PLCは携帯が苦手:CEATEC JAPAN 2006(2/2 ページ)
CEATECでは、NECや住友電気工業が参入し注目を浴びている「PLC」に関する展示も多く見られる。実用化に向けて動きは加速しているが、意外な“弱点”も浮上してきたようだ。
各社の話を聞く限り、一般向け製品が広く普及するのはしばらく先になりそうな雰囲気だ。他の家庭用ネットワーク機器に比べて高額な製品価格(BL-PA100は北米で2台1組199ドル)や無線LANとのすみ分け、メーカー間の相互接続性といった理由もあるが、それ以上に高いハードルとなりそうなのが、他の家電機器との干渉問題だ。
PLCはケーブル内に2~30MHzという高周波を通すが、同じ場所のコンセントに高周波へ影響を与えるものがささっていたり、モーターを利用する機械(ドライヤーや電気ヒゲそりなど)が至近距離にあると通信速度の低下や通信そのものが瞬間的にでも停止してしまうことが考えられる。
とある技術者が「ごくごく最近判明したが、一番心配している」と懸念するのは携帯電話の充電器だ。同じ場所のコンセントに携帯電話の充電器とPLCモデムを差し込んでいると、充電器に内蔵されている整流回路の品質によっては、PLCの通信にかなり大きな影響が出る可能性があるという。
ドライヤーやヒゲそりをPLCモデムのそばで利用するシーンは想定しにくいし、そう長時間にわたって利用することはない。しかし、携帯電話の充電器はデスクサイドやリビングなど、PLCモデムの利用が想定される場所と近い場所に置かれることが多く、その利用時間(通電している時間)も長時間に及ぶことが一般的だ(帰宅してから翌朝まで充電台にセットしているというひとも多いはず)。
前述の技術者は「マニュアルに記載することで注意を喚起したいが、PLCにはまだまだデリケートな部分が多い。起こりうるあらゆる事態を想定し、簡便な対処法を用意する必要のある一般向け販売を投入するにはまだ時間が必要だ」と、運用面を考えるとまずは法人向けに製品を投入する方が無難との見解を示す。
コンセントに差し込むだけで容易に家庭内高速ネットワークを構築可能なPLCだが、広範な普及にはまだまだ時間がかかりそうだ。
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