次のターゲットは“通話をしない電話”──2002年,cdmaOneの狙い音声通話用の携帯電話は国内ではもう頭打ち。残ったパイはもう小さい。KDDIが狙うのは,非音声のデータ通信専用端末だ。自動車やPCなどへの内蔵も含めた新たな市場の開拓を狙う。
携帯電話がもはや“通話”をするだけのデバイスではないことはもはや常識。iモードは1契約当たり月間平均2000円の売り上げをドコモにもたらしているし,PHSについてはその多くがデータ通信用に使われている。
無線が入っているのを意識させない──車やPDA,ノートPCKDDIが目をつけたのは,PCで利用しているようなPCカード型に加え,より幅広い機器で“通信”を意識せずに使える内蔵型だ。例えば,地図をサーバ側に置き,車両へは随時通信によって転送する“通信カーナビ”。「ココセコム」に代表されるような,携帯電話ネットワークを利用した位置情報提供・急行サービスもその1つ(11月29日の記事参照)。さらにPDAやノートPCに,データ通信専用の携帯電話を内蔵する,という手もある。 KDDI商品企画部の原口英之氏は,「無線が入っているのを意識させない」商品作りを2002年は押し進めると語った。 この場合,ブランド名も相手先の商品名になるという。通信料金の設定や支払いも,その相手先。つまり,例えばA社のノートPCに無線通信機能が内蔵され,ユーザーはcdmaOneネットワークを使ってインターネットへのアクセスが可能だが,KDDIのブランドは出さず,通信料金の支払先もA社となる──ということだ。 既にこれを実践しているのが,セコム向けの「ココセコムサービス」だ(用語)。ココセコムでは,cdmaOneの電話網を使っており,ココセコムの端末も実は電話番号を持った電話機。しかしユーザーは電話機であることを意識せずに使い,料金もセコムに支払う形が取られている。 KDDIがこういったところを強化するのは,もうじき携帯電話の普及も天井に達するからだ。
もうじき飽和する携帯市場携帯・PHSの契約数は11月末時点で7200万以上となった。既に日本の全人口の55%を超えている(12月7日の記事参照)。2000年から2001年にかけて,契約者数は月間60万人増程度で推移しており,このままのペースでいけば,2004年には日本の15〜65歳の人口数8617万人を超えてしまう。
これまでの携帯業界の隆盛は,契約者の増加に支えられてきた部分が大きい。しかし上記の数字を見ても分かるように,新規契約者というパイも残りは小さくなってきた。国内でいえば,8000万〜1億人が天井だと言われることが多い。 数年後を見据えた場合,国内の通常の携帯電話マーケットが飽和するのは明らか。そのため各通信キャリアは新規市場を求めてさまざまな試みを行っている。 欧米やアジアの通信キャリアに資本参加し,iモードを柱としたデータ通信,第3世代携帯電話を世界に向けて展開しようとしているのは,NTTドコモ(11月7日の記事参照)だ。J-フォンは世界最大のメガキャリアVodafoneグループの一員として生き残りを図る(8月24日の記事参照)。 そんな中KDDIが進めるのが,通話用ではなく“データ通信用としてさまざまな機器に電話を組み込むこと”だ。
CDMA2000 1xスタートと共にこの戦略が本格化するのは,2002年4月に予定されている次世代通信サービスCDMA2000 1xのスタートから(9月20日の記事参照)。これはドコモやJ-フォンのW-CDMAに比肩する,いわゆる第3世代の通信方式だ。通信速度は現状の64Kbpsから144Kbpsに高速化する。 さらにドコモやJ-フォンの方式と異なり,cdmaOneとの互換性も備えているため,CDMA2000 1xのエリア外でもcdmaOneとして通信できるのが特徴。また,“GPSケータイ”で使われているGPSを使った位置情報取得機能が標準で搭載される(12月5日の記事参照)。 既に高品質な音声通話をcdmaOneで実現しているKDDIとしては,次世代通信方式を導入しても音声端末の魅力が大幅にアップすることはない。これは12月の次世代サービス導入に当たり,「インフラ(CDMA2000 1x)とサービス(GPSや動画)は別物」とKDDIが強調するのを見ても分かる。 逆に,データ通信専用の端末として見た場合,CDMA2000 1xは大きな魅力を発揮する。他社の第3世代携帯電話や,現在の主流であるPHSと比べても格段に広いサービスエリアを持ち,通信速度も144Kbps。当然パケット通信を採用している。 懸念される料金も,「CDMA2000の最大のメリットは周波数の有効利用。収容効率が1.5倍になる」(KDDI)というように低価格が期待される(11月12日の記事参照)。
内蔵型を大きくプッシュ現在KDDIは,データ通信専用のcdmaOne端末として,PCカード型の「rapiraカード」を発売しているが,このタイミングでは内蔵型をプッシュしていく方針だ。「内蔵は簡単。戦略の問題」(原口氏) cdmaOneのチップセットを提供しているQualcommも,“通話をしない”携帯電話には大きな関心を示している。「5年以内にすべての自動車に無線通信機能が付く」(クアルコムジャパンの松本徹三社長,10月31日の記事参照) 国内の自動車台数は約8000万台。すべての自動車に携帯電話が搭載されれば,頭打ちと見られていた国内のパイも倍増することになる。 原口氏は,内蔵と外付けの比率として「半々位をめざしたい」と語っており,来年は電話機であることを意識させないノートPCやPDAなどの機器が続々登場しそうだ。
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