ハイレゾ最新動向(後編)――DSDマルチと“ハイパーハイレゾ”の魅力:麻倉怜士の「デジタル閻魔帳」(3/3 ページ)
ハイレゾ音源のマルチチャンネル化や人の可聴域を超えた“ハイパーソニック”など、別の角度から音楽にリアリティーを加える手法も登場している。AV評論家・麻倉怜士氏が最新動向を報告。
大橋先生によると、2万Hz以上、とくに5万Hz以上の高周波が含まれていると、音楽そのものがビビッドに聞こえるそうです。またハイパーソニックを共同研究している仁科エミ先生は、面白いデモンストレーションを見せてくれました。まず、熱帯雨林の虫の声や木々のこすれる音をBGMとして流します。その上で話を始めると、声はクリアに聞こえるのですが、BGMを止めると話し声が聞き取りにくくなってしまいます。つまり、BGMに含まれていたハイパーソニックには、可聴帯域の音をレイズアップ(持ち上げる)して聞き取りやすくする効果があったのです。面白いですね。
ただ、スーパーソニックの課題はツィーターです。2万Hz以上となると、現在あるスピーカーの多くは再生できません。パイオニアのリボンツィーターは超高周波まで再生できますが、一般に普及させるのはなかなか難しいでしょう。
先日、東中野にある大橋先生の事務所に伺う機会があったのですが、そこで10万Hzまで再生できる圧電型のセラミックツィーターを見せてもらいました。これは既存のスピーカーにアドオンできるため、スピーカー自体を買い替える必要はありません。実際に5万Hz以上の音をオン/オフしながら聴き比べてみると、各楽器の音がクリアになり、倍音もしっかりと感じられます。音像の立ち方まで違うように聞こえました。
もちろん“聞こえた”といっても可聴域を超えた音ですから、実際に音として知覚しているわけではありません。おそらく皮膚感覚として、“生々しさ”を感じたのでしょう。ハイパーソニックのある音には素晴らしい効果があります。ハイレゾ音源に新しい切り口が加わった。そんな思いがしました。
故・長岡鉄男先生絶賛の音源がハイレゾで復活
麻倉氏: 最後に、パッケージソフトを1つ取り上げたいと思います。キングインターナショナルが発売するBDオーディオ「パニワグアの芸術 グレゴリオ・パニアグワ(指揮)、アトリウム・ムジケー古楽合奏団」はギリシャ音楽のタイトルで、素晴らしい音が収録されています。
実は、1970年代に故・長岡鉄男先生(長岡式スピーカーで知られる著名オーディオ評論家)が本タイトルを絶賛していました。そのアナログマスターテープから192kHz/24bitのPCM音源を作り、BDオーディオに収めたのが、このタイトルです。2chではありますが、アナログ時代に絶賛された絢爛(けんらん)豪華な音が鮮烈に蘇りました。7月31日に発売されるそうですから、興味のある方はぜひ聴いてみてください。
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