携帯にテレビをつけてみませんか?~1セグのビジネスモデル(3/3 ページ)
1セグテレビ放送の推進に積極的な日テレは、端末商品力の面で携帯は魅力的なパートナーだと話す。1セグ放送成功のために、テレビと携帯が相互にメリットを持つビジネスモデルとは──。
1セグ普及には、魅力的な端末が必須
テレビと携帯の連携を考える前に、「放送ビジネスの成功には何が必要か?」を佐野氏は考えたという。その結果、「携帯──このパートナーを引きずり込もうじゃないか」という結論に至った。放送ビジネス成功に必要な要素とは、いったい何だったのか。
1つは“伝送路”だ。どこへ行ってもしっかり視聴できること。ここは絶対に外せない要素だ。モバイル放送のようにギャップフィラー(電波の再送装置)を持たない1セグ放送は、ビルの陰などで受信がしにくくなるのではといった懸念は以前からあった。
しかし2003年8月に、東京タワーからフルパワーで電波を発射する大電力実験をやったところ、「これだけ(電送力が)あれば、商売になる。東京タワー1つでもOK」(佐野氏)という感触が得られた佐野氏は話す。
「例えば新宿の駅のホーム。全部受けられました。プラットフォームを結ぶ地下通路。階段など空が見えている場所なら受かる。渋谷ハチ公前のカラオケボックス。OKだった」
2つ目は“コンテンツ力”だ。1セグ放送では、固定テレビ向けの放送と「ほぼ同じ番組を送る」(佐野氏)予定(10月2日の記事参照)。当初は1セグ専用の放送を作る必要があるのではないか、という議論もあったようだが、現在はサイマル放送ということで落ち着いた。
「家でなければ見られなかった番組が、外でも見られる。これはコンテンツ力がある」(佐野氏)という判断だ。
3つ目は“魅力的な端末”である。実は1セグ放送にとって、これが最大の課題だった。まず「ポケットに2台の機械を持ち歩く人は少ない」こと。同社が外出時に携帯・現金以外に持ち歩くものを調べたところ、ポータブルオーディオ機器が唯一、ある程度のユーザーが持ち歩くものだった。
「ポータブルオーディオの代わりに1セグテレビを持ってもらうか、ポータブルオーディオに1セグテレビ機能を付けてもらうか。そして携帯だ」(佐野氏)
携帯の場合は、普及台数のほかに特殊な販売ルートが魅力となる。「インセンティブ販売、1円端末……。携帯をパートナーとすることで、違う流通ルートで端末が流れる」(佐野氏)。
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