Mobile:NEWS 2002年10月7日 00:44 AM 更新

「いったいどれが迷惑メール?」〜対策の盲点

ドコモは「未承諾広告※」メールの受信拒否を開始した。しかし、その効果には疑問もある。筆者のiモードには、1週間で約50通の「未承諾広告」メールが届いてしまった

 NTTドコモが10月1日から、件名の頭に「未承諾広告※」が記載されたメールの拒否を開始した(7月2日の記事参照)。ユーザーが任意で設定できるもので、初期設定では「拒否する」になっている。

 一見、大きな効果を上げそうな対策だが、実は抜け道も多く、迷惑メールの根絶にはほど遠い。通信キャリアのネットワーク側では、打てる手をことごとく打った感もあるが、問題は「いったいどれが迷惑メールなのか?」の判断基準にあるようだ。


「未承諾広告※」拒否の難しさ

 「未承諾広告※」拒否サービスが始まってからしばらく、筆者はドメイン指定受信などのサービスを停止し、「未承諾広告※」を拒否するという新対策だけで、どれだけの効果を上げられるのか試してみた。10月1日からの1週間で、届いた迷惑メールは計52通。人によって届く量には差があると思うが、注目すべきはその件名だ。

件名冒頭タイプ件数
「未承諾広告※カッコ付きタイプ11
  未承諾広告※空白付きタイプ33
※未承諾広告※印逆転タイプ1
未承諾広告 ※間空白空きタイプ1
未承認広告※未“承認”タイプ1
未承諾広告※正しい表記5

 迷惑メールを送信する側も、さまざまな手法を凝らして“抜け穴”を突いてきていることが分かる。ドコモは「メール件名欄の最前部から14バイト以内(全角7文字分)に未承諾広告※と連続して記載されているメール」を、迷惑メールとして認識させている。そのため、頭に空白を2つ付ければ拒否の対象外となってしまうわけだ。

 もちろん、上に挙げた各種の表記は法律に違反している。例えば経済産業省の「特定商取引法施行規則」(省令改正後)によると、「表題部の最前部に未承諾広告※と表示しなければならない」とされており、空白を入れるだけでも同法に反することになる(6月26日の記事参照)。

 一見、法に則っているかに見せながら、より厳格に法を適用する通信キャリアのブロックをかいくぐっているのだ。

 1つ注意したいのは、正しく表記されていながらも受信拒否の網を潜り抜けて届いたメールが5通あること。ドコモ広報部によると「(今回の受信拒否対策は)iモード同士であるとまだ対応していない。iモードから送信された可能性がある」という。ただし、返信先のアドレスを見ると、一般のISPのドメインが記載されている。擬装された可能性よりも、何らかの受信拒否をかいくぐる手段を見つけた可能性のほうが高そうだ。

迷惑メール根絶のために必要なこと

 迷惑メールの根絶が難しい理由の1つは、どれが迷惑メールでどれが通常のメールなのかが判別できないことにある。あるユーザーにとっては迷惑メールでも、別のユーザーにとっては価値ある情報を含んだ大事なメールなのかもしれない。

 ユーザーの要求に応える形で、通信キャリアが迷惑メールのフィルタリングを行うには、“何が迷惑メールなのか”の基準をはっきりさせる必要があった。総務省および経産省の法律および省令によって、一応は“これが迷惑メールだ”という枠組みが決められ、これによって初めて、“迷惑メールの拒否”が可能になったわけだ。

 しかし迷惑メールの基準が決まれば、それから逃れようとする送信者がいるのも自明のこと。

 あるキャリアの関係者は「受信拒否を行っても、送信側も対策を打ってくる。いたちごっこ」とつぶやく。そもそも、ドコモは初期設定を“拒否”にしている。「法を厳格に守って、ユーザーに届かない広告を打とう」と思う送信者はいない。これでは効果が上がらないのは当然だ。

 では、解決策はどこにあるのか。

 “ワン切り”と異なり、iモード向けのメール送信を有料にするのは難しい。迷惑メール業者を地道に捜し出し、訴えるという方法も、“脅し”にはなっても迷惑メールを一掃する効果はないだろう。

 1つには、富士通製端末「F504i」が持っているような、ユーザーが細かなメールフィルタリングを行える機能を端末に実装することだ(5月27日の記事参照)。「未承諾広告」という文字が含まれるメールはもちろん、アドレス帳に記載されていないアドレスからのメールは受け取らない……という設定が行えれば、その端末のユーザーにとっては迷惑メールの数は激減が見込まれる。

 もちろん、ユーザー設定によるフィルタリングが通信キャリアのメールサーバ側で行えれば理想的だ。

 「設定が難しい」「すべての人が設定できるとはかぎらない」……この方法にも問題はある。しかし、「未承諾広告※メールを受信拒否する」といった一律の設定では、送信者はすぐに新しい送信方法を考えてくる。

 いたちごっこは続くかもしれないが、ある一線よりも先は、ユーザーに豊富な選択肢を用意し、自己責任で迷惑メールを回避してもらう以外、道はないのかもしれない。



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[斎藤健二, ITmedia]

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