900iシリーズで「ネットゲーム」の土壌が生まれる
500Kバイトと容量が大幅に増えたiアプリ、安いパケット通信料──。バンダイネットワークスの高橋豊志常務は、こうした特徴を備える900iシリーズのプラットフォームが、「携帯ゲームの新しい一歩を拓く」と話す。
FOMAのパケット料金の安さ、900iシリーズの大容量アプリ──。「2つの要素が、モバイルネットゲームの世界を開く」というのが、バンダイネットワークスの高橋豊志常務の見方だ。
900iシリーズの新機能キャラ電は、待ち受けiアプリサイト「キャラっぱ!」シリーズの一アイテムとして提供する。当初はハローキティ、こげぱん、しげしげしげお、機動戦士ガンダム、ガンダムSEED、アフロ犬、326のキャラ電を提供予定
安いパケ代でネットゲームが加速する
PDCのハイエンドモデル「505i」シリーズでは、iアプリ容量が230Kバイト(アプリ30Kバイト、スクラッチパッド200Kバイト)と拡張されたが(2003年4月の記事参照)パケット料金は変わらなかった(2003年6月の記事参照)。アプリのダウンロードだけでかなりのパケット代がかかってしまうため、ネットワーク対応させるのは難しかったと高橋氏。こうした事情からか、表現力に優れたアプリは各社からリリースされたものの、“携帯電話ならでは”の通信を生かした「まったく新しいゲーム」がブレイクするにはいたらなかった。
900iシリーズは、iアプリ容量が500Kバイト(アプリ100Kバイト、スクラッチパッド400Kバイト)と、505iシリーズの倍以上に拡張された上、FOMAシリーズのウリでもある「安いパケット料金」で利用できる(2003年12月の記事参照)。
500Kバイトのiアプリを、505iシリーズでダウンロードしたと仮定した場合、約1200円かかってしまう。これがFOMAのパケットパック40加入者なら約200円、パケットパック80なら約80円で済む(パケットパック未加入のFOMAで約800円)。505iシリーズに比べれば“パケ死”の心配が大幅に減るため、通信を取り入れたゲームも提供しやすくなるというわけだ。
「新しい一歩が踏み出せるプラットフォームが900iシリーズで整った。ネットワーク系のコンテンツが携帯電話上で本格的に実現できるようになってくるのではないか」
バンダイネットワークスは、まずは空き時間を使って気軽に遊べるゲームを揃えた「SIMPLE100シリーズ」に、ネット対戦の要素を取り入れたい考え。「既に提供しているネット上のランキング表示にユーザーのゲームデータを連動させ、擬似リアル対戦できるように持っていきたい」
例えばボウリングのゲームで遊ぼうと思ったときに、「ランキングトップのユーザーの軌跡データをダウンロードしてマッチプレイすれば、リアルで戦っているように遊べる」。
また「機動戦士ガンダム」のシューティングゲームでフランス、ドイツ、オランダ、スペインのiモードユーザーとランキングを競える仕組みを導入していることから、シンプル100シリーズでも、海外のユーザーと仮想対戦できるようにしていきたいという。また将来的にはカードゲームやボードゲームなどを中心に、リアルタイム対戦の要素も取り入れていく計画だ。
もう一つ可能性として見えるのは、PCでは普及し始めているネット参加型ゲームとの連携だと高橋氏。「ラグナログオンラインと提携してモバイルコンテンツを提供しているが、PCのユーザーは30万人を超えているのに、モバイルサイトはそこまではなかなか伸びていかない。例えば、携帯でもPCと同じような形で遊べて、その結果がPCに反映される──そういったステージが、大容量iアプリと安いパケット代で整ってきた」
“月額500円”の影響は
「昔は1本あたり数十万円から数百万円だったものが、今では数千万円単位」と高橋氏が言うように、900iシリーズでは開発費用の増大が予想される。そのためか、月額利用料金の上限は500円に引き上げられた。
ただ、コンテンツプロバイダにとっては開発費回収のめどが立ちやすくなる半面「正直なところ、(登録してもらえる)会員数は前より少ないと見るしかない」という状況もあるため複雑なようだ。「500円出してもいい──と思ってもらえるようなゲームを作るしかない」
“月額500円”の世界に、ついていけないコンテンツプロバイダも増えてくるのではないかと高橋氏は見ている。「毎月500円払う価値のあるリッチで楽しいゲームを提供し続けていかなければならない。それなりのゲーム資産やキャラクター資産を持っている会社じゃないと提供は難しい」
リッチなコンテンツを開発できる会社は限られている上、「質の高いゲームを作る会社でも、開発費が高かったら厳しい」ことから、開発会社の競争も激化すると予想する。
バンダイネットワークスは、月額利用料100円の「SIMPLE100シリーズ」から、900i専用のハイエンドコンテンツ「機動戦士ガンダム3Dオペレーション」といったゲームまで、価格帯、ニーズ共に幅広く対応することで、収支のバランスをとりたい考えだ。
関連記事
- ドコモ、505iのJava仕様~DoJa3.0を公開
505iのJava仕様が公開された。スクラッチパッドサイズが拡大されるほか、端末情報の取得、ネイティブアプリケーションとの連携が可能になる。iアプリから別のiアプリを呼び出すこともできる。ただし「iアプリDX」は、公式プロバイダのみが利用できるとされ、詳細は明かされていない - 「505i」はFOMAへの架け橋
好調なドコモの「505iシリーズ」。しかし、ほぼ従来の倍の容量に拡大されたコンテンツサイズは、パケット料金の増大をもたらす。巨額の請求書を受け取った505iユーザーはどうするのか? - FOMA「900i」を買うべきか
50xシリーズに代わるドコモのメインストリームを担う役割を持ったFOMA「900iシリーズ」が発表された。ドコモユーザーは果たして900iに乗り換えるべきなのだろうか。待受時間など基本スペック、新サービス、端末などを、auやボーダフォンの端末とも比較しながら考えてみる。 - 特集:900iシリーズ登場
2004年2月には、FOMAの新シリーズ「900i」が登場する。カメラや端末の重さ、待受時間などさまざまな面で、ムーバと同等の仕様とし、コンテンツなどのサービス面では505iを上回る。
関連リンク
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.