Mobile:NEWS 2002年8月19日 11:59 PM 更新

年内には“P2Pケータイ”が登場? ――ワイヤレスP2Pの展望

無線通信を利用してユーザーの端末間を相互に接続し、情報交換を行う「ワイヤレスP2P」。国内では同分野の先駆けであるスカイリー・ネットワークスに、ワイヤレスP2Pビジネスの現状と同社の取り組みについて聞いた

 無線通信を使って、ユーザー間でバケツリレー式の情報交換を行い、ローカルなネットワーク網を構築していく「ワイヤレスP2P」。このシステムのインフラを担う通信端末には、ユーザーに広く普及している携帯電話が本命視されている。だが、問題は、それを可能にするBluetooth機能を搭載した端末がなかなか増えないこと。ワイヤレスP2Pの商用化にいち早く取り組んできたスカイリー・ネットワークスに、同社を取り巻くワイヤレスP2Pビジネスの現状と今後の展開について聞いた。

本命は“ケータイ”なのだが……

 「当社は設立当初から、携帯電話を中心に考えていた」と、同社の梅田英和社長は振り返る。同社が設立された2001年7月は、折りしも近距離無線通信が行える初のBluetooth搭載端末「C413S」(ソニー製)が登場し、評判になっていた頃だった。


同社の梅田英和社長

 同社が考えるワイヤレスP2Pシステムでネットワークを形成するためには、独自のP2Pソフトウェア「DECENTRA」を搭載した通信端末が必要となる(DECENTRAの詳細は別記事を参照)。端末間で情報を伝え合うため、インフラの役目を担う端末は多ければ多いほど良い。「現代人の必携品となっている“ケータイ”そのものにDECENTRAを組み込めれば、ワイヤレスP2Pのインフラなどすぐにできてしまう」というシナリオを梅田氏は描いていた。


Bluetooth搭載携帯をインフラにしてリレー式に通信をつなぐ

 「だがC413S以降、Bluetooth搭載携帯が予想以上に増えなかったのが誤算だった」(梅田氏)。通信キャリアも、Bluetoothの搭載には消極的だった。

 普及にあたって一番手っ取り早いのは、通信キャリア側がカメラ付き端末のような“キラーアプリケーション”としてワイヤレスP2Pを導入してくれることだ。だが、携帯電話同士で情報のやり取りを行うワイヤレスP2Pサービスは、端末を使っても通信料金が発生しない。「自分たちにお金が落ちてこないシステムには、通信キャリアの目は冷ややかだった」(梅田氏)。

 Bluetooth搭載端末がなかなか増えない中、それに代わる通信端末として同社が開発したのが、DECENTRAを組み込んだ専用通信端末「Gadgety」だ(詳細は別記事を参照)。今年4月の発表以来、P2Pのカンファレンス(別記事を参照)や無線通信の展示会「WIRELESS JAPAN2002」での出展を通じて、ワイヤレスP2Pシステムをアピールしてきた。

年内には“P2Pケータイ”が登場?

 だが、専用通信端末ではBluetoothモジュールだけでも約2000円となり、端末価格が意外と高くなってしまう。ネットワークのインフラを構築できるほど広く普及させるためには、大幅なコストダウンという難しい課題をクリアしなければならない。結局のところ、Bluetoothが搭載された携帯電話にDECENTRAを組み込む方が「はるかに安上がり」(梅田氏)なのだ。

 ここに来てようやく追い風も吹き始めた。携帯ユーザーの増加が頭打ちとなり、新しい機能付加による差別化が求められているからだ。これまでBluetooth搭載に消極的だった端末メーカーも考えを変え始めたようだ。

 「以前は通信キャリアに気を使っていたのか、当社にアプローチしてくる端末メーカーはなかったが、最近になって声がかかるようになった。この中にはBluetooth搭載ケータイの開発を進めている端末メーカーもあり、あわせてDECENTRAの組み込みにも興味を示している。年内にはワイヤレスP2P機能搭載をうたった携帯端末が登場するかもしれない」(梅田氏)。

 ある調査によると、カメラ付きケータイで撮影した静止画や動画の大半は、送信せずに友人などに見せるだけという使い方が増えているという。その理由は、画像など大きなデータを送るには現在の携帯電話では通信速度が遅すぎるのと、送信にあたっての通信コストだ。特に、目の前にいる友人にデータを渡すために、わざわざ通信キャリアのインフラを使うことほど馬鹿らしいことはない。

 対応端末同士なら無料でデータの送受信ができるワイヤレスP2Pシステム。バケツリレー式のネットワークを利用したアプリケーションも魅力だが、P2P本来の機能である1対1のデータやり取りだけでも、携帯電話には十分メリットがありそうだ。

商用化は堅実な企業ニーズから

 もっとも、現実にはBluetooth搭載携帯端末はまだ普及していない。ビジネスとしてみた場合、将来性はあっても、“お金になる”段階ではない。そんな状況にあって、ワイヤレスP2Pが実際にビジネスとして動き始めているのが、企業向けのソリューション分野だ。

 スカイリーでも昨年後半から、通信関連の展示会やセミナーなどで企業向けに“地道”にワイヤレスP2Pシステムを訴求してきた。その甲斐あって、今年はじめあたりから、同社への問い合わせも増えてきたという。

 「建設現場での利用などがその一例。このような場所では有線のネットワークは引けないが、現場の人の通信環境を確保するニーズはある。これまでならPHSを使うところだろうが、そうすると端末1台1台に通信費などを払うため、コストがかさんでしまう。ところがワイヤレスP2Pを使って現場の人を中継させれば、アクセスポイントを置かなくて済む。必要なくなれば、撤去も簡単。ネットワーク構築の大幅なコスト低減が図れる」(梅田氏)。

 また、災害復旧支援システムにも、ワイヤレスP2Pは有効だという。同社は、インターネットを利用した危機管理情報配信サービスを提供するレスキューナウ・ドット・ネットと共同で、ネットワークインフラが壊滅した災害地での情報インフラを整備するソリューションを開発した。DECENTRAを組み込んだ複数のPCを無線LANで接続することでメッシュ型のネットワーク網を構築し、通信衛星を利用したネットワーク回線までのインフラを確保する仕組みだ。

 このシステムは災害時の通信インフラ確保手段の1つとして東京都からも認められ、来月9月1日の防災の日に行われる東京都防災訓練「ビッグレスキュー2002」で、実証実験が行われる予定だ。

 この他でも、入退室管理などセキュリティシステムへの応用が検討されており、同社のワイヤレスP2Pは「個別のシステム構築から商用化が始まっている」(梅田氏)という。

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[西坂真人, ITmedia]

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