第7回 FOMAのモバイルブロードバンドは今がチャンス!

否定的な見方の多いFOMAのモバイルブロードバンドサービス。確かにまだ対応サービスは少なく,端末も普及していない。だが,そんな今だからこそ大きなチャンスがあるとも捉えられる。

【国内記事】 2002年3月6日更新

 ここ数カ月,FOMA,もしくはモバイルブロードバンドに対する否定的な見方が多い。ZDNetでもFOMAに対する多くの否定的記事が掲載され,また本コラムでも闇雲なモバイルブロードバンド信仰の怖さを語ってきた。しかし本当にモバイルブロードバンドに可能性はないのか。2回に渡って見ていこう。

“動画”というタガを外せば充分メリットのあるFOMAサービス

 まずモバイルブロードバンドサービスを考える際に,捉えるべき1点め。FOMAにおけるモバイルブロードバンドの定義である。

 サービス開始前の第3世代携帯電話のプロモーションにも問題はあった。現在,モバイルブロードバンド=“動画”,つまり動画をバリバリ使ったようなサービスでなければモバイルブロードバンドではない,といったな風潮が一般に根付いてしまっている。これが現在の否定的論調の大勢を作り上げてしまったということを,冷静に捉えておく必要性がある。

 この“動画”前提というタガを外し冷静に考えてみれば,FOMAは決して袋叩きに合うようなサービスではない。端末価格はかなり低廉化し,モノによってはほかのiモード端末より低価格。通常のiモードサービスを楽しむのであればパケット料金も安い。2002年4月からは主要都市でも利用可能になる(2月15日の記事参照)。一般のiモードユーザーにとっても,メリットが充分享受できるサービスになりつつあるのだ。

 現在,有線系のブロードバンド回線サービスで,ISDNユーザーのADSLサービスへの転換が急速な勢いで進んでいる。NTTとYahoo! BBなどの新興企業による全面対決等々,業界構造的な側面で捉えられることが多いが,ユーザーサイドの観点で見れば,やはり低価格化と回線スピードへの飢え(ISDNや56Kモデムへの不満)が,今の急速な普及を下支えしているといえる。

 動画というタガを外せば,FOMAもそのようなユーザーの不満を解消するに充分なスペックは既に持っているのだ。そのポイントを多くのサービスプロバイダは見失ってしまっている。

 まだモバイルブロードバンド的なサービスが出揃っていない現状では,動画うんぬんよりもデータ通信の高速性という強みを活かしたモバイルサービスを展開していけば,NTTドコモからの後押しも期待できる。今ならFOMAで10本の指に入るような事業者になり得る可能性があることを,まずは再認識しておく必要がある。

現状でモバイルブロードバンドを否定することの危険性

 そして2点め。「モバイルブロードバンドサービスにはニーズがない」という論調をそのまま受け入れる必要はない,ということである。

 現状,ブロードバンドサービスと世間で騒がれているサービスは,テレビ電話やビデオメール,動画によるコンテンツ配信など。一見,これらのサービスはブロードバンド時代のキラーサービスとして捉えられがちである。

 しかし,これらは決してキラーサービスではない。サービスを成り立たせるための単なる“ファンクション──機能”と捉えるべきである。iモードサービスでいえば、ブラウザというファンクションそのものなのである。


 このファンクションを丸裸で出したものをサービスと呼び,それを持ってキラーサービスだというだけでは,当然,ユーザーの琴線には触れられない。もし仮に使おうという意志があっても,相当な創造力を発揮することをユーザーに強いてしまうのである。

 ファンクションをそのまま提供しても,「何となく使ってみたいとは思うが,どうしても使いたいというわけではない」といったコミット感のないニーズしか捉えることしかできないのは当たり前なのである。

的確にニッチニーズを捉えればモバイルブロードバンドにも光明が

 これらの大前提を冷静に捉えていくこと。そしてその上で,ニッチだが強いコミット感を持つニーズを的確に捉えることを目指していく姿勢が重要だ。

 ファンクションにきちんとアプリケーションを載せ,明確なニーズを持ったユーザーにサービスとして提供する。FOMAの提供するモバイルブロードバンドサービスは,ユーザーニーズを具体的に満たすことができるのだという事実を,ニッチマーケットに対してであっても,まずは証明することが,今,業界全体としての必要要件なのである。


 大衆向けの中庸的なニーズの喚起はファンクションを提供するキャリア側の使命でもあるため,そこは彼らに一任し,ニッチニーズを的確に捉えたキラーサービスの提供にこそ,サービスプロバイダ側は力を注ぐべきだ。まだ競合サービスが少ない現状だからこそ,ニッチニーズにこだわりサービス訴求をしていくプロバイダには,モバイルブロードバンドサービスの分野で頭1つ抜きん出ることができるチャンスがあるのである。

 では具体的にはどのようなところに,モバイルブロードバンドサービスの強いニーズが存在するのであろうか。難しい課題ではあるが,次回,その可能性について探っていくことにしたい。

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[イエルネット 杉村幸彦,ITmedia]

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