他のカメラでは撮れない世界 「SIGMA sd Quattro」レンズ選びのポイント:SFDモードも検証
「SIGMA sd Quattro」に興味があるが、どんなレンズと組み合わせたらいいのか悩んでいる人へ。シグマレンズをよく知る三井公一氏が、用途に合わせた選び方のポイントを指南する。また前回のレビューで触れられなかったSFDモードも実際に比べてみた。
発売されてから1カ月が経過した「SIGMA sd Quattro」。すでに手に入れてその写りを楽しんでいるフォトグラファーも多いと思うが、その一方でどのレンズを買おうか決めかねて、購入に至っていない人も多いと聞く。特に、初めてシグマSAマウントレンズに手を出す人は悩むことだろう。今回はお勧めのレンズを紹介したいと思う。
SIGMA sd Quattroは、基本的にシグマグローバルビジョンレンズ群で最高の性能を発揮するようになっている。もちろんそれ以外のレンズも使用可能だが、いくつか制約がある場合があるので、入手する際には「SIGMA sd QuattroにおけるシグマSAマウントレンズのご使用に際してのご注意」を見てよく検討したい。
まず単焦点レンズを最初に手に入れるとしたら、レンズキットにチョイスされた「SIGMA 30mm F1.4 DC HSM | Art」がいいだろう。カメラに装着するとAPS-Cフォーマットのため45mm相当となるが、同焦点距離となる「SIGMA dp2 Quattro」よりも2段明るいF1.4なので、ボケを演出することも可能だし、暗所での撮影にも向いている。小型軽量なので常時携行しても苦にならないサイズ感なのもいい。緑地の水道からほとばしる水を撮影したカットだが、沈みゆく夕陽の円形ボケが美しい。
ここで前回言及できなかった「SFDモード」について説明しておこう。この「Super Fine Detail」モードは1回のシャッターレリーズで7枚の異なる露出の撮影をし、そのデータ(拡張子は X3I となる)をシグマのRAW現像ソフト「SIGMA Photo Pro」で処理するものである。これにより豊かな階調とノイズレスの写真を手に入れることができるのだ。
上の2枚の写真は、橋脚を30mm F1.4 DC HSMで撮ったカットだが、その描写を比較してみてほしい。SIGMA Photo Proのオート現像をしたものだが、ここから好みのイメージに仕上げていくのがシグマそしてFoveonセンサーの醍醐味だ。SFDモードにはしっかりとした三脚と雲台、そして動かない被写体が必要となるので注意したい。
次のお勧め単焦点レンズは「SIGMA 50mm F1.4 DC HSM | Art」だ。こちらも装着すると「SIGMA dp3 Quattro」と同等になるが、やはり2段明るいのは非常に強力な武器になる。バーのディスプレイを撮ったものだが、このように暗所でも低ISO感度で速いシャッターを切れるし、世界中で絶賛された描写をさまざまな被写体で使えるのは楽しい。ズームレンズ主体のシステムの中に「勝負レンズ」として組み合わせるのもオススメだ。
さてズームレンズはどうだろうか。まず高性能で日常的に使える1本をとなると、やはり「SIGMA 18-35mm F1.8 DC HSM | Art」だろうか。何と言ってもF1.8通しで明るいのと、開放からキレキレのシャープさを味わえるのだから。
ビーチで寝そべるモデルをチョイ絞りで撮影したカットだが、瞳周辺のシャープさと、肌のトーンがとてもイイ感じである。色味もいい。
地方のローカル線車内を写したカットでは、運転台周りのリアルな描写と、前後の自然でスムーズなボケ味が気に入った。
同じF1.8通しの「SIGMA 50-100mm F1.8 DC HSM | Art」も、前出の18-35mm F1.8 DC HSMとセットでチョイスしたいレンズだ。焦点距離にやや間が空いてしまうが、この2本があれば完璧な布陣と言ってもいいくらいだろう。レンズの性格は18-35mm F1.8 DC HSMと同等で、開放域から抜群のキレとヌケが味わえる。レンジ的にポートレートでもいいし、スナップショットや風景にも向いている。石像をチョイ絞りで撮影したが、そのヌケ感と立体感、そして緻密な描写は素晴らしい。
もう少し広いズーム域が欲しい場合は「SIGMA 24-105mm F4 DG OS HSM | Art」がいいかもしれない。やや大きくて重たいレンズとなるが、しっかりとした造りと確実な描写は一度使うと気に入ってしまうことだろう。これがあれば36mm〜157.5mm相当までカバーできるので、一通りの被写体はこなせるはずだ。手ブレ補正機能も搭載している。ひまわりを縦位置で撮影したが、花粉の細かいところまで中心部の克明な描写には驚かされた。
絞り優先(F7.1、1/320秒)、-0.3EV、ISO100、WB:マニュアル、焦点距離:450mm相当、レンズ:SIGMA 18-300mm F3.5-6.3 DC MACRO OS HSM | Contemporary
長期の旅行や、もう少しイージーに撮影したい場合には、高倍率ズームの「SIGMA 18-300mm F3.5-6.3 DC MACRO OS HSM | Contemporary」はどうだろう。16.6倍というズームレンジを持ち、手ブレ補正機能も搭載しているので、近景から遠景まで様々なシーンを余すところなく撮影できる。
横浜元町で停車中の外車をテレ端で撮影。その端正なマスクをイージーに450mm相当で捉えた。高倍率ズームレンズながら、その写りはなかなかのものである。メタルとガラスの質感がシグマらしい。
絞り優先(F8、1/125秒)、-0.7EV、ISO100、WB:マニュアル、焦点距離:114mm相当、レンズ:SIGMA 18-300mm F3.5-6.3 DC MACRO OS HSM | Contemporary
ミドルレンジで洒落たショップの軒先を撮影。時計のクリアな写りといい、壁の立体感といい素晴らしい描写である。このレンズと明るい勝負単焦点レンズで旅に出るのもいいだろう。
個人的にシグマグローバルビジョンレンズ群以外から1本推したいレンズがある。それは「SIGMA 8-16mm F4.5-5.6 DC HSM」である。ワイド端12mm相当の強烈なパースペクティブはとても魅力的だからだ。夏の空にそびえる東京都庁をあおって撮影したカットだが、直線が真っ直ぐで気持ちがいい。「被写体の条件や撮影距離によってAFでは合焦しない事がございます」ということだが、今のところ特に不満なく使用できている。
というわけでオススメレンズをサッと紹介したが、いかがだっただろうか。単焦点は「SIGMA dp Quattro」シリーズより明るいF値の恩恵を得られるし、ズームでは焦点距離を自由に変えて撮影を楽しめる。自分の撮りたい対象にあったものをチョイスして欲しい。
(モデル:佐藤杏奈/オスカープロモーション)
(編注:本記事では一般的な撮影状態での利用を念頭に置いているため、人物撮影にレフ版などは利用しておりません)
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