Mobile:NEWS 2002年10月4日 06:14 AM 更新

「3D液晶」が携帯に?〜シャープ、三洋

CEATECのシャープブース、三洋電機ブースでは、平面に表示された画像が飛び出して見える“3D液晶”が参考展示されている。左右の目の視差を利用して、奥行きを表現する技術だ

 「3D映像が見える……」というと、専用のメガネをかけたり、眼の焦点を手前に合わせたり、というものを思い浮かべるかもしれない。しかしシャープと三洋電機は、それぞれCEATEC JAPAN 2002で、裸眼で普通に3D映像を見ることのできる液晶パネルを展示した。


シャープが展示した3.8型の「3D液晶」。このほかに8.4型、15型のものも展示された。ちなみに、この写真をいくら見ても3Dには見えない。その理由は下記を参照してほしい

 シャープはこの10月から3D液晶の生産に入る。サイズはまずは2型になるもよう。従来の液晶に比べ1.5倍程度のコストアップとなるが、「2004年をめどに1.2倍まで抑えたい」と担当者は言う。

 この3D液晶は「古い技術だが、独自の切り替え技術を使ったもの」(担当者)だという。では、どうして裸眼で3D映像が見えるのだろうか。

液晶をマスクして、左右の目に異なる画像を表示

 基本的に3D映像は人間の眼の視差を利用して表現する。現実の世界を見ているとき、右目で見ている映像と左目で見ている映像は異なっており、その差を人は奥行きとして知覚するわけだ。そのため技術的なポイントは“どうやって左右の眼に別の映像を見せるか”になる。

 今回の3D液晶では、1ピクセルおきに液晶をマスクさせることで、左右の眼に異なる映像を見せる。右目と左目で液晶を見る角度が異なるため、マスクさせることで同じ場所を見ても異なるピクセルを見ることになるわけだ。


左右の眼の見る角度を利用して、マスクを通すことで、2つの映像を見せる(シャープ資料より)

 これにより、大がかりな装置なしに裸眼で立体映像が見られる。しかし欠点がないわけではない。1つは、液晶と眼との距離を固定する必要があることだ。シャープの場合、3.8型で40センチ、15型で70センチの距離に設定した。この距離より近くても遠くても、画像はぼやけてしまう。もちろん3Dにも見えない。

 また液晶が3D専用になってしまい、通常の画像が表示できないのも問題だ。シャープはマスクを動的にオン/オフする技術を開発し、2Dと3Dの切替を可能にした。実用化に当たっての技術的なポイントがここになる。


三洋が展示した携帯電話用の3Dディスプレイ(左)。また50インチのプラズマディスプレイを使い、複数人が同時に立体映像を見られるディスプレイも展示された(右)

 三洋が展示した3Dディスプレイも、原理的にはシャープのものと全く同じ。ただし、マスクは固定されており、シャープのもののように2Dへの切り替えは行えない。

 シャープ方式の欠点は、マスクが縦一列に並ぶため「水平方向の解像度の劣化が目立つ」(説明員)ことだ。120×160ピクセルの液晶の場合、原理的には60×160の画像2つを見ている計算になるからだ。三洋は、「階段状パララックスバリア方式」と呼ぶマスクの採用で、これを解決した。簡単にいえば縦の縞模様ではなく、市松模様にマスクを配置することで、解像度の劣化が横方向だけに偏らないようにしている。

 この方式の3Dディスプレイでは、同時に1人しか立体映像を見られないという問題がある。マスクを使う都合上、目の位置も距離も固定しなければならないからだ。

 それに対し、三洋は複数人が立体映像を見られる仕組みを、22型、50型といった大型ディスプレイ向けに開発、参考展示した。50型のほうは“4眼”といわれ、同時に4つの目、つまり2人が同時に立体映像を見られる。仕組みは簡単で、マスクの開口部をさらに半分に減らして、4つの目用に4枚の画像を表示するというものだ。当然、解像度はさらに劣化するし、輝度も低下する。

真の課題はコンテンツ

 技術的にはある程度実用の域にある両者の3Dディスプレイだが、最大の課題はコンテンツ。「3Dだけしか表示できないのでは、市場はしぼんでしまう」(シャープの担当者)からだ。同社の場合、2D表示への切り替えを可能にしたことで商品化の道が拓けた。

 また、コンテンツ作成側にとっては3D表示用の画像の生成も問題の1つだ。液晶自体に表示する画像は、1ピクセルごとに“右目用、左目用”の画像を並べなくてはならない。

 シャープのデモで使われた3D映像は元はOpen GLで描かれたもの。それをソフト処理で2枚の画像とし、ピクセルごとに並べている。ただしOpen GLのように元が3D描画向けのデータであれば、処理も簡単だが、例えば通常のテレビ画像から立体映像を自動生成することはできない。

 ということは、テレビ向けに3Dディスプレイを使うには、実際のところ表示させるコンテンツがないことになる。その点、携帯電話ならば1人で見るのが前提で、マスクの構造も簡単にできる。3D描画データの利用が増えていることもあり、まずはこの市場から狙っていくということになったようだ。



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[斎藤健二, ITmedia]

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