“スリムなau端末”を担う京セラのベストスリムゾーン戦術:「W44K II」「A5526K」開発陣インタビュー(2/2 ページ)
人気の薄型端末「W44K」のマイナーチェンジモデル「W44K II」と、そのコンセプトを継承した1X端末の「A5526K」。薄さと使いやすさを併せ持ち、幅広い層に支持がある両端末について、開発背景を担当者に聞いた。
「ディスプレイをもっと大きく、カメラも2メガピクセルにしてもいいという声はありました。しかしコストやサイズというトレードオフが必ず発生しますし、ターゲットユーザーが期待していないものに過剰投資しても意味がありません。1Xユーザーにおいては、このスペックでも決して遜色ないだろうと考えました」(長島氏)
強化ガラスや有機ELなど、W44K/W44K IIで使われているものと同じ素材を用い、デザインは意図的に似せている部分がある。1X端末だからといって、簡単ケータイ系のデザインにするのではなく、見た目は格好良く、なのに使いやすいという意外性を狙った。
サブディスプレイの色は、カラーバリエーションによって、やや青っぽかったり茶色っぽかったりと変えている。その上にあるインフォメーションキーはW44K/W44K IIに引き続いて採用。「フロントにあるので、右利き左利きを問わず押しやすいと好評です」(長島氏)
薄さと使いやすさが釣り合う「ベストスリムゾーン」
厚さ15.3ミリのW44K/W44K IIはWINの折りたたみモデルで最薄、A5526Kは厚さ14.7ミリと1X端末の中で最薄だ。また、京セラが開発した「MEDIA SKIN」は厚さ13.1ミリと現行au音声端末の中で最薄となっている。こうしてみると、auの薄型モデルは京セラが一手に引き受けているようにみえるが、“au端末はスリム”という印象は薄い。au端末は薄型化が難しいのだろうか。
「いや、そんなことはないと思います。ただ、W44K/W44K IIにしろA5526Kにしろ、薄さだけを狙ったわけではなくて、使いやすさと薄さの適度なバランスをコンセプトにしています。最薄を狙ったわけではありません」(長島氏)
例えば、ダイヤルキーをシートキーにすればもっと薄くできるという。しかし、薄さだけを追求して操作性を犠牲にしてはいけないという思いから、薄さと使いやすさに関する事前調査を行った。
スリムな折り畳みモデルは開けにくくなる傾向がある。開けやすさを確保するために、上下ボディの重なる部分に、指が入れやすいように凹みを付けている。折り畳んだ状態で横から見ると、先端部がのこぎり型の形状になっているのが分かる。これが開けやすさのポイントとなる
「シートキーにするかフレームレスキーにするかで調査をすると、フレームレスキーの方が操作しやすいという評価が高かった。確かにシートキーの方が薄くできますが、それよりも実用性を取るべきと判断しました。また、薄さと操作性・実用性のバランスがどこにあるのかを調査するため、いくつかのモックアップを作って、どれがいいかをたずねてみました。すると、一番満足度が高いのは14~16ミリなんです。それよりも薄いと“開けにくそう”とか“折れそうで怖い”という意見が多くなります」(長島氏)
この14~16ミリの間隔が、京セラのいう「ベストスリムゾーン」だ。W44K/W44K IIやA5526Kの厚さはこの14~16ミリの間に入っている。ただ、ユーザーの感覚は、そのときの市場や流行に左右されるもの。1年後も3年後も変わらないという保証はどこにもない。
過去、携帯電話の軽さを競い合った時代があった。しかし、0.1グラム、0.01グラムの競争に入ると、ユーザーは興ざめしたように軽量化競争への興味を失っていった。そして現在、重さの価値基準は、昔ほど高くはない。薄さという基準が、重さと同じ轍を踏まないとはいえない。ユーザーが携帯端末に求める要素とはなにか、どういった基準で機種選びをするのか、あらゆる面でその答えを探っているという。
「“薄い”ということを支持する人たちが、それなりのボリュームではあり続けると思っています。しかし、もっと別の価値基準が出てこないとも限らない。薄さだけにこだわらず、さまざまな面で継続的なマーケティングを行っていく必要があると考えています」(長島氏)
FeliCaの標準搭載はいつ?
W44K IIもA5526Kにも、残念なからFeliCaチップが搭載されていない。おサイフケータイの標準対応を望む声は急激に高まってきているが、スリムケータイには搭載しないのだろうか。
京セラでは、いずれ薄型のシンプルなモデルにも、おサイフケータイ機能を搭載する時期が来ると予想している。しかし、具体的にどのタイミングになるかは未定だという。またFeliCaを利用する電子マネーは、基本的にカードタイプもあるため“カードで十分”という層もいる。シンプル端末を選ぶコンサバティブなユーザーが、いつおサイフケータイを必要とするのか、しっかり見極める必要があるという。
とはいえ1X端末はともかく、WIN端末にないと物足りなさを感じるのは事実。長島氏は、「FeliCaは通話しながらでも使えますが、先日、改札の前で話しながら立ち止まっていて、電話を切ってからモバイルSuicaで通過した人を見ました(笑)。おサイフケータイの便利さがまだ伝わっていないと感じましたね。ハイエンド、ミドル、ローエンドと、すべての端末に、どのタイミングでFeliCaチップを標準搭載するのか、という見極めは非常に頭が痛い課題です」と話し、その判断の難しさを垣間見せた。
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