ドアに電話して,カギを開けよう!携帯で個人認証……と聞くと,普通は難しい技術のオンパレード。しかし,携帯電話がそもそも備えている認証機能を利用して,安価で簡単に認証を行う仕組みを,高知県のベンチャー企業が提唱している。
“携帯電話がキーになる”──と聞くと,「またか……」と思われる方も多いだろう。誰もが身につけており,幅広く普及した携帯電話を認証に利用するというアイデアは枚挙に暇がないからだ。 しかし“携帯で認証”というと,2次元コードやBluetooth,ICチップ,生体認証といった未来の技術との組み合わせになっていることが多い。しかも技術が複雑になるほど操作も煩雑になり,端末価格も上がる。今持っている携帯ですぐに使える,という技術は少ない。 しかし,高知県にあるベンチャー企業システックの試みは少々違う。現在の携帯電話をそのまま用い,非常に簡単な操作で遠隔地との認証を行えるというのだ。 JEITA主催の「ホームネットワーク&情報家電・ベンチャー展」に出展中の同社ブースを訪ねた。行われていたデモンストレーションは,携帯電話を使ってドアの鍵を開けるというもの。
認証のキーは電話番号特許申請中だというその仕組みは,明かされてみればシンプル。認証のキーとして携帯電話の「番号」そのものを,認証手段として電話回線とナンバーディスプレイを利用する。 「ドア側に取り付けてある装置に,あらかじめ携帯電話の電話番号を覚えさせておく。家の電話にその携帯電話から電話をかけると,機器が通知された電話番号を確認して,ドアを開ける」(システック) 携帯電話は自番号を相手の電話に通知する機能を持っており,受けた側はだれから電話があったのかを知ることができる。あらかじめ登録した人から電話があった場合に,鍵を開けるというシステムだ。 単純なシステムながら,メリットも数多い。 携帯電話は,会話を行わなければ料金が発生しない。相手に自分の番号を伝えるだけなら電話料金はゼロで済む。認証のログも,電話機だけに自動で記録される。 機器が安価なのも特徴だ。誰もが持っている携帯電話を,改造したり特殊なアダプタを取り付ける必要なく,そのまま利用できる。 そしてセキュリティも強固だ。他人の携帯電話の番号に“なりすます”のは非常に難しく,これが簡単にできるようだと携帯電話のシステムが崩壊しかねないからだ。また,携帯を紛失した時も,キャリアに届け出ることですぐに停止できる。いわば,セキュリティ部分の多くを,(多額の投資を行い,高度なシステムを構築している)携帯キャリアに拠っているのだ。
システックのシステムは,卓上電話機ぐらいの大きさの小型のボックスだ。電子錠を制御することが可能で,電話番号の登録など設定はシリアルポートで接続したPCなどで行う。あとは電話回線をボックスのモジュラージャックにつなげばいい。 「現在は10万円程度の価格だが,すぐに5万円程度で提供できるようになる」(システック) 既に企業での採用実績もある。「ビルの中の人が,訪問者に対して(遠隔操作で)ドアを開けるシステムに使われている」(システック)
ドアだけでなく,さまざまな認証にこの仕組みは単純なものながら,応用範囲は広い。家のドアなどのほかにも,公共の施設でも利用できるだろう。番号の登録を携帯電話から行えるようにすれば,例えばコインロッカーのカギなどにも利用できそうだ。レンタルビデオなどの会員証の代わりに認証に使うこともできるだろう。 携帯電話のネットワークを使った,自動車の盗難防止システムは実際に運用されており(2001年7月の記事参照),今後も家電に内蔵されるなど“通話をしない携帯電話”は増えていくことが予想される(2001年12月の記事参照)。これらの,実際には利用されない電話番号を活用できるという意味でも,興味深い技術だ。
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