携帯電話の歴史がここに。Nokiaのメイン工場を見学
北欧フィンランドに位置する、携帯の巨人Nokia。17万平方メートルにおよぶ広さを持ち、1万2000人が働くNokiaの巨大なメイン工場を訪ねた。
この10年ほどで一気にわれわれの生活に浸透した携帯電話。日本での普及率はおよそ7割、他の先進国も同じぐらいの水準で普及しており、中国やインドなどの普及もめざましい。昨年、世界で出荷された携帯電話の総数は約4億7100万台ともいわれているが、そのうちの3~4台に1台は、北欧フィンランドのNokiaのロゴが入ったものだ。
日本でも3G端末「Nokia 7600」を発売したNokia。フィンランドにある世界最大手の端末メーカーの本社と工場を訪問した。
携帯電話発祥の地
フィンランドの首都ヘルシンキから西に約120キロ、視界を遮るものが何もない緑の中にNokiaのメイン工場であるサロ工場がある。サロ工場は、Nokiaにとって、そして携帯を愛するユーザーにとっても重要な場所だ。
Nokiaが初めて携帯(“mobile”ではなく“portable”)電話を創り出した地がここになる。1984年のことだった。今となっては携帯とはとても呼べそうにない「Nokia Talkman」と名付けられたアンテナ付きの黒い箱がそれだ。重さ約5キロ。Nokiaの担当者によると、船や車の中に持ち込んで利用されることが多かったという。
それから3年、現在の携帯電話の原型といえる長方形の「Nokia Cityman」が登場。かなりの厚さ・高さだが、“ポケットに入る電話”として注目を集めたのだそうだ。重さ840グラム。数回の通話で充電する必要があったが、当時は画期的だった。当時、ソ連の書記長ゴルバチョフ氏がヘルシンキ訪問の際に手にしたのもこのシリーズだったはずだ。
初のデジタル式携帯電話「Nokia 1011」が誕生し、通話が成功したのが1991年。「Nokia 1011」は470グラム、現在市場に出ている「Nokia 8210」は80グラムを切る。いまでも軽量化、小型化、高機能化は全端末メーカーが工夫・改善を重ねている。
Nokiaのサロ工場は、同社が電気・通信事業に集中し始めた1980年ごろから稼働しており、1990年代に急成長を遂げた携帯電話の歴史の最前線にいた。現在Nokiaはこのサロ工場を含め、世界で9カ所の工場を運営しているが、お膝元のサロ工場は最も重要な工場。同社CEO兼会長のヨルマ・オリラ氏も、よく顔を出すのだそうだ。
昨年Nokiaは1億7900万台の携帯電話を出荷した。製品の回転が速く、バリエーションに富み、価格競争にもさらされている携帯電話の生産は、効率が肝心。同社は完成品在庫を一切持たないサプライチェーン体制を敷き、週6時間24時間体制で需要に対応している。1992年当時の生産性を1とすると、2003年には127.1倍の生産性を実現したという。
北欧デザインそのもの~Nokia本社
“世界のNokia”となった同社の心臓部は、ヘルシンキから少し離れたところにある。拡大をにらんで本社の建て直しに入り、1997年に完成したガラス張りの9階建ての建物は“Nokiaハウス”と呼ばれている。オリラ氏が就任後、GSMへ注力するという賭けが当たり、同社が一気にトップにのし上がっていったころだ。
Nokiaの本社は北欧デザインそのものだった。設計を手がけたのは、フィンランドで最も有名な建築家、ペッカ・ヘリン氏。木材とガラスを取り入れ、光がふんだんに入るつくりとなっている。何でも、総計9万5000枚のガラスが使われているのだとか。メインエントランスを入ると、ガラスの向こう側に海が広がっている。
この日は1階にあるカフェテリアやミーティングルームを見せてもらったが、フィンランドが本場のサウナやジム、クリニックもあるという。オリラ氏の部屋は7階にあるのだそうだ。
カフェテリア。社員食堂は複数あり、値段はレストランより多少安いという。Nokia製品がずらりと陳列してある(右下)。ずらりと並んだミーティングルームの廊下(右上)。ミーティングルームには世界の都市名が付けられていた
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