EV-DO Rev.Aを3倍高速化──EV-DO Rev.B対応「MSM7850」デモ:BREW 2007 Conference
米QUALCOMMは現地時間の6月20日、EV-DO Rev.Aの高速化規格「EV-DO Rev.B」と、さらにその先の次世代通信技術「UMB」の技術デモを実施。Rev.Bのデモでは下り最大8.7Mbps/上り最大4.3Mbpsでの通信を披露した。
米QUALCOMMは6月20日(現地時間)、日本国内ではKDDIが全国展開を進めている高速通信規格「CDMA2000 1x EV-DO Rev.A」をベースに、最新技術を適用して通信速度を向上させた「EV-DO Rev.B」の技術デモを行った。
EV-DO Rev.Aを数倍高速化するEV-DO Rev.B
EV-DO Rev.Aは、KDDIが「CDMA 1X WIN」という名称でサービスを開始したCDMA2000 1x EV-DO Rev.0の高速版に位置づけられる通信規格だ。理論値では下り最大3.1Mbps、上り最大1.8Mbpsでの通信が可能な技術で、EV-DO Rev.0(下り最大2.4Mbps/上り最大144kbps)と比べて大幅に上り(アップロード)の速度が向上しているのが特徴だ。
この技術は2006年12月からWINへの導入も始まっており、対応端末として東芝製の「W47T」および「DRAPE」が発売されている。EV-DO Rev.A導入当初のスケジュールでは、2007年3月までに全国主要都市の70%程度をカバーし、3年ほどかけて全国津々浦々をエリア化する計画となっており、現在まさに対応エリアが広がっている状況だ。
今回QUALCOMMがデモを実施したEV-DO Rev.Bは、このEV-DO Rev.Aをさらに高速化する。高速化が可能な理由は、Rev.A以前は1波しか利用していなかった電波(キャリア)を複数束ねて利用する点にある。このマルチキャリア方式を採用するという特徴から、以前は1x EV-DOに対して「Nx EV-DO」などとも呼ばれていた。
1波あたり1.25MHzの帯域を利用するEV-DO Rev.Aに対し、EV-DO Rev.Bでは最大20MHz幅(15波)を用いることで、下り最大73.5Mbps/上り最大27Mbps(変調方式に64QAMを用い、1波あたり最大4.9Mbpsとして計算した場合)の通信を可能にする。今回公開されたデモでは、3波を用いる約5MHz(3.75MHz+ガードバンド)幅で下り最大9.3Mbps/上り最大5.2Mbpsでの通信を実現していた。
3波を用いることで、通信速度が3倍速くなるだけでなく、トラフィックをキャリアごとに分散させてWebブラウザなどでのレスポンスタイムを最大半分ほどに下げられるというメリットもあるという。ちなみにこの3波を利用する方式は、2007年第4四半期にサンプル出荷を開始する予定のEV-DO Rev.B対応チップセット「MSM7850」でサポートされる。もちろんEV-DO Rev.Aとの互換性は確保されており、1波だけ、あるいは2波を使った通信もサポートしている。利用するキャリアの数は、状況に応じてダイナミックに変更可能だ。
ちなみにNTTドコモやソフトバンクモバイル、イー・モバイルなどが導入を進めているW-CDMAの高速化規格「HSDPA」は、5MHz幅で下り最大3.6Mbps/上り最大384kbpsという通信速度を実現している。今後は3GPP Release.5のカテゴリー8に対応することで、下り最大7.2Mbpsへの高速化が計画されているが、それと比較してもEV-DO Rev.Bのデータ転送速度は十分な競争力を持つ。
固定環境と移動環境でデモを実施
デモでは、端末が動かない固定環境で、HD動画再生やFTPでのファイルアップロードを行い、そのスループットを確認できた。HD動画の再生デモでは、インターネット上のストリーミング配信データを約8.7Mbps程度の速度でダウンロードし、数秒でバッファリングを完了。有線ネットワークを利用しているときに近い感覚での視聴が可能だった。FTPでのファイル転送は最大4.35Mbpsを記録した。
また時速約50キロ前後で移動する車に乗っての体験デモでは、3波をサポートする基地局と1波しかサポートしていない基地局の間をハンドオーバーしながら約500kbpsのHD動画再生やFTPがスムーズに行える模様が公開された。基地局が1波しかサポートしていない場合は、最大データ転送速度がEV-DO Rev.Aと同じ、下り3.1Mbps/上り1.8Mbpsまで下がるが、QoSによってHD動画の再生は最優先で行われ、FTPなどの優先度の低いデータ転送は制限される様子なども確認できた。
なお、端末側には専用のチップセットが必要だが、基地局側は「CSM6800」チップセットを採用していれば、ソフトウェアのアップグレードだけで対応できる。すでにアップグレード用のソフトウェアは2007年3月にリリースされており、多くのキャリアでは、導入決定からだいたい6~9カ月程度で入れ替えが可能だという。
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