Mobile:NEWS 2003年11月19日 04:41 PM 更新

「ケータイ先進国日本」は復活するのか?
モバイルコマースの可能性(3)

モバイルコマースの普及にはさまざまなハードルが存在する。このところ立て続けに発表されたキャリアの新しい動きは、それを解消する可能性を秘めている。

 前回は(10月3日の記事参照)、消費者の購買行動における携帯電話の位置付けを中心に、モバイルコマースの可能性に関する考察を行った。この中で、購買行動の中に“段階”があり、最初の段階にハードルがあると述べた。この点に関して読者の方々からさまざまなご意見を頂いた。

 まとめると、ハードルはさまざまなところにあると認識をしている人が非常に多い。多くは通信料と帯域、場所に関わる問題であった。

 通信料の視点では、10月22日にKDDIが「CDMA 1x WIN」(10月22日の記事参照)という、最大2.4Mbpsでパケット通信に限り月額4200円の定額サービスを発表するという新しい動きがあった。これは“通信料金”というハードルに対して一石を投じるサービルとなるであろう。インターネットもそれに関わる通信料金が定額になり、帯域が広がることでそこに広がるサービスや情報量、もちろんコマースも消費者に浸透したことを鑑みると、歓迎すべき発表であるといえよう。

 場所に関わる議論は、非常に興味深い。前回も、ケータイは常に携帯しているからこそ、利便性の高いアクセスチャネルであると述べたわけだが、その場所にあってほしいものは果たして何か? 場所に関連するモチベーションはさまざまだと考える。

 典型的な例はイベントやコンサート会場での購買意欲である。当然ではあるが、その場所でしか買えない物、限定品ということで消費者の購買意欲を高めるマーケティングが行われるわけだが、このような場所では、その場で手にできることが満足感を得る重要なポイントだと思われる。もちろん、その場で予約をすることで確実に手に入れることができる、ということも重要であろう。

 PCによるEコマースとモバイルコマースの大きな違いは、この“場所”をどのように捉えるかにある。言い換えるとモバイルコマースは、もはや決済決断を促すデバイスとしての携帯電話という位置付けから、“場所”との連携、すなわちリアル決済との連動が重要になると思われる。本格的なモバイルウォレットの時代、携帯電話がお財布になる時代が目の前に来ているのである。

FeliCa内蔵携帯がモバイルコマースを前進させる?

 さて、再びお隣韓国の話題に触れたい。 KTFの某氏と議論をしたときの話題である。

 韓国でモバイルコマースが発展する一つの理由として、信用供与による決済、つまりクレジット決済の普及という背景を挙げていた。消費者が使うお金に占めるクレジットの利用率は、韓国がずば抜けて高く、50%程度を占めるという。その他アジア・太平洋地域の国々の平均は、15%−20%といわれており、日本では7%程度に過ぎない。

 モバイルコマースの可能性に関して、いわゆるキャッシュレスが浸透している商習慣を高く評価しているということである。

 加えて、モバイルコマースに対して韓国消費者が大きく期待するのはセキュリティだという。支払いの際にクレジットカードを店員に渡す必要がないということ、つまりスキミング防止のために、店員がカードを持っていくことを避けられるということである。

 韓国では通貨危機後、政府は内需拡大と国民の税負担減に向けクレジットカードの使用を奨励し始めた。さらにさまざまな税制上の優遇措置を取ったわけだが、消費者はそこに安全かつ便利に利用できる手段としてのモバイルコマースに大きな期待を寄せているということである。

 10月27日にソニーとNTTドコモが発表した合弁会社「フェリカネットワークス」(10月27日の記事参照)は、まさにこの時代に向けての先駆けであろう。

 この発表直後、「これが実現された場合、なにが起きるのですか?」と問い合わせを頂いた。最大の関心事は、“Edyが使えるようになったときにチャージするのに通話料はどうなるんですか?”“駅にiモード用のクレードルができるんですか?”“落としたら大変かも”“他社の携帯に乗り換えられなくなるんですか?”などだ。消費者は興味を持っているということである。

 購買行動の中でのハードルは、「段階」の中でも複数存在する。場所や料金の問題、さらに決済の瞬間にも、それぞれのシーンでハードルがある。これらはEコマースにあったそれよりも、おそらく消費者心理に近いところで存在しているのかもしれない。言い換えると携帯電話は、「お財布」と同じ価値なのかもしれない。

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著者紹介
福本靖:株式会社ザイオン取締役コンサルティング事業部長。日本ヒューレット・パッカード時代から多くのネットワークおよびモバイル・ビジネスに従事。「LANネットワーク管理技法」「Kornel Terplan」の著作もある。



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