「“高いイメージ”払拭のチャンス」──新販売方式に込めるドコモの販売戦略:NTTドコモ熊谷営業本部長インタビュー
ドコモは11月26日、新機種「905iシリーズ」とともに、“バリューコース”と“ベーシックコース”の2種類から選ぶ新たな販売方式を開始した。この施策でユーザーの心理はどう変化するのか、同社にどのような意図があるのか。NTTドコモ営業本部長の熊谷文也氏に話を聞いた。
11月26日から順次する新機種「905iシリーズ」にあわせて、一部販売奨励金を廃止した新たな携帯販売方式と料金プランを導入したNTTドコモ。
新たな携帯販売方式は、ユーザーが端末購入代金を全額負担(ただし、割賦販売も開始)するかわりに基本使用料を安くする“バリューコース”と、2年の継続利用を条件に販売価格を1万5750円割り引く“ベーシックコース”のどちらかをユーザーが選択するもの。そのうち同社はバリューコースを主軸に据える方向性を打ち出している。
このバリューコースは、番号ポータビリティにおける転出が大きく上回り、純増数もKDDIとソフトバンクモバイルに対して大きな差を付けられているドコモの追い風となるのか。同社の今後の販売戦略について、NTTドコモ取締役常務執行役員 営業本部長の熊谷文也氏に話を聞いた。
割賦販売の“バリューコース”で、「ドコモは高い」を払拭したい
ITmedia 2年の継続利用を前提とした「ファミ割MAX50」「ひとりでも割50」に加え、割賦販売が適用されるという点で新販売方式の「バリューコース」も長期契約を促す施策との見方ができます。これはドコモが守りに入ったということなのでしょうか。
熊谷氏 ドコモに限らず、市場が成熟し、業界全体として新規顧客の獲得が難しくなってきているということが前提としてあります。
新規顧客の獲得に目を向けることももちろん必要ですが、約5300万人のドコモのお客様を大切にしたい──。そこに重点を置くというのがドコモが打ち出した方針です。既存ユーザーの満足度を高め、長くおつきあいいただけるキャリアを目指すことが、結果として新規顧客の層を広げることにもつながると考えています。そのため、“守る”つもりはありません。
ITmedia 「長くつきあえるキャリア」を目指すための施策として、具体的にはどのような取り組みを予定されているのでしょうか。“ファミ割MAX50”や“ひとりでも割50”といった、いきなり安くなるプランの導入で逆に長期契約者のメリットが少なくなったという声もあります。
熊谷氏 そういったお客様の声は認識しておりますし、販売店からもあがってきています。長期契約ユーザーに対してどのようなメリットを提供できるかということは、ポイント付与制度の見直しなども含めて今最優先で取り組んでいる課題の1つです(編注:インタビュー後の11月22日、同社は長期契約者向けの優遇処置として「ドコモプレミアクラブ」のポイント制度見直しを発表。2008年4月に開始する)。
さらに全体として“いかに顧客満足度を高めていくか”について、料金やエリア、サービス、端末をそれぞれにブラッシュアップするという正攻法でやっていく。このうち料金については、ファミ割MAX50やひとりでも割50、さらにバリューコースの導入で、かなりブラッシュアップされたと考えています。
ITmedia 例えば“バリューコース”を選択すると、確かに月額基本料金が840円から1680円ほど安くなりますが、今までのような端末価格の割り引きがない分、購入代金の負担総額は増えます。この点はユーザーにどう受け止められると思いますか。
熊谷氏 バリューコースは、購入時に分割払いを選択できるのが特徴の1つです。(新規契約や12カ月以上同一端末を利用したユーザーが機種変更する場合の頭金/持ち帰り金額を0円とする販売方法などで)結果として初期費用の負担は従来よりも少なくなり、機種変更における金銭面のハードルも下がると思います。さらに“ファミ割MAX50”や“ひとりでも割50”と組み合わせていただくことで、“ドコモの端末は高い・ドコモの料金は高い”といったイメージも払拭できるのではないかと期待しています。
販売店の店頭でもこのことをきちんとご説明できるように、販売代理店向けの研修も早くから取り組んできましたし、ドコモショップスタッフ応対コンテストなどでその手応えも直に感じることができました。どのように評価されるかはこれからですが、少なくとも、料金面では評価がプラスに転じることはあっても、悪くなることはないと思います。
ITmedia 料金面以外で、既存ユーザーの満足度を高めるためにどのような施策を考えておりますか。
熊谷氏 先ほども申しあげた通り、料金とエリア、サービス、端末をそれぞれにブラッシュアップして、総合力で満足度を高めていくしかないと考えています。
端末でいえば、「905iシリーズ」は機能が充実しており完成度が高いハイエンド、2008年1月以降に発売する「705iシリーズ」も、大変バラエティ豊かなラインアップになっています。これら端末で、十分満足していただけるものと自信がありますが、今後ともさらにお客様がどのような機能を必要とされているのかというニーズを見極め、端末のバラエティを揃えていく必要があります。
現在もコールセンターや販売店からお客様のニーズを組み上げ、それをサービスや端末の開発にフィードバックする体制を整えていますが、今後とも、さらにどういう層のお客様がどういうニーズを持っているのか、それをきちんとセグメントして応えていけるよう、強化していきたいと思っています。
ITmedia 顧客のニーズを組み上げるために、コールセンターやドコモショップなどの窓口が今後さらに重要な役割を担うことになるということでしょうか。
熊谷氏 そう考えています。特にドコモショップは、今後ますます重要なチャネルになってくるでしょうね。
ニーズを組み上げることもそうですが、約5300万人のお客様ひとりひとりの満足度を高めるためには、きめ細やかなホスピタリティを提供できるチャネルの充実が欠かせません。料金、エリア、端末、サービスをぞれぞれブラッシュアップしていくことに加えて、さらにきめ細やかなホスピタリティを提供できる環境を整えていくことが、顧客満足度を高め、結果としてドコモの集客力を高めることになると考えています。
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