目指したのは、多機能で薄い“手帳のような”携帯──「W44T」:開発者に聞く「W44T」(デザイン編)(2/2 ページ)
多機能ながら21ミリという薄さを実現した東芝製の「W44T」。スマートにするためのさまざまな工夫を凝らしたこの携帯は、au design projectを率いた小牟田氏の評価も高かったという。
使いやすさとルックスの調和──ダイヤルキー面
ダイヤルキー面は、取れる幅をいっぱいに使い、極力大きなフラットキーを配置した。本体の厚みを抑えるために人気のドームキーは採用しなかったが、押しやすさにはこだわったという。
キーとパネル面に微妙な凹凸があるので、キーとキーの境目がはっきり分かるようになっている。また、左右のソフトキーとメール、EZボタンが一体化されているが、これらを区別しやすくするために、数十ミクロンの凹凸を施した。これは「石庭をイメージしている」のだという。確かに触ると、凹凸の向きの違いでキーの境目を把握できる。また光の反射が異なっているので、目で見ても分かりやすい。
決定キーも一見するとほぼ平面に見えるが、実際は端の方がやや盛り上がり、真ん中がくぼんだ微妙なすり鉢状になっている。これも、かなりマニアックにこだわったところだ。
「コンマ1ミリ、2ミリの違いは、触ってもらうとよく分かる。携帯電話は道具なので、この辺をなおざりにすると非常に使いにくいものになってしまう。デザイナーとしては、ルックスと操作性の兼ね合いで、一番気を付けている部分」(宮路氏)
ダイヤルキーには、新たに作成したオリジナルのフォントを採用。文字の見やすさを重視したており、数字よりひらがなやアルファベットの見え方に配慮したという。
「年輩の方でも数字は見えているし、場所もほとんど分かっている。問題は細かい文字だということで、今回はどちらかというと、ひらがなとアルファベットを大きくしている」(宮路氏)
ただし、いわゆる“もしもしフォン(通話に特化したシンプルな携帯)”的には見せたくなかったことからフォントを新たに起こした。「誰にとっても見やすく、それをいかにきれいに仕上げるかが重要」と宮路氏は説明する。
技術とデザインのチャレンジが生んだ「東芝としてのデザイン携帯」
ボディカラーのバリエーションは「王道の4色」(宮路氏)を選んだ。ブラック、シルバー、レッドに「夏に向けて涼しげなブルー」を加え、グロス仕上げとマット仕上げを2色ずつ用意。質感もユーザーが好みのものを選べるようにした。
「デザイナーとして思い入れが強いのはシルバー。白っぽい銀色を出すのが難しかった。最近のモデルは白が多いので、逆に新鮮に受け止めてもらえるのでは、と期待している」(宮路氏)
シンプルなデザインの携帯を作ることの難しさを宮路氏は、こんな言葉で表現する。「スッキリしたものを作るのは、とても苦しい。複雑な形のものは、若干バランスが変わっても分からないことがある。シンプルでピュアな形状のものをきちんとバランス良くそろえようとすると、ごまかしがきかない」
そして、デザイナーと機構設計が密に連携をとりながら開発を進めたからこそ、生まれたデザインであることを強調した。「デザイナーが苦労したというよりも、エンジニアが苦労したモデル。“苦労が分からないように仕上げる”ことを最終目標に、技術者とデザイナーが一緒にチャレンジを重ねた」
こうして生まれたW44Tは、au design projectを率いていた小牟田啓博氏の評価も高かったという。東芝で商品企画を担当する山崎徹氏は、「今は退社されてしまったが(4月26日の記事参照)、小牟田さんには『東芝にとってのデザインモデルですね』と評価していただいた」と胸を張る。あとはユーザーにどう評価されるかを待つばかりだ。
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