進化する携帯電話のインタフェース──N503i携帯電話を選ぶときに最後の決め手になるのは,実は機能ではなくて,ユーザーインタフェースかもしれない。N503iには,端末を使いやすくするこんな工夫があった。
携帯電話が通話だけに使うものではないことは,最近のケータイユーザーなら実感していることだろう。データ通信機能も豊富になり,内蔵メモリの増大とともに,登録できるデータも多岐に渡るようになってきた。端末も機能を中心として評価されることが多い。 しかし,端末の評価に関してまだあまり語られていないことがある。それはユーザーインタフェース(UI)だ。機能が増えれば増えるほど重要になるUIだが,携帯電話のUIはある種日陰の存在。 それでいて,携帯電話を選ぶ最後の決め手は“慣れているUI”だったりする。NTTドコモのNEC製端末「N503i」を取りあげ,UIについてのさまざまな工夫と,取り巻く問題について見てみよう。 N503iの魅力的なスケジュール機能最近の携帯電話はカレンダーを壁紙にする機能を持ったものが多いが,別の月のカレンダーを見ようと思ったとき,案外操作が面倒な場合が多い。 N503iの場合,待ち受け画面から決定ボタンを押すことでカレンダーを操作できる。翌月や先月のカレンダーを閲覧することができるほか,そこからさらに予定表機能にアクセスすることもできるという工夫がされている。 言ってみれば,待ち受け画面がそのままスケジュール表に直結している。“カレンダーを見ていて,そこから予定を入力する”というのは,とても直感的な操作だ。 NECネットワークス,モバイルターミナル事業部マルチメディア通信開発部の宇佐美真也主任は,「N502iからカレンダーをめくってスケジュール機能にも入れるようにしている」と語る。 携帯電話が持つ,3つの機能携帯電話の機能がこれだけ多くなると,それぞれの機能にアクセスするのが大変になってくる。NECでは,携帯電話の機能を3つに分けて,それぞれの機能へのアクセス方法を考えているという。 1つは,メールやWebサーフィン,着メロといったアプリケーション機能だ。2つ目が,アドレス帳,予定表といったPIM機能。3つ目が各種の設定機能である。 N503iから,待ち受け画面にメールアドレスやWebのブックマークを貼り付けておけるようになった。いわゆる「アイコン機能」だが,これは「アプリケーション機能へのトリガー」(宇佐美氏)として搭載した機能だという。 同様に考えると,待ち受け画面のカレンダーからスケジュール機能にアクセスできることも,メニューに「よく使う機能」として各種設定へのショートカットを作れることも理解できる。 機能を単に詰め込んだために,必要な機能にたどり着くのが大変な端末も多く見受けられる中,頻繁に利用する機能をうまく前面にもってくる試みがN503iではなされている。 携帯メモリ内のデータを生かすために503iシリーズの隠れた魅力は,赤外線通信機能だ。「P503i」とN503iに搭載されたこの機能は,IrMCという標準規格に準拠し,相互に電話帳やスケジュールなどのデータを送受信できる。 IrMCが規定している標準データフォーマットに対応した有名な機器としては,Palm OS搭載機がある。パームコンピューティングの「Palm」シリーズはもちろん,日本IBMの「WorkPad」シリーズ,ソニーの「CLIE」シリーズ,ハンドスプリングの「Visor」シリーズも赤外線通信機能を持っており,P503i,N503iと相互にアドレス帳などのデータ交換が可能だ。 N503iでは,突如赤外線通信機能を搭載したかのように見えるが,実はそこに至るまでのさまざまな試みがあった。「N502iのときから,スケジュールデータをメールで送信できるようになっていた」と,NECネットワークスのモバイルターミナル事業部商品企画部の岡本克彦氏は言う。
フォーマットにしたがって,普通のテキストで予定を書いてNEC製端末にメール送信すれば,受信した側はスケジュールに追加することが可能なのである。 今回の赤外線機能は,N503i製端末同士の通信手段を増やしただけでなく,P503iやPalmなど別種の端末ともデータをやり取りできるようにするためのものだったわけだ。 携帯電話がPIMになるために必要なこと携帯電話は,既に重要なPIM機能を提供している。いくらほかにPDAを持っていても,携帯の電話帳に電話番号を登録するのは当たり前のことだ。 各人のアドレスに,住所やメモも入力できれば,PDAが提供しているようなアドレス帳として携帯を使うこともできるだろう。実際,一部の機種では住所やメモを記入できるようになっているものもある。 ここまでスケジュール機能などを作りこんでいるN503iだが,こと電話帳に関しては住所やメモが入力できない。その理由は「機種変更時にデータがなくなってしまう」(岡本氏)ということにあった。 現在,携帯電話のメモリに入っているアドレスデータは機種によって種類も量も異なっている。NTTドコモの503iシリーズだけ見ても,以下のように違う。
電話番号とメールアドレス,アイコンまでは,機種変更した際にもデータが移せる可能性があるが,住所やメモに関しては厳しいのが現状だ。 永続的に利用できないデータなら,入力できても仕方ない,そんな考え方もある。また,携帯電話のキーでは,住所などを入力するのが面倒だという理由もある。 「(データの永続性と入力に関しての)環境がそろわないと(各種データを電話帳に入力できるようにするのは)難しい」(岡本氏) インタフェースの更なる改善と,データを取り巻く環境の整備がカギ携帯電話の機能は多岐に渡り,複雑化している。「たくさん機能はあるが,使いこなせない」「いらない機能は削って,必要な機能に簡単にアクセスできるようにしてほしい」そういったユーザーの声もしばしば聞く。 携帯電話の持っている機能へのアクセス手段として,UIは今後ますます重要になってくる。現在でこそ,N503iの赤外線通信機能や,スケジュール機能を頻繁に利用する人は珍しいかもしれない。しかし,今後携帯電話にたくさんのデータが入ってくるにつれ,データの扱いを早くから考えていたメーカーとそうでないメーカーとで差が出てくるはずだ。 また,携帯電話に入っているデータを安全に管理,簡単に入力できる環境の整備も必要になってくる。 携帯のデータを吸い出して,PCで保管・編集できるソフトウェアも発売されているが,各社独自に端末を解析しているのが現状だ。データの扱いに関してユーザーの選択肢を広げる意味でも,携帯データの保存形式の公開を,各携帯キャリアには期待したい。 関連記事 [斎藤健二,ITmedia] Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved. モバイルショップ
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