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スカパー!の4K商用サービスは衛星と“光”の2本立て――「来年度の早い時期に開始」

スカパーJSATとNTT東西地域会社など4社は、「フレッツ・テレビ」の商用ネットワークを用いた4K映像伝送に成功した。来年度の早い時期には東経124/128度CSと光ファイバーの両方で4K商用サービスを開始する考えだ。

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 スカパーJSATは、4K放送の商用サービスを2015年の春をメドを開始する方針を明らかにした。それも124/128度CSに加え、NTT東西地域会社の「フレッツ光」を伝送路とする「スカパー!プレミアムサービス光」でも同時期にスタートする計画だ。


 スカパーJSATとNTT東西地域会社、およびNTT持ち株会社は5月21日、「フレッツ・テレビ」ネットワークを用いた4K映像伝送のデモンストレーションを報道関係者に公開した。「フレッツ・テレビ」は、「フレッツ光」の光ファイバーにIP通信(インターネット接続)用とは異なる波長の光で映像を伝送する“波長分割多重”技術のサービス。物理的には1本の光ファイバーでも、波長を変えることで2つの独立したパイプを設けた状態になり、IP通信の帯域を圧迫せずに映像を伝送できるのが特徴だ。スカパーJSATは、2004年に同技術を採用した他チャンネル放送事業「OPCAS」を開始するなど早くから取り組み、現在は「フレッツ・テレビ」上で「スカパー!プレミアムサービス光」を提供している。

「フレッツ・テレビ」の概要。提供エリア(左)と波長分割多重の仕組み。光ファイバーを使っても通信にはあたらず、CATVなどと同じ“放送”に分類される(右)

 波長分割多重の場合、映像伝送で70M〜2.1GHzという広大な周波数帯域が利用できる。このため、地デジ/BS/CSの再送信を含む多チャンネル放送を行っている現在でも、まだ余裕があるという(変調方式は256QAM)。「4Kなら20チャンネルほど設けることができる」(スカパーJSATの仁藤雅夫副社長)。

 今回の4K映像伝送デモは、その空き周波数帯を使って4K映像を流すというもので、都内で実際に使われている「フレッツ・テレビ」の商用ネットワークに4K試験放送「Channel 4K」と共通の4K/60p(3840×2160ピクセル、毎秒60フレーム)、約35Mbpsの映像を流した。圧縮はもちろんHEVC(H.265)だ。

ONUは現行の「フレッツ光」用のもの(光)。HEVCのデコーダーを搭載した4KのSTB試作機はまだ大きく、机の下に設置されていた(右)

 ユーザー宅を模した受信システムは、一般的なONU(光ファイバーの終端装置)を使用している。映像はONUでRF信号に変換され、同軸ケーブルで分配、それを4K STBの試作機と現行STB(プレミアムサービス光チューナー)を介して4Kテレビとハイビジョンテレビにそれぞれ表示してみせた。


4KとフルHDのテレビを並べ、現在の「フレッツ・テレビ」で送信されるCS番組とテスト用の4K映像を同時に表示してみせた

 「商用サービスの設備に4K映像の送出装置を追加し、既存のHDサービスの信号と混合して商用ネットワークへ送出している。現在、東京の特定エリアでは実際に4K映像を伝送していることになるが、既存サービスには全く影響していない」(NTT東日本ビジネス開発本部第二部門アライアンスサービス担当部長の松村和之氏)。

今回のシステム構成(左)と商用サービス開始時の構成(右)

 今後はヘッドエンドと呼ばれる送出拠点に東経124/128度CSアンテナを設け、受信した4K放送を再送信する形で実用化する考えだ。これは現在のデジタル放送再送信と同じスタイルで、もちろんクオリティーはCSの4K放送と同等。さらにユーザーにとっては、アンテナ不要で受信できること、CSのような降雨障害が発生しにくいこと、宅内のONUや同軸ケーブルといった共聴設備はそのまま流用できること、さらに同軸ケーブルを分配すれば複数台のテレビで4K映像やデジタル放送の再送信を視聴できるといったメリットがある(ただしSTBはテレビごとに必要)。


スカパーJSATの仁藤雅夫副社長

 スカパーJSATの仁藤雅夫副社長は、4Kの高精細映像による自然な奥行きや立体感、BT.2020(UHDTVの色域規格)による色域の拡大、60Pによる動画再現性の向上などを挙げ、4K放送を推進する意義を語った。「4Kは、大画面ホームエンターテイメントの王道としてのクオリティー、そして今後の多様な可能性を確保するものだ」(同氏)。

 さらに「スカパー!プレミアムサービス光」において、NexTV-Fと連携した4K商用サービスを2015年度の「早いほう」(同氏)に提供すると明言。もちろん再送信の元になる東経124/128度CSの「スカパー!プレミアムサービス」でも同時期に4Kの商用サービスを行うという方針を明らかにした。

 今後は4Kテレビや受信器メーカーとの連携を強化してチューナー(STB)やSTB機能内蔵テレビなどの開発を進めるほか、NexTV-Fと連携して魅力的な4Kコンテンツ開発を進めるという。

 「4K/8K時代は必ず来る。そのとき光ファイバーも強力な伝送手段として活用する」(仁藤氏)。

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