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シャープが「AQUOS」を中高価格帯へシフトする理由 メモリ高騰が直撃するエントリースマホの限界石野純也のMobile Eye(1/2 ページ)

シャープはスマホの販売構成比を中高価格帯へシフトし、2026年度にミドル・ハイエンドを7割にする。背景にはメモリやストレージの高騰があり、部材コストの割合が高いエントリーモデルの収益悪化が関係する。グローバルでも上位2社がシェアを伸ばす予測の中、シャープの戦略転換は新端末の魅力が成否を握りそうだ。

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 AQUOSシリーズを展開するシャープは、6月9日に事業説明会を開催。スマホの性能別構成比を、中高価格帯にシフトしていく方針を明かした。2025年度は「AQUOS wish」シリーズの割合が6割を占め、「AQUOS sense」や「AQUOS R」などは4割にとどまる。この割合を逆転させ、2026年度は7割をAQUOS sense以上の端末にしていく目標を掲げた。

AQUOS wish
廉価モデルとして人気の高いAQUOS wishだが、シャープは中高価格帯へのシフトを宣言しており、構成比を減らしていく方針だ

 シャープが中高価格帯へのシフトを図る背景には、メモリやストレージ価格の高騰がある。同社は親会社の鴻海を通じて部材を調達しており、グローバルのスケールメリットは生かせる立場だが、それでもコストの上昇は避けられなかった。実際、シャープ以外にも中高価格帯へのシフトを模索するメーカーは多く、勢力図に変化が生じる可能性もありそうだ。

「AQUOS」が戦略転換、出荷の7割をミドル・ハイエンドへ──シャープが中高価格帯シフトを急ぐ理由

 「スマホは、ハイエンドやミドルレンジの構成比率を40%から70%に上げて、収益性を改善していきたい」――こう語ったのは、シャープでスマホやPCなどの事業を統括する執行役員Co-COO兼スマートワークプレイスビジネスグループ長の小林繁氏だ。シャープは現在、エントリーモデルのAQUOS wishと、ミドルレンジのAQUOS sense、ハイエンドのAQUOS Rシリーズという3層構成でラインアップを構築している。

シャープ小林繁
シャープの小林氏は、ミドルレンジ以上の構成比を40%から70%に上げる方針を語った

 この中で過半数を占めるのが、エントリーモデルのAQUOS wishシリーズだ。最新モデルは、2025年6月に発売した「AQUOS wish5」。販路によって価格は異なるが、おおむね3万円台半ばで販売されており、シャープのシェアを支えている。もともとAQUOS senseがこの価格帯を担っていたが、世代を経るにつれて徐々に価格が上がっていった結果、その下を担うエントリーモデルとしてAQUOS wishが導入された経緯がある。

スマートフォンAQUOS
スマホは傘下のDynabookと同様、高付加価値化で収益性を向上させていく

 ただ、最近では、他社に押され気味だったのも事実だ。小林氏も「AQUOSについては直近で国内のマーケットシェアが若干低下気味」としつつ、「海外メーカーの販売構成がたぶんに影響している」と話す。実際、調査会社MM総研の「25年度通期 国内携帯電話端末の出荷台数調査」を見ると、シャープ製スマホの出荷台数は前年から32.4%減少し、シェア4位に転落。Googleやサムスン電子の後塵を拝している。

 2024年度は2位、Androidスマホの中ではトップシェアだったシャープだが、ソフトバンクと楽天モバイルに販路を拡大したサムスン電子や、Pixel aシリーズが好調のGoogleに押され気味になっている。小林氏も「いい状況かといえば、いい状況ではない」と率直にその状況を語る。Googleやサムスン電子はミドルレンジ以上のモデルに強いが、ここへの対抗としてハイエンドやミドルレンジを強化する必要があるといえる。

スマートフォンシェア
調査会社MM総研が5月14日に発表した25年度上期の出荷台数調査では、シャープが4位に転落。Android勢では、Googleやサムスン電子に抜かれた

 特に、中価格帯で購入しやすい「AQUOS senseは顧客満足度が高いので、きっちり維持をしていきたい」(同)という。同社がミドルレンジ以上に注力する理由は、もう1つある。それがメモリやストレージの高騰だ。AIサーバなどの需要が急増したことを受け、メモリなどが品薄になり、調達価格が跳ね上がっている。調達、開発から市場投入までにはタイムラグがあるが、いよいよその影響が出始めているというわけだ。

 小林氏も「円安の定着やメモリ、SSDの高騰で市場環境は厳しくなっている」と話す。この影響が直撃しやすいのが、エントリーモデルを中心とした価格の安い端末だ。シャープがミドルレンジ以上へのシフトを図る背景には、価格が上がったエントリーモデルがさらに売れづらくなる見通しもある。

エントリーモデルほど重くのしかかるメモリやストレージのコスト

 では、なぜエントリーモデルの方が、メモリやストレージの価格高騰の影響を受けやすいのか。スマホのコスト構造を考えると、その答えが分かる。ハイエンド、ミッドレンジ、エントリーのカテゴリーを分けるのは、ハードウェアだと主にチップセットやカメラの要素が大きい。Snapdragon 8シリーズだからハイエンド、6シリーズだからエントリーといった具合で、この部分は性能の高低がコストに直結する。

 一方で、メモリやストレージについては、チップセットやカメラほどの差はなく、端末のレンジとは直結しない。3万円台のエントリーモデルにも、20万円を超えるハイエンドモデルにも、それぞれストレージが256GBの端末があるのが、その証拠だ。もちろん、転送速度などの違いがあるため、厳密には同じというわけではないものの、チップセットやカメラと比べると、その差は小さい。

Galaxy S26
サムスン電子のGalaxy S26シリーズはハイエンドモデルだが、ストレージの下限は256GB。エントリーモデルで同容量の端末もあり、ストレージは端末のレンジと連動していない

 7分の1程度の価格で販売しなければならないエントリーモデルは、コストの中に占めるメモリやストレージの割合が高い。ここが高騰してしまうと、もともと薄利多売だったエントリーモデルからは、利益が出なくなってしまう。売れば売るほど赤字が拡大する構造になるリスクもあるというわけだ。

 実際、FCNTがかつて経営破綻したのは、部材費の高騰や円安が急速に進み、「arrow We」が逆ザヤになってしまったことで資金繰りが悪化したことに原因がある。とはいえ、エントリーモデルは価格が安いゆえに受け入られている側面があるため、簡単には値上げしづらい。メーカーにとっては、利益率の高いミッドレンジやハイエンドにシフトしていく必要があるというわけだ。

 メモリ価格の高騰が直撃しているのは、シャープだけではない。そのため、同様の戦略を取るメーカーは増えている。Xiaomiが6月に「Xiaomi 17T」や「Xiaomi 17T Pro」を発表した際にも、メモリ価格の高騰が値上げの理由に挙げられていた。2機種の中では、よりミッドレンジモデルに近いXiaomi 17Tの値上げ幅が大きく、メモリ高騰のコストを価格で吸収できなかったことがうかがえた。

Xiaomi 17T
Xiaomi 17Tシリーズはどちらも前モデルから値上がりしているが、ミッドレンジに近いXiaomi 17T(写真左)の方が、値上げ幅が大きかった

 FCNTが6月25日に発売する「arrows We3」も、2年前に投入した「arrows We2」と比べ、価格が上がっている。より“素の価格”が出やすいオープンマーケット版で比較すると、arrows We2が約3万7000円だったのに対し、arrows We3は約4万2000円と、5000円程度価格が上がった。メモリも、当初は4GBから6GBに増量したかったとのことだが、市場環境を受け、断念した経緯があるという。

arrows We3
ディスプレイを刷新、耐久性をさらに向上させるなどしたarrows We3。一方で、オープンマーケット版の価格は先代よりも高くなっている

 もちろん、ディスプレイが特注でコンパクトサイズを維持しながら液晶で120Hz出せるようになり、レスポンスが改善しているため、こうした点でコストが上がっている側面もあるが、レノボグループの調達力をもっても、価格の維持はできなかったというわけだ。エントリーモデルに強いメーカーには、特に難しいかじ取りが求められるようになったといえる。

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