もっとスムーズに、もっと効率良く――「Dyson Hot+Cool AM09」を最大75%も静音化した手法とは?:テクノロジー解説<6>(2/2 ページ)
従来機に比べて最大75%もの静音化に成功した「AM09」。しかし、ファンヒーターは構造が複雑で、内部にスペースの余裕はない。そこでダイソンのエンジニア達が実行した静音化のアプローチとは?
ミックスフローインペラーのブレードは“鳥の羽”のような波形にして風切り音を抑える。「AM05」ではフィンの先端に小さな穴を4つ設けることで前後の気圧差を抑える仕組みになっていたが、その後の研究で波形のほうがより効果的と判明したためだ。これは先に登場した扇風機「AM06/07」にも採用されている。
続いて、ループ部に続く空気の流路も見直した。モーターを覆う黒いパーツには「エアフィン」と呼ばれる突起が設けられ、空気の流れをガイドする。ループ部の根元にある空間も「AM05」より高さをとり、空気がぶつからないように配慮している。
あわせて、モーターの駆動音そのものを抑えることにも注力した。例えば、モーターを支えるマウント部分には、新たにスプリングのダンパーを取り付けた。モーターを浮かせたような構造にすることで、音と振動が本体に直接伝わらない構造だ。
「AM05」と「AM09」の外観はほとんど変わらない。しかし、空気の取り入れ口からループにいたるまで、その経路はすべて再設計されていることが分かるだろう。
ダイソンのエンジニアたちは、騒音の発生源を見つけ出し、それを1つずつツブしていく。彼らは経験や勘には決して頼らない。理論と計算式を元に騒音との因果関係を冷静に割り出し、実験と検証を繰り返して、より効果的な手法を導き出すのだ。
空気の流れがスムーズになった「AM09」は、同じ風量でもモーターの回転数を下げることが可能になり、従来機「AM05」に比べて最大75%の静音化と省エネ性能の向上を実現した。地道な努力の積み重ねが“エンジニアリング上の大きなチャレンジ”を成功させたのだ。
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