Mobile:NEWS 2003年8月18日 02:56 PM 更新

Interview
CLIEはどこへ行くのか?(3/3)


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 「本来、OSはお客さんの目に触れる必要のない存在です。Windows系OSでは、ユーザー体験を決定付ける部分がOSに組み込まれ、OSとしてのブランドが表面化していますが、われわれはCLIEにソニーが構築した、ソニーのセンスを持つユーザーインタフェースを提供したい。そこでPalm OSの上にCLIEのアプリケーションを構築してきたわけです」

 「一番大事にしなければならないのはアプリケーションです。そうした面を見ると、ワールドワイドでのデベロッパー数はPalmが多く、特にエンタープライズアプリケーションへの接続性が高いというメリットがあります。Palmが米国市場で先行したこともあり、米国市場で使われている業務アプリケーションパッケージとの連携が強いことは、CLIEの大きな強みになっていると言えます」

 Palm Sourceは次世代Palm OSのSaharaについてアナウンスを行ってます。このSaharaによってCLIEにも変化が起こると考えていますか?

 「Saharaでは、PDAをビジネスで利用するためのアプリケーションに対して、セキュリティや堅牢性などの機能を強化してくれます。特に企業の基幹システムとの接続などでは威力を発揮するはずです」

 「CLIEとしては、Saharaのセキュリティの高さを利用したアプリケーションを提案したいですね。指紋認証デバイスを用いた個人認証、非接触IDカードのFeliCa技術(JRのSuicaカードに使われている技術)を用いた電子鍵による認証を行えるようにしたい。また、FeliCaを用いれば、CLIEを財布代わりに買い物ができるようになるでしょう」

 「いずれにしろ、セキュリティ、堅牢性、それにTCP/IPのプロトコルスタックなど、さまざまな基盤となるサービスは必要になってきますし、それらを自社で開発するのは大変なことです。ですからわれわれはベースの部分に今後もPalm OSを用いていきます。その上で動かすアプリケーションとハードウェア自身の革新性で勝負していきます」

PSPとは競合しない?

 ソニーは自社製PCのバイオがあり、またネットワーク指向の強いCoCoonという製品ラインもあります。CLIEと他のソニー製デジタルデバイスとの関係は、今のところ希薄に見えますが、今後はどのような方向に行くのでしょうか?

 「われわれの製品と他のソニー製品となると、最初に考えなければならないのはバイオとの親和性を高めることでしょう。現在もメモリースティックを用いた連携は行えます。例えばGigaPocketから映像をメモリスティックにエクスポートして、CLIEで再生することも可能ですし、SonicStageからメモリースティックに音楽を転送し、CLIEで再生できる。しかし、より密な連携や同期といった視点でみると、ホットシンクしかできないのが現状です。それを乗り越えて。バイオの豊富な機能をCLIEで活用する手段は考えているところです」

 ソニーグループで見ると、グループ会社のソニー・コンピュータエンタテインメント(SCE)が先日発表したPSP(Playstation Portable)との関係も気になります。ゲーム機からのアプローチ、PDAからのアプローチ、立ち位置は全く異なるものの、ポータブル向け動画コンテンツを流通させようとするなど、似通った部分が見受けられるからです。

 “パーソナル”あるいは“エンターテイメント”といった切り口で考えると、PDA的要素がそこそこサポートされていれば、PSPでイイやと思う人もいそうですが……。

 「実はその点に関して先日、久夛良木さん(久夛良木健SCE社長兼CEO)と話をしたところです。ソニーという企業グループの中で、ポータブル、パーソナル、エンターテイメントといったキーワードで製品を作っている以上、当然、分野的に重なってしまうところはあります」

 「しかし、PSPにキーボードが付いて仕事がしやすくなる、なんてことはあり得ないわけです。一方、CLIEにアナログジョイスティックを付けてほしいというニーズもないでしょう。ユーザーと接する部分の作り方が根本的に異なります」

 とはいえ、携帯電話以外に、もうひとつだけ何か電子デバイスを持ち歩くといった時、PSPとPDAで迷うケースはあるのではないでしょうか。PSPが純粋なゲーム機ならば競合はしないでしょうが、ある程度PDAのエッセンスを盛り込んでしまうと分が悪いかもしれません。

 「仕事に使うデバイス、コミュニケーションに使うデバイス、といった時点で、CLIEの方が優勢に立つでしょう。そもそも目的が異なりますし、すみ分けていく自信はあります」

 競合しないのであれば、将来的にPSPとアーキテクチャーを共有するというアプローチもあるのでは? PSPの強力なピクセル処理能力は、エンターテインメントをキーワードの一つに掲げるCLIEにも有益でしょう。

 「OS論の部分でもお話ししましたが、これまでPalm OSの資産をうまく活用し、その上に数多くのアプリケーションも構築してきました。その蓄積を活かすためにも、アーキテクチャーではなく、アプリケーションや使い方の提案にリソースを集中したいと考えています。特に、ソフトウェアの基盤技術に関しては、Saharaで相当に強化されます。それを活用しない手はありません」

朝起きてから夜寝るまで、手放せない製品を

 これまでのCLIEで達成できたこと。そしてやり残したことを端的に表現すると?

 「まだまだ、自分たちがやりたいと思っていることはできていません。逆説的ですが、まだまだCLIEには可能性があります。確かに現状、市場サイズは大きくありませんが、大きな市場へと成長することができると思います。現時点で、ソニーが新しいことをやるための、ハードウェアとしての形はできたと思います。しかし、そのハードウェアでできることは限られています。その結果、朝起きてから夜寝るまで、手放せない製品にまでは至っていない。そう思ってもらえる製品になるよう、アプリケーションや環境を整備していく必要があります」

 CLIEが次のステップへと進む“マイルストーン”は、どのぐらい先にあると考えていますか?

 「次の大きなステップは2年後に起こるでしょう。PDAが次のステップへと進化するには、製品だけではなく、社会的な情報インフラの整備や様々な相互標準が必要になります。それらがそろってくるのが2年後だと予測しています」

 「しかし、ソニーらしい新しいアプリケーションであれば、来年、非常に興味深いものが提供できます。そのアプリケーションを基礎に、2年後に究極のCLIEを作りたい。何事も一気にゴールへとはたどり着けません。ソフトウェア技術を積み上げる必要があります。現在のPDAで満足しているユーザーにも、買い換える価値を十分に感じてもらえるものになるでしょう」



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[本田雅一, ITmedia]

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