日本政府、米通商代表に「安易に政府間問題にするな」
先日、米通商代表が“日本のTD-CDMAの閉鎖性”を指摘した問題で、総務省は日本政府としてのコメントをとりまとめ、米国政府に伝達した。通信業界の動向を「安易に政府間の問題として持ち出すな」との文面が並んでいる。
米通商代表(USTR:United States Trade Representative)が2004年の年次報告書の中で“日本のTD-CDMAの閉鎖性”を指摘した問題で(4月9日の記事参照)、総務省は日本政府側がコメントをとりまとめ、外交ルートを通じて米国政府に伝達したと発表した。通信業界の動向を「安易に政府間の問題として持ち出す姿勢を改めていただきたい」との辛らつな文面が並んでいる。
発端となったのは、USTRが現地時間4月7日に公表した「1377条レビュー」。この中で、日本の総務省がTD-CDMA向けに割り当てると見られる周波数帯で、「複数の米国企業がこの周波数帯を利用して新技術を試すべく、免許を申請したが、これを却下した」との記述があった。これに対し総務省側は「事実と異なる記述がある」と反発していた。
「一方的なアプローチ自体が問題」
日本政府のコメントを見ると、1377条レビューは「米国自身の判断により(中略)『通商合意』の運用と有効性を審査し、他国に対する措置を決定する際の前提とするもの」とした上で、「このような一方的なアプローチをとることを容認する条項が存在すること自体、懸念を有している」との記述がある。
同レビューで取り上げている事項の多くは「事業者間個別の問題」であり、電気通信事業法の規定する意見申出や、総務大臣の命令・裁定などもない段階で「安易に政府間の問題として持ち出す姿勢を(米通商代表は)改めていただきたい」。
取りざたされたTD-CDMAの周波数問題では、「特定の米国企業の技術を採用して2010MHz付近の周波数の使用を希望する日本企業」に対し、既に免許を付与したとコメントした。これは、昨日発表があった“Navini Networksの技術を採用するイー・アクセス”(4月21日の記事参照)のことを指すと思われる。
日本政府はまた、「我が国の情報通信分野の現状を見ると(中略)世界的にみても大きな成果を上げているが、これは総務省の公正・中立かつ競争促進的な政策が有効に機能した」と強調。政府の手法が、WTOルールにも整合する公正なものだと主張した。
関連記事
- 米通商代表が「TD-CDMAの閉鎖性」を糾弾する理由
米通商代表はこのほど、年次報告書の中で日本のTD-CDMAをめぐる行政の“閉鎖性”を指摘した。背景には、新しい帯域の割り当てがどう進むかへの注目の高まりもある。TD-CDMAの現状と課題を、もう一度振り返ってみよう。 - イー・アクセスもTD-SCDMA(MC)実験、5月15日頃から
イー・アクセスは5月15日頃から、都内でTD-SCDMA(MC)の実験を開始する。アイピーモバイルとの相互干渉の恐れがあることから、本サービス展開を目指す2010~2025MHz帯でなく、2000~2005MHz帯で実験を行う。
関連リンク
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.