FOMA内蔵PDAの謎を解くFOMAとしてのフル機能を備えた「SH2101V」は、PDA型の携帯電話の今後を占う意味でも、気になる存在。シャープにとっては、FOMA初号機でもある。そのコンセプト、そしてBluetoothやPDAとしての位置づけを探ってみた
PDAとしても、第3世代携帯電話としても、画期的なものかもしれない……。そんな雰囲気を持った端末が発売された(7月9日の記事参照)。シャープが開発したPDA型のFOMA端末「SH2101V」だ。
SH2101Vの商品企画を担当したシャープの河内厳副参事(通信システム事業本部 パーソナル通信第一事業部 商品企画部)は、「PDAとハンドセットの組み合わせは、(3年前にジュネーブで開催された)Telecom99にコンセプトモデルとして展示した。そういう意味では、3年くらい前に商品企画されたもの」と生い立ちを語る。 いろいろな意味で、SH2101Vは“夢”が詰まった端末だ。インターネットへの接続や動画配信、音楽再生、テレビ電話も可能。さらに通話はBluetoothで無線接続されたハンドセットで行える。 「PDAでFOMAの魅力を引き出せないか──」「(ハンドセットを指して)こんな小さな電話があったら、みんな驚くだろうな──」。こんな、“未来感を形にしていく”のがSH2101Vの基本コンセプトだ。
FOMAのテレビ電話を使ったことのある人なら分かると思うが、「今のビジュアルフォンはスタイル的に難しさがある」(河内氏)。利用にはイヤホンマイクを接続するという“儀式”が必要になるからだ。相手の顔が映る本体と、会話を行うハンドセットを分離することでSH2101Vでは、この問題を解消している。 FOMA初となる、動画配信サービス「M-stage visual」へ対応したことも、SH2101Vの特徴の1つ。FOMA本サービス直前になって、ドコモがM-stage visualの対応を取りやめた理由は、映像閲覧前のメニュー構成でこなれていない部分があったからだ(9月3日の記事参照)。FOMA試験サービス時のM-stage visualは、どの番組を見るか選択する画面も、時間課金である64Kbpsの回線交換で接続されていた。SH2101Vでは、「映像を見るまでiモード。iモードの画面からM-stageが立ち上がる。パケットと回線交換の切り替えをやっている」(河内氏)。 従来のPDAの使い方にこだわった部分もある。インターネットのWeb閲覧や、インターネットメールの閲覧機能がそれだ。SH2101Vではインターネットブラウザやメールを、ドコモのサービスとは別に使えるようになっている。PCで利用しているメールボックスに、SH2101VからPOP3で直接アクセスすることさえ可能だ。
さて、SH2101Vの謎を1つずつ解いていこう。まず1つ目は、Bluetoothを使ったハンドセットだ。 このハンドセットでは音声だけではなく、さまざまなデータのやりとりが行える。 例えばハンドセットは最大登録数50件の電話帳機能を持っており、本体に一切触れずに電話帳を検索し、電話がかけられるのだが、このデータはBluetooth経由で本体からコピーできる。 また、本体だけでなくハンドセットも16和音の着メロを鳴らすことができるが、このデータも本体からコピー可能。着メロデータを本体とハンドセット双方にダウンロードする必要はないわけだ。 こうしたBluetoothの活用は当たり前のようだが、実は簡単なことではなかったようだ。というのも、Bluetoothには音声のやりとりのためのプロファイル(用語)があるが、「ヘッドセットプロファイルには、電話発信の機能がない」(河内氏)からだ。ハンドセットからも電話をかけられるようにするため、シャープで独自のプロファイルを実装したのだという。 Bluetoothでは、ほかにもプロファイルとしてOBEXが実装されている。これはSH2101V本体同士や、シャープ製のBluetooth搭載PHS「パルディオ633S」(2001年11月の記事参照)との間で、アドレスデータなどをやりとりするのに使われる。 なお、本体とハンドセットはBluetoothで常時接続されている。そのためどうしてもバッテリー駆動時間に影響が生じる。SH2101Vの連続待受時間はメーカーの公表値が60時間だが、「Bluetooth接続を切れば、もう少し伸びる」(河内氏)という。
さてシャープ製のPDA……というと思い浮かぶのはザウルス。ザウルス向けの豊富なアプリケーションを利用できれば、SH2101Vの拡張性は大幅に向上する。Palmデバイスを見ても分かるように、アプリケーションの拡張性は昨今のPDAの評価を左右する。 しかし河内氏は、「ザウルスからのつながりは何もない」と説明する。ザウルスの追加アプリケーションである「MOREソフト」(用語)も、セキュリティ上の観点などから「動かないようにした」(河内氏)。ただし、利用するかどうかは分からないものの、独自のアプリケーションを追加できる仕組みは備えているという。
携帯電話とPDA、この2つは似ているようで微妙に異なっている。SH2101Vの位置づけは、どこにあるのだろうか。 どうやら“携帯とPDA”をシームレスに統合した”、こんな表現がSH2101Vには合いそうだ。“携帯電話に大きなディスプレイとキーボードを付けて、PIM機能を強化した”というのとは少々違う。 例えば、PDAでも携帯電話でも搭載が進んでいるSDカードスロット。SH2101Vのものは、携帯電話にSDカード機能を付けたというよりも、「PDAだからSDカードは使えて普通」(河内氏)というスタンス。 OSも、電話機のOSにPDA用のソフトを載せたのではなく、電話用のOSとPDA用のOSをそれぞれ搭載しているという。「電話機用のアプリケーションは、普通の(PDA用の)アプリケーションと違って、どんなときにも電話を取れるように作る必要がある」(河内氏)。
もちろん、これでSH2101Vの謎がすべて解けたわけではない。最大の謎は、ターゲットは誰なのか? だ。機能的に素晴らしい端末でも、12万円という価格はおいそれと手を出せるものではない。もしかしたらドコモ自身も販売戦略に迷いがあるのかもしれない。 「ビジネスマンというよりも、こういう機器が好きな方に売りたい」と、あるドコモ関係者は語っている。
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