縦位置チルト対応背面モニターを絶賛したい、富士フイルムの「X-T2」(2/3 ページ)
X-T2は一眼レフスタイルのミラーレス一眼。大きくて見やすいEVFとチルト式モニターでファインダーでも背面モニタでも自由に使い分けられる。デジタルカメラとしての実用性を求めるならX-T2だ。
縦位置チルト対応背面モニターを絶賛したい
撮影時に気持ちいいのはEVFがデカくて見やすいこと。約236万ドットの有機ELパネルを使っており、明るくて大きくて見やすい。
背面のモニターは約3.0型のチルト式だが、注目すべきはその可動方式。チルト式モニターにはワンアクションですぐチルトできる、モニターとレンズの軸がずれないので構図を決めやすいというメリットがある。逆に、縦位置でチルトさせたいときはできない、という欠点を持っていた。
X-T2は縦位置チルトに対応したのである。なんと、モニターの脇にあるレバーを押して開けば、横方向にも開くのだ。こんな感じになる。
これなら縦位置でのローアングル撮影も簡単にできる。すばらしい解決方法だ。片方向のみだが、ハイアングルで撮りたいときは上下逆にすればよいだけである。これはぜひ、全チルト式モニター搭載カメラで採用してほしい。
AF-C性能をチェックすべく馬術競技に挑戦
さてX-T2の一番の大ネタはAFである。これはちゃんと検証しておきたい。
ミラーレス一眼のAFはどんどん進化し、AF-Sモードで撮影するだけなら(全モデルがそうとはいわないが)速くて正確でストレスなく撮れるレベルに達してきた。ただ、特定の被写体にフォーカスを合わせ続けるAF-Cは多くのミラーレス一眼が苦手としていて、追い切れないことが多かったのだ(途中でAFをはずしたり、違うものにフォーカスが合ってしまったり)。これはAF方式の違いにもよるのだが、ミラーレス一眼ではAF-Cを使いづらかったのは確かで、要するに「動体にフォーカスを合わせながら連写する」のは不得手だったのである。
X-T2はそこをぐっと改善してきた。像面位相差エリアが従来より広くなり、被写体の捕捉性能があがり、しかもAF-Cの動体追従特性をユーザーが自分で選べるようになったのだ。
実際にどのくらい使えるのか、馬術競技で試してみた。レンズは単焦点で非常に写りがよいXF90mmF2 R LM WRをがちゃっと装着。
まず、AFがすこぶる速い。超快適に速い。1枚目は障害を越える瞬間。撮影場所的にこの瞬間までは障害やら何やらがジャマで馬の姿がはっきり見えないため、構図内に馬が現れた瞬間にシャッターを押したものだ。ぎりぎりピントが間に合ったという感じ。
その2コマあとは飛んでいる瞬間。きっちりきている。
瞬時に迷うことなくフォーカスがくるのですごく気持ちいい。
つづいてAFの追従。正面から障害を越えて走ってくる馬を狙い、5コマに1枚ずつ取り出した並べてみた。サムネイルだが遠くから手前まで、しっかり馬にフォーカスがあってくれた。
素晴らしい。ただ、AF性能が良すぎるため、手前にフォーカスが合ってしまうことがあった。例えばこれ。
騎手にフォーカスを合わせていたのだが、障害を飛ぶ寸前に馬と騎手が一瞬視界から消える。その一瞬で手前の木にフォーカスが切り替わっちゃったのである。AFが速いのはいいけど、反応がビビッドすぎ!
そういうときはAF-Cカスタマイズの出番である。手前のものにすぐに合わせず、もうちょっと粘ってねという設定にすればいいのだ。
この場合はSET2の「障害物があるときやフレームアウトしやすいとき」にするのがいい。
また自分でセットすることもできる。被写体保持特性を最大にしたら、途中で障害物があってもそっちに引っ張られにくくなった。
こういうのは大事。さすがハイエンド機。AF-Cカスタム設定とAFエリア設定(被写体追尾かゾーンAFかなど)を組み合わせればかなり快適に使えそうだ。EVFによるタイムラグもあまり気にならない(ただし、これは何を撮るかによって左右されるのでひとことではいえないが)。
せっかくだから馬の動きを完全に止めてみようと電子シャッターでの1/32000秒に挑戦したが、電子シャッター特有のローリングシャッター歪みが出てしまった。歪みは比較的大きいので電子シャッターを使うときはご注意を。ただ電子シャッターは静かだし、手ブレしづらいのでうまく使えば強力だ。
でも基本的に安心してAF-Cモードで使えるミラーレス一眼が登場したというのが正直なところ。AFレバーの搭載でAF枠の移動もいくらか容易になり、非常に快適である。
Xシリーズは動体の撮影向きじゃないというイメージがあったけれども、X-T2で完全に払拭された格好だ。調子に乗ってAF-C連写しまくってたらバッテリーがなくなってしまったけれども、まあそれはしょうがない。
X-T2はハイエンドのミラーレス一眼として出色のデキである
画質はさすが富士フイルム。画素数が増えたが高感度時の絵は落ちておらず、感度を上げても、不自然なノイズリダクションや彩度の低下も見られず、けっこう使える。フィルムシミュレーションモードも健在で、X-Pro2から採用されたACROSというモノクロもいい。
使い勝手はX-T1よりずっと良くなった。特にAF回りのセッティングが容易になったのは素晴らしい。個人的には瞬時にAFポイントを大きく移動できるタッチパネルの採用を求めたいが、まあそこはそれということで。
ダイヤルを駆使した操作性も快適で、ボタンとダイヤルの位置を覚えてしまえばファインダーを覗いたまま必要な操作をこなせる。シャッタースピードやISO感度のダイヤルがやや軽いが、そこは不要なときはロックしておけば問題ない。
そしてEVFとモニター。何より縦位置でのローアングル撮影に対応した新構造のチルト式モニタが素晴らしい。本格的に使う人にはSDXCカードのデュアルスロットになったのも見逃せない点だ。
AFもどのくらい高速な移動をする被写体まで追従できるか、どのくらい複雑な動きでも追従できるかは未知数ではあるが、実用的なAF-Cによる連写を行えるレベルに達してると思う。つまるところ、ハイエンド機なので価格もそれなりではあるが、幅広いシーンで使える素晴らしいミラーレス一眼に進化したのである。これは欲しい。
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