NokiaのSymbian戦略、オープン性でMicrosoftに対抗:NOKIA CONNECTION 2004
SymbianのUI、Series 60の最新バージョン2.0が発表された。QVGAディスプレイや、SVGのサポート、プログラミング環境としてPhythonも利用可能とした。
Nokiaが6月14日から2日間、本拠地フィンランドのヘルシンキで開催した「Nokia Connection 2004」で、同社CTO兼取締役副社長のペルティ・コルホネン氏はモバイルOSを開発・提供する合弁会社英Symbianについての戦略を明らかにした。引き続きオープン性を維持することで対Microsoft戦に応じる構えだ。
Symbianは、NokiaやMotorolaといった複数の端末ベンダーとスマートフォンという将来をにらみ、そのOSを開発・ライセンス供与する会社として共同で設立した会社だ。だが、2003年に2番手のMotorolaが撤退し(2003年8月30日の記事参照)、今年2月にはNokiaがPsionの売却株を購入することに。これによりNokiaの株式保有率は過半数を上回り、Symibianは事実上Nokiaのものと見る向きも多い(2月10日の記事参照)。現在、Symbianの株主は、Nokia、SonyEricsson、Samsung、Siemens、パナソニックとなる。
コルホネン氏はまず、NokiaのSymbian戦略として、「オープンな標準プラットフォームの維持、競合性を確保、サポート端末を増やす、プラットフォームを分断化することなく複数のUIをサポートする」の4点を挙げ、これらをほかの出資会社と協調しながら進めていく意向を示した。
技術的に見たNokiaとSymbianの関係は、複数あるSymbian OSのUIをNokiaが開発・提供しているという関係。Nokiaが提供するUIには、Series 60/Series 80/Series 90などがあるが、中核となるのがSeries 60だ。端末におけるNokiaの戦略は多様化する携帯端末の全セグメントをカバーするというもので、同社はSeries 60でコンシューマからエンタープライズまで広い守備範囲を持たせているからだ(2003年6月26日の記事参照)。また、Series 60は唯一他社にライセンス供与しているUIでもある。つまりSeries 60はSymbian戦略の3番目である「サポート端末の増加」を実現する役割も担うのだ。
Series 60のライセンス取得ベンダーは、Siemens、Samsung、パナソニック・モバイル、LG Electronics、Lenovo、Sendoの6社で、コホルネン氏によると、現在、Nokiaを含め7社から16種類のSeries 60端末が提供されているという(6月3日の記事参照)。出荷実績は1000万台以上。もちろん、Symbian OSの中で最も多く利用されている。この日、NokiaはSeries 60の最新バージョン2.0を発表、「業界ベストのUIとなった」とコルホネン氏は自信を見せる。
最新バージョンでは、複数の無線方式をサポート、解像度の拡充、プッシュEメール機能やセキュリティなどエンタープライズ機能の充実などが大きな強化点となる。
無線方式では、CDMAとWCDMA、GSM/GPRS/EDGE、それにWLANやBluetoothもサポートする。解像度は、これまでの176×208の1種類に加え、正方形の208×208や、240×320 QVGA、352×416が新たに加わり、縦と横の2方向をサポートする。また、UIフレームワークでSVG(Scalable Vector Graphics)をサポート(2002年11月19日の記事参照)、開発者は解像度に依存しないアプリケーションを設計できる。プログラミング環境では、Phythonもサポートした。これらの機能強化により、ストリーミングやテレビ会議のような3Gのマルチメディアサービスを容易に実現できるという。
NokiaはSymbianに関して、一貫してオープン、業界標準というキーワードを用いている。Microsoftの強みの1つがPCで慣れ親しんだUIであることから、Symbianは今後、端末ベンダーだけではなくポータルを提供するオペレータとの協業も欠かせなくなるだろう。実際、コルホネン氏は「Series 60はオペレータのポータルサービス展開をサポートする」と述べている。
Nokiaは第1四半期、スマートフォンのシェアを伸ばしているが、Microsoftのシェアが拡大すると予測する業界アナリストは多い。すでに技術統合が始まっている携帯電話業界にとって、ここ1、2年は今後の方向性が決まるという重要な時期となりそうだ。
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