プラットフォーム共有で、進む携帯PC化:2004年を振り返る(2/2 ページ)
増大する3G端末開発負担に対し、端末メーカー間協業、そしてOSや通信チップ、操作性などの共通化を進める動きが目立ったのが2004年だ。携帯のPC化はどこへ向かうのか。
もう1つの動きは、Windows Mobileの採用だ。KDDIは、愛・地球博向けの試作機としてWindows Mobile 2003を搭載した「愛・MATE」(富士通製)を発表している。多彩な機能を実現しながら10カ月程度の期間で開発できたという(12月8日の記事参照)。
いずれも目的はソフトウェア開発における、コスト削減と開発スピードのアップだ。ユーザーはOSが変わったことを意識せずに利用できることを目指す。まさに水面下で中身が変わっていくわけだ。
進む、ハードウェアの共通化
3G端末では、通信用チップ自体に高度な性能が要求される。国内ではCDMA 1X/WIN用チップはQualcommの独壇場だし、W-CDMA用チップもメジャーベンダーが決まってきた。独自開発を続けてきたNECが、Ericsson Mobile Platform(EMP)およびQualcommのW-CDMAチップを採用すると発表したことも、これを象徴している(11月30日の記事参照)。
W-CDMA陣営では、GSM/GPRS通信方式への対応も必要になりつつある。W-CDMAへの移行が海外で予想以上に遅れているからだ。ドコモは、ルネサス テクノロジおよびテキサス・インスツルメンツ(TI)とW-CDMA/GSM対応チップを共同開発する(7月13日の記事参照)。NECとNECエレクトロニクスもデュアル対応チップの開発を発表した(11月22日の記事参照)。
通信チップと組み合わせて使うアプリケーションプロセッサの分野では、さらに共通化が進みつつある。ドコモのFOMA端末のほとんどは、TIのOMAPプロセッサを搭載しており、この状況が大きく変わることは考えにくい。ソフトウェアを一から開発しなおす必要が出てしまうからだ。
同様に、KDDIの1X/WIN端末はいずれもQualcomm製のMSMチップをCPUとしても利用しており、処理速度面での差別化が難しくなっている。
メインのアプリケーションプロセッサが決まってきたことで、焦点はコンパニオンチップと呼ばれる第3のチップに移りつつある。
ドコモ向けもKDDI向けの端末も、メーカーはサブのアプリCPUや動画処理用チップなどを搭載して性能アップに努めている。FOMA 901i3機種(SH901iC、F901iC、D901i)に搭載された「SH-Mobile」は、KDDI向け端末でも三洋製端末などに搭載されている。東芝製の3Dグラフィックスチップ「T4G」も、KDDIの「W21T」や、ボーダフォンの「V602SH」「V602T」などに搭載され、高度なゲームに使われている。
統一への流れ
これらのほかにも、KDDIが各社端末のユーザーインタフェースの共通化を進めている。既にメニュー内容はほぼ一緒になっているほか、キー配置も酷似してきた。東芝製端末からセンターメニューボタンが消えたのもその影響だ(5月20日の記事参照)。
ボーダフォンも、今後の3G端末において操作性に統一感を持たせることを目指すと話しており(9月22日の記事参照)、もはや各メーカーごとの差別化をキャリアは求めていないことが分かる。
「インタフェースの善し悪しは、端末開発に求めていない」。こう言い切る端末メーカー幹部もいるほどだ。
こうした共通化が進むと、“売れる端末”のあり方も変わっていくだろう。NECと基本の部品やソフトウェアを共有しながら、大きくシェアを伸ばしたパナソニックモバイルの手法が、今後の端末メーカーのあり方の1つを表している。ワンプッシュオープンボタンやカスタムジャケットといった、これまでいわれてきた携帯の本質とは異なる部分で差別化に成功した。
共通化が進むことで、単なる価格競争に向かっていくのか、それとも差別化できる要因を見いだせるのか。メーカーの手腕が問われる。
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