鷹山、64Kbps定額データ通信の試験サービス鷹山がIPフォンの今後のサービス概要を明らかにした。バックボーンと基地局との接続に使われているISDNを光ファイバに置き換え、無線通信はPHSの回線交換を用いる形で、10月から試験サービスを始める
鷹山は10月より3カ月間、東京都板橋区(徳丸)にてPHSと光ファイバ網を利用した定額64Kbpsデータ通信の実験サービスを開始する。募集人数は最大300人。トラフィック分析と市場性や技術課題の検討が目的となる。 現在32Kbpsのデータ通信速度を64Kbpsへ引き上げると共に、電力グループと提携しバックボーンへの接続の光ファイバ化を進める。PHSの基地局はNTTから借り受けたISDNでバックボーンに接続されており、通信コスト引き下げの最大のネックとなっている。ここを光化することでコストの削減を狙う。 ただし置き換えスケジュールは明らかにしておらず、「ISDN回線への接続を早い段階でIP(光ファイバ)に切り替える」(鷹山社長の高取直氏)と説明するに留まっている。 光化に伴って、基地局の数も現在の約10万局から半分程度に減らす予定。23区内の4万局を中心に、初期に設置した20mW出力の基地局を後期の400mW出力のものに変えることで、エリアの広さはそのままに数を削減する。それによって収容回線数は減少するが、現在アステル東京の契約者数は23万3500であり、5万局になっても十分ともいえる。 サービスの商用化、特に料金については今回も明確な回答を避けた。モニターを通じた実験で決めていくとしており、「(4980円で定額データ通信サービスを提供している)DDIポケットやアステル関西(ケイ・オプティコム)のサービスを十分に意識している」(高取氏)というに留めている。 2003年以降には、光化されたPHS網内では、音声通話が定額料金で利用できる「キャリングIPフォン」を展開する予定だ。ただし、こちらの詳細は明らかにされていない。
当初、「無線LANのエリア内ではVoIPの音声サービス、着信にはページャ網を使う」と語っていた鷹山だが(4月2日の記事参照)、この構想は技術的課題から実現が難しくなってきた。独自端末を開発する難しさもあるが、ページャの場合、呼び出しから着信まで30秒程度かかるという“遅延”が現在も問題となっているようだ(5月14日の記事参照)。 結局、鷹山のIPフォンサービスはバックボーンから基地局までを光ファイバで、基地局から端末までをPHSの回線交換方式で結ぶ形で落ち着きそうだ。この方式は既に関西のケイ・オプティコムが定額データ通信サービス「eoシリーズ」として提供しているものに近い(用語)。 鷹山のサービスでは、データだけでなく音声通話もターゲットにしているが、この方式は技術的には実績がある。ケイ・オプティコムのeo64は大好評でサービス開始後加入者を急速に増やしており、鷹山のサービスにも期待が持てそうだ。“ページャを利用したIPフォン……”という大風呂敷から、現実的な線に落ち着いたともいえる。
高取氏は、今回「われわれは小さなベンチャー」という言葉を連発。「(携帯電話などの)モバイルと競争する気はない。大変な速度で移動するものはモバイルにお任せする」と、自社のIPフォンの位置づけを説明した。 現在の次世代携帯電話に不満があるとし、「(ページャと無線LANの組み合わせで)次世代携帯電話を目指していく」(同氏)と打ち上げた当初の発表と比べると、かなりトーンダウンの感がある。 また今年秋、アステル東京の加入者に対し、定額音声通話サービスのキャンペーンを行うことも発表したが、価格帯および定額で通話可能な相手先に関しては「関東一都三県(のアステルユーザー)だけではない」というのみで、ほかのアステル事業者との連携を示唆するに留めた。
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