DJ向けヘッドフォンと電子楽器屋さんの“ビートが効いた提携の話”をローランドブースで聞いてみた:秋のヘッドフォン祭2016(2/2 ページ)
今年8月にv-modaとの資本提携を発表したローランド。なぜDJヘッドフォンを手がけるv-modaなのか。その背景には、想像以上にドラマチックな話があった。
重石氏:ヘッドフォンも今まで作ってはいたのですが、基本的に電子楽器やDAW向けのものとして開発していました。具体的にはDAWにおけるミックスやマスタリングといったシーンで、この場合リファレンスはフラットな音でないとバランスが分かりません。ですがAIRAブランドはシンセサイザーやシーケンサーでの利用が想定され、DJ向けの中低音の解像度など、胸にドンとくる音、ビートを捉える音が求められます。味付けのないフラットな音が必要なDAWに対して、DJはビートを聴きながら音を出すため、専用の味付けが必要になります。つまり音作りとしては全くの逆方向なんです。当社のヘッドフォンとは全く違うキャラクターを求めており、こういった特長をうまくつかむものがv-modaでした。
――本当にきれいな線でつながっていますね。ここまで話を聞くと、今回の提携がまるで必然だったかのようにさえ思えてきます
――少し話を変えましょう。ローランドにとって、v-modaはどのようなブランドであるという認識がされているのでしょうか?
重石氏:DJ界隈ではご存じの方も多数いらっしゃるかと思いますが、DJ向けヘッドフォンにおいてv-modaはトップブランドの1つです。日本でも今年来日したDJアヴィーチーさんが使用していて話題を呼んだほか、昨年avaxとコラボレーションでジュニアモデルの「XS」を使った浜崎あゆみモデルを作ったところ、即日完売しました。
コンシューマー向けにおいても米国Amazonにおける評価が他ブランドと比べて高いですね。DJ以外の人たちに対してもワイヤレスモデルを追加してオーディオシーンのトレンドを取り入れたりするなど、日常使いのコンセプトを次々と打ち出しています。
――やはりどんな世界でもトップブランドは強いですね。ところで今日はヘッドフォン祭ですから、この会場に来るお客さんの声も教えてください。どのような意見が聞かれますか?
重石氏:M-100は「中低音にパンチがある」と評価する声が多いです。われわれとしては既存ユーザーに愛されているということを感じます。初めて接していただいた方は驚かれる方も多いですが、M-100をリスニングモデルとして見ると、一般的なDJモデルと違ってゴリゴリのドンシャリサウンドではなく、音がこもらず、きれいな鳴りがします。
――一般的にDJモデルというとブーミーな低音が耳について、確かにクラブサウンドやハウスミュージックは元気に聴こえるけれど、その他の音楽は破綻(はたん)しがちですよね
重石氏:v-modaも低音は大切にしていますが決してブーミーではなく、むしろDJモデルとは思えないほどスッキリとした音です。これは創業者のVal Kolton自身がDJで、DJ目線の設計をした結果です。他ブランドでは騒音環境でのDJプレイに耐えるため、大音量を出せるヘッドフォンになりがちです。しかしKolton社長は過去に一過性難聴になったことがあり、その時に「これではいかん」と思ってイヤープラグなどを開発しました。自分の経験から聴覚障害を起こしかねないほどの大音量環境にさらされるDJの現場で耳を保護するという思いが強く、Kolton社長と話していると「耳を大切にするというフィロソフィー」がひしひしと伝わってきます。
――大音量から耳を守るという考え方は、インイヤーモニターの創作者として知られるマイケル・サントゥッチ氏に通じるものがあります。そうなると過度な音を出さなくなるため、自然とサウンドが落ち着いていくんでしょうね
重石氏:デザインと耐久性に関してもDJモデルならではです。今のところ米国市場のみのサービスではありますが、国内展開は現在検討中。独自性を出すためにシェルプレートへアートワークを入れることも可能です。本社はアメリカですがデザインはイタリアで行っており、デザインへのこだわりがとても強く、ファッションスタイルに対するトレンドを上手くつかんでいます。
――トップDJのツールとなると、使用するヘッドフォンがDJのアイコンとなったり、あるいはファッションリーダーになったりするので、デザインの重要性はリスニングモデルよりも高いですね
重石氏:耐久性に関しては、大勢が踊るステージでの片耳プレイなど厳しい環境で使われるDJモデルなので、ショルダーバッグにかけたりしてもそうそう簡単に壊れたりしません。大きくねじっても大丈夫で、たたむとコンパクトになるので、Kolton社長はさまざまな場面で「旅先のお供に連れ出してほしい」と発信しています。
重石氏:分解修理が容易な点を生かしたアクセサリー類も豊富です。日本での発売は未定ですが、デタッチャブルなゲーミングツールやヘッドセットのオプションなどもあります。その他先ほども話しましたが、リスニングユースに向けたXSというモデルも出しており、高いサウンドクオリティのDJに軸足に起きつつも、家電を見る人達に向けた展開もやっていければと考えています。今まではDJで実績を積んできましたが、まだまだこれからさまざまな選択肢が考えられるブランドだと思います。これからからどんな発展ができるか、私達自身も楽しみです。現状に関していうと、DJの人達がリスニングに使うならば、ぜひv-modaを選んでいただきたいです。
――オーディオ的な観点でいうと、サウンドの多様性という意味でハイクオリティーなDJモデルは極めて重要だと感じます。加えて街を歩く人達のサウンドレベルがM-100クラスになれば、きっと日本の音楽シーンはよりハイレベルになるだろうと感じました。本日はどうもありがとうございました
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