多彩なメディアを活用する機能を集約──アクオスケータイ「W51SH」開発の舞台裏(2/2 ページ)
4機種目のアクオスケータイとして登場したau向け端末「W51SH」。今やおなじみとなったサイクロイドスタイルのボディに込められた、au端末ならではの機能やこだわりを聞いた。
ワンセグの映像をW51SH以外でも楽しめる──テレビ出力ケーブルを標準添付
テレビ出力ケーブルが標準添付されており、手軽にワンセグの映像や音声が出力できることもW51SHの魅力の1つだ。W51SHのテレビ出力は、付属のケーブルを端子に接続して、[発話]キーを押すだけで利用できる。
「ワンセグのテレビ出力は、ARIB(電波産業会)の規格に準拠した方式で行う必要があり、いろいろと苦労した部分です。ただ、接続はRCAケーブルだけでできるため、手軽に利用していただけると思います。ワンセグに対応したカーナビを持っている方はまだ少ないと思うので、ワンセグ非対応のカーナビの画面に映像と音声を出力したりするのに便利です。もちろん録画しておいた番組を家のテレビで視聴したりといった利用シーンも想定しています」(小林氏)
ちなみに、ワンセグの画面をメインディスプレイと外部出力の両方に表示することはできないため、テレビ出力ケーブルを接続すると、メインディスプレイには操作ガイドを表示する。またテレビ出力中は、端末に表示される画面がそのまま映し出されるわけではないため、チャンネルを変えると右肩にチャンネル番号を表示するようにしているほか、番組名なども出力できるようにしてある。「ケーブルテレビのセットトップボックスのような感覚で利用できるよう、細かな部分ですがこだわって作り込みました」(小林氏)
なお自動車メーカー純正のカーナビなど、RCA入力を持たない機器などでもこのテレビ出力機能が利用できるよう、KDDIはサードパーティ製のオプションとして、VHFトランスミッタも用意している。小林氏は「シャープ製ではないので詳細は分かりませんが」と断った上で、「(RCAケーブルで)接続できるといっても、ダッシュボードの中にあるカーナビやカーステレオとケーブルを接続する作業は誰にでもできるものではありません。また、入力用の端子を持たない機器もあります。その点、VHFトランスミッタなら既存のテレビ受信機能が利用できるので、重宝するのではないでしょうか」と話した。
また細かな点だが、au向けのシャープ端末ならではの「ショートカット」機能に、ワンセグのチャンネルが割り当てられるようになった点も見逃せない。例えば特定のチャンネルを特定のキーに割り当てておくと、待受画面でそのキーを押すだけでau Media Tunerが起動し、目的のチャンネルが表示される。
新しいメディア、デジタルラジオにも対応
デジタルラジオという名称を聞くと、漠然とテレビのデジタル放送のようなイメージで、“ラジオのデジタル版”と考えている読者も多いかもしれないが、デジタルラジオはアナログラジオと同じ放送をデジタル信号で流しているだけのメディアではない。一部の放送では映像も流されており、ワンセグに近い感覚で視聴できる。
またau端末では、着うたフルデータをデジタルラジオの放送波を利用して受信する機能なども備えており、デジタルラジオで流れている曲のライセンスだけ購入すれば、わざわざダウンロードすることなく入手できる機能もある。このまったく新しいメディアであるデジタルラジオにも、W51SHはしっかり対応している。
「デジタルラジオへの対応も、W51SHの開発段階で苦心したことの1つです。まだ実用化試験放送が始まる前だった上に、初のデジタルラジオ対応機『W44S』も発売前で、リファレンスとなるものもありません。当時はARIBの仕様書とにらめっこをしながら、パケットを解析したりして検証作業を行っていました」(小林氏)
デジタルラジオの受信には、ワンセグ用とはまた別にアンテナが必要になるが、W51SHでは平型イヤフォンコネクタに接続する変換ケーブルをアンテナとして利用する。付属のケーブルは“変換ケーブル”と呼ぶにはかなり長いものだが、この中に同軸ケーブルが入っている。「最初の試作品ではかなり太いケーブルでしたが、なんとか細くできました」と小林氏が話すように、長いという点を除けば普通の変換ケーブルとほとんど差は感じない。見た目はスマートとは言えないものの、おかげで感度は良好で、屋内でもまったく問題なく視聴できる。
「実は音にもすごくこだわっています」
ワンセグを含めた各種メディア機能に目がいきがちなW51SHだが、小林氏は「ワンセグに特化したように見えるサイクロイドスタイルの端末だからこそ、声を大にして言いたいのですが、実は音にもものすごくこだわっています」と話す。
ソニー製の高音質イヤフォンやDBEXなど、au端末に共通の高音質化機能に加えて、イコライザやBASS設定、サラウンド、空間エフェクト、カラオケなどのサウンド効果を搭載している。さらに、これらを組み合わせた「おすすめ効果設定」など、W51SHならではの機能も備える。小林氏はDBEXにサラウンド効果などを組み合わせた「Synergetic DBEX」がお気に入りだと話してくれた。
au Music Playerにも、シャープ端末らしく細かなショートカットが割り当てられている。例えばau Music Playerで楽曲を再生中に[0]キーを押すと、すぐにBGM再生に移行する「0キーBGM」機能などがユニークだ。終話キーを押して「BGM再生」を選択する手間なしに、瞬時にBGM再生に移行できるのはなかなか便利だ。また[7]キーにはカラオケモードが割り当てられており、いつでもどこでもカラオケが楽しめるという。
また小林氏は、W51SHの開発陣が音にこだわった理由の1つに「音楽好きが多かった」という裏話も披露してくれた。「自分を含め、バンドマンが同じ企画の部署に何人かいるんです。またエンジニアの中には、もともとオーディオ機器に携わっていた者もいて、スタッフの間でああでもない、こうでもないと音質の調整を行いました」(小林氏)
ここまで紹介してきた機能のほかにも、ディスプレイを横向きにしてLISMOビデオクリップの映像を大きなワイド画面で楽しめるなど、細かな機能は枚挙に暇がない。いずれもさまざまな“メディア”をW51SHで最大限楽しむための工夫であり、開発陣が知恵を絞った部分だ。
「W51SHを開発するにあたり、単に“ワンセグが載りました”というだけでは終わらせたくないと考えました。ですから、あらゆる機能をマルチメディアという部分に集約しています。もちろん画質、音質、そして使い勝手には徹底的にこだわり、本当にユーザーに使ってもらおうと思ったときに、足りない部分はどんなところか考えて開発しました。全体のパフォーマンスも、W41SHからさらにブラッシュアップしています。ぜひ多くの方に手に取っていただきたいですね」(小林氏)
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