3DにBDオーディオ、ブルーレイ大賞が示したBDの新しい可能性(後編):麻倉怜士の「デジタル閻魔帳」(4/4 ページ)
前編に続き、「DEGジャパン・アワード/ブルーレイ大賞」各部門賞の受賞作品について、審査委員長を務めたAV評論家・麻倉怜士氏に詳しく解説してもらおう。
審査員特別賞
麻倉氏:審査員特別賞を獲得したのは「ツリー・オブ・ライフ」です。なにげない日常の風景と幻想的な荒々しい光景が交互に描かれる作品で、その映像美が高く評価されました。階調の豊かさと情報量の多さが秀逸。そして光の陰影が生む立体感が素晴らしいですね。
また、1つの作品の中で35ミリ、65ミリのフィルムと、デジタルシネマカメラと撮影方法を分けることで、シーンによる表現の違いを描き分けました。Blu-ray Discでもそれが見事に分かります。これも高く評価されたポイントです。
――次は「ユーザー大賞」ですが、こちらは一般投票のため、審査員のコメントはありません。受賞作は「glee/グリー シーズン3 ブルーレイBOX」(発売/販売元:20世紀フォックス ホーム エンターテイメント ジャパン株式会社)。今年は4489名からの投票があり、盛り上がったようですね。では、最後にグランプリをお願いします。
グランプリ&総評
麻倉氏:グランプリは、各部門賞の受賞作から選ばれるのが通例です。今回はベストBlu-ray 3D賞を獲得した「ヒューゴの不思議な発明」がグランプリに輝きました。
審査会では、対抗馬が「ダークナイト ライジング」でした。ダークナイトも素晴らしい作品ですが、ヒューゴの不思議な発明はベストBlu-ray 3D賞で話した部分に加え、芸術性と高画質を高い次元で両立している点が評価されました。リアリティーを追求したのはダークナイト、一方でヒューゴの不思議な発明はファンタジーの中で高画質を追求した作品といえます。特長的なのは、やはり実写なのかCGなのか境目が分からないほど完成された映像でしょう。新しいアーティスティックな映画BDが誕生したといえます。
――最後に総評をお願いします。
麻倉氏:毎回、1つを選ぶと「もう少し、こういう分野にも着目したほうがよいのではないか」と感じることがありましたが、今回は部門賞も増えて良かったと思いました。ただ、なかなか実現しないのが、私が以前から提案している「ベストパッケージ賞」ですね。Blu-ray Discのようなパッケージソフトは、コレクションアイテムとしての側面があります。例えば「アラビアのロレンス」には写真集が付きますし、「雨に唄えば」は海外版では“傘”まで付いてくるのです(海外のデラックス版)。ファンとしてはたまらないアイテムですよね。単にフレーム内の映像だけに着目するのではなく、その外側にも映画の世界観があります。パッケージ賞については、今後も検討していただきたいと思います。
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