持っていた。なによりも、壁のあちこちにベタベタと吸音材や反射板を貼り回る必要がないスマートさがうれしい。なかなかに魅力的な製品だと思う。
ちなみに、取材に利用させてもらった部屋のオーナーも、あまりの効果の高さにビックリ。仕事部屋用にと、1枚購入したようだ。そして、満足のいく音の環境ができてタガが外れたのか、最近はハイレゾ音源を買いまくっているという話だ。
最後に1つ、ACP-2を活用する上でのワンポイントアドバイスを。設置するのにベストなレイアウトは、部屋それぞれに異なってくるようなので、いろいろと試してみてほしいが、あまり広くない部屋なら、まずは1枚。スピーカーの中央からスタートするのが効率的だ。一方、10畳以上の部屋(とくに横長レイアウトで使っている部屋)は、最初から2枚を導入してもよさそう。さらに、高さ方向に関しては、床置きでも十分だが、床と天井のあいだ、真ん中くらいが一番効果的だったことを付け加えておこう。
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