3Gの成熟で進む、携帯のセグメント化と多様化:2005年の携帯業界を振り返る(1)(3/5 ページ)
通信ジャーナリストの神尾寿氏とITmedia+Dモバイルの斎藤編集長が、2005年の携帯電話業界を振り返る年末対談企画。第1回のテーマは「端末」。キーワードはセグメント化、デザイン、海外モデルだ。
海外メーカー端末の本格参入
ITmedia デザインの部分では海外モデルも関わってくると思うんですが、NokiaやMotorolaといったところが今年、本格的に端末を投入してきました。
斎藤 3Gの成熟と関連するところかもしれないし、また、セグメント化にも関わってくるんですが、もっと幅広く、色々な種類の携帯電話があっていい時期にきていると思うんです。必須のサービスというものはなくなってきていますよね。例えば、「着うたフルが使えないから、これはヤダ」みたいな時代ではないし、カメラにしても「ない方がいい」という人もいるくらいで、最低限のサービスというのは、国内端末でも海外端末でも同じように、ほぼ押さえられてきていると思うんです。
神尾 私は今年の前半くらいから「もうサービスの時代は終わったね」とよく話しているんです。
斎藤 ほお。
神尾 つまり、サービスがハードウェアを牽引していく時代は終わったと思っているんです。iモードが始まったときはサービスがユーザーを引っ張っていて、そのサービスを使いたいがために、みんな端末を買い替え、買い替え、買い替えしてきたのだけど、今は新たに使いたいサービスはないんですよ、もう十分で。「このサービスを使いたいから、この端末を買う」のではなくて、「この端末が欲しいから買う」、なんですよ。ハードウェアの時代に戻って、音声サービスが成熟したときと近い状態になったと思うんです。
サービスを利用したいから、とにかく対応した端末を選ぶのではなく、ユーザーはハードウェアをしっかり見る余裕が出てきているのだと思います。だから海外メーカーもありだと思っていますよ。海外メーカーの中では、NokiaやMotorolaがきっちり彼ら“らしさ”を打ち立てています。特にNokiaの製品は確かにどんな形をしていてもNokiaなんですよ。あれはスゴイなと思いますよ、一見してNokia端末だとわかりますから。
斎藤 逆の面で驚いたのはパンテックです。auのパンテック端末」「A1405PTは、NokiaやMotorolaみたいな「ウチはNokiaなんだ、ウチはMotorolaなんだ」というような作り方・やり方をしなかったじゃないですか。謙虚というか……
神尾 それはどうかとも思いますよ。「ウチはがんばりますよ!」というような優等生的なノリだと、インポートメーカーは失敗する可能性が高いですから。お利口さんな海外メーカーって、どの分野を見ていても日本市場に入ると失敗するんです。最近のアメリカ車や韓国車だってそうじゃないですか。日本車のように品質を良くしてがんばっていますが、販売の現場では「だったら日本車選ぶよ」という話になっている。
斎藤 ここはクルマと話が違うかもしれませんが、こと携帯電話の技術力は、韓国メーカーの方が日本メーカーよりも上の部分があります。もちろん分野にもよりますが、携帯電話を作らせたら、ボリュームでもコスト面でも韓国メーカーの方が上だな、と感じることが多いです。
神尾 私は技術力で日本メーカーが負けているとは思いませんが、確かに生産効率やコスト削減の点まで含めたグローバル戦略、メーカービジネスの面では彼らの方が上ですね。
斎藤 それと、もったいないなと思うのは、ソニーのジョグダイヤル。確かにあれがないと売れないか、と言われたら、そんなことはないと思うんですが、すごく強いアイコンですごく強いアイデンティティだったので。あれを捨てて幅広いユーザーを獲得した結果、失ったものも大きいと僕は思うんです。
神尾 ジョグダイヤルというものに、メリットもあればデメリットもあるんです。善し悪しはどんなデバイスにもあるんだから、それは当たり前なんです。でも、だったら、ソニーは「ジョグダイヤルが世界一素晴らしいんだ」ということを言い続けなくてはならなかったんですよ。その場に踏みとどまって、進歩させていく。そうやって研鑽を積んでいけば、ひとつのアイデンティティになっていたはずなのに。
斎藤 もったいない。
神尾 もったいないですね。
斎藤 これからは他社と同じ土俵で勝負していかなくてはならないですからね。それはそれでビジネスの選択肢として当然あると思うんですが、ユーザーとしてはとても残念だなと思います。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.