携帯と無線LANの融合を、真面目に考える(2/2 ページ)
携帯と無線LANの融合が進んでいる。両方式のシームレスな統合が期待されるが、実現にはそれなりのアーキテクチャが必要のようだ。
ところで、そもそも3Gと無線LANの統合は必要なのか。現在の3G携帯が進化した先にある「4G」は、100Mbpsという通信速度を実現するとされている(7月23日の記事参照)。そんな「夢の通信方式」が1つあれば、異種ネットワークを統合する必要はないのではないか。
しかし黒田氏は、「無線通信では、高速を実現するなら距離が縮まるのは必然。4Gではおそらく、数キロのセル半径を実現できない」と断じる。
「到達距離が短い方式だけでシステムを組むと、基地局が多く必要になる。これではコストがかかってしかたがない。過去に2Gが3Gに置き換わったように、『3Gが4Gに置き換わる』と考える人間がいるが、これは間違い」。4Gは万能ではなく、“場所によっては高速な通信ができる”程度の位置付けになるとの見方だ。
黒田氏は同様に、IEEE 802系でもIEEE 802.16やIEEE 802.20のように、距離に応じたさまざまな方式があることを指摘しつつ、各方式を組み合わせることの意味は小さくないとした。
同研究所のデモ環境にあったVoIP端末。Linuxザウルスの既製品を、Linuxのソースを書き直してVoIP通話できるようにしている。10月から実際に電波を飛ばして、3Gと無線LANのハンドオーバーテストに入るという
事業者の同意が得られるか?
黒田氏の主張は、“独立行政法人”との立場に立ったものだ。しかし、キャリアはキャリアでビジネスを考えている。ドコモなら「FOMAとMzoneだけで閉じたサービスを提供する」、ソフトバンクなら「新規参入する携帯事業と、Yahoo!BB モバイルだけで加入者を囲い込む」。そう考えてもおかしくない。
だが、黒田氏はビジネス上も標準化のメリットはあるのだと強調する。
「各キャリア個別の方式では、機器の値段を下げられない。標準化すれば、必ず値段が落ちる。IEEE 802.11の無線LAN製品がいい例だ」
黒田氏は、いま米国のやり方は「明らかに自分たちが標準を作って、それを支配するんだ」という路線だと話す。「それを韓国や中国も見守っている。Samsungあたりも802.21に興味を示している」
日本の事業者が独自方式を提案しても、たとえば中国で受け容れられなければ、端末を中国に持ちこめなくなる。中国進出にあたり、イチから機器を作り直し……という事態になりかねない。そうではなく、通信業界を横断するような標準仕様を作り、それを採用することが重要なのだと黒田氏は繰り返した。
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