2.5GHz帯の割り当てで落選するとは夢にも思ってない──ソフトバンクモバイル 松本副社長:石川温が聞く(2/2 ページ)
ソフトバンクとイー・アクセスが3分の1ずつを出資し、「MVNO中心主義」を掲げるオープンワイヤレスネットワーク。ソフトバンクモバイルの松本徹三副社長は、2.5GHz帯の免許割り当てに絶対の自信を持っているという。
「KDDI有利」の報道に異議あり
石川 一部では「KDDIのモバイルWiMAX技術は他社より優れているから当選確実」という報道もありました。
松本氏 日本ではNTTという通信事業者が技術開発をしています。これは世界に例のないことです。AT&Tの場合、ルーセントをわざわざ別会社として切り離して、AT&Tはキャリアをやり、ルーセントは技術を開発して売っています。
つまり、技術というのはメーカーやチップベンダーが開発するものであり、そうして開発された技術を世界中に売っていくのが基本です。キャリアが自分のために技術を開発して自分の持つ市場で売っても規模がない。本来キャリアというのは、あらゆる技術を比較検討して、ユーザーにより良いサービスを提供するのが使命です。
ソフトバンクは1.7GHz帯の周波数を取得する前、2003年ぐらいから、TDD方式の実験をしてきました。また2.5GHz帯は、申請時の技術的要件としてモバイルWiMAX、IEEE802.20、iBurst、次世代PHSという4つの技術を認定してています。ですから我々はさまざまな可能性を検討し、モバイルWiMAXで申請することに決めました。
モバイルWiMAXはすでに世界の多くの国で広まりつつあります。韓国、米国、台湾でもコミットしています。一方IEEE802.20は、これからどれだけ広がるかは不透明です。我々がWiMAXを選んだのは、技術の優劣という点だけではありません。
KDDIのように、何も比較もしないで、モバイルWiMAXにコミットするのは、キャリアの技術部門としてあり得ないことです。モバイルWiMAXはまだ完成した技術ではありません。早くから開発していたら、技術力があるのというのはおかしいのではないでしょうか。
石川 ワイヤレスブロードバンド企画では、「高い技術力があり、安い設備投資で事業展開できると主張しています。
松本氏 ワイヤレスブロードバンド企画は、「我々はいいシステムを作っているから、安い投資で設備を作れる。だからサービスも安い料金でできる」と主張しています。もしそれが事実なら、KDDIの株式は暴騰したっておかしくありません。なぜなら、その安くていいシステムを世界で売れば、世界中のWiMAX事業者が飛びつくはずだからです。
KDDIがそんなに安くてすばらしいモバイルWiMAXを密かに作っているなら、なぜ事業を分社化させてそのIPRを世界中に売りに行かないのでしょうか。もしそれをやらないなら、株主の利益に反していると言えませんか。確実に大きなチャンスを逸しているのですから。
もし安くていいシステムを作る技術を持っているというのが事実なら、世界中のモバイルWiMAXを支配できるはずです。それなのに、世界中に展開していないのは、本当はそんな技術はないからなのではないでしょうか。
KDDIの技術が優れているという議論には、明確な根拠があるように思えません。この点がオープンワイヤレスネットワークとワイヤレスブロードバンド企画との明らかな差とされるのだとしたら、到底納得はできません。
石川 ワイヤレスブロードバンド企画は技術力の根拠の1つとして、「制限がある20MHz幅でも事業化できる」としていますが、この点についてはいかがですか。
松本氏 KDDIの技術の正確な内容は把握できていません。しかし、計画している設備投資の数字がとても低いのです。このことから、ワイヤレスブロードバンド企画は小さいセルでこじんまりとしたシステムを作るのではないか、と想像できます。そういう前提ならば、20MHzでできるという明快な発言も納得がいきます。これはあくまでも推測の範囲を出ませんが、整合性が行く話です。
うちとしては、基本的には2事業者それぞれに30MHz幅を割り当てるのが正しいと思っています。ただ、もし一方が20MHzで、もう一方が30MHzになるというのであれば、ワイヤレスブロードバンド企画には、是非とも20MHzでこじんまりやっていただきたい。ワイヤレスブロードバンド企画が自ら選んだことになるわけですからね。KDDIは20MHzでできるとおっしゃっているので、20MHzでやっていただく。私たちは30MHzをつかって大がかりなシステムをやりたい。
解決策とすれば、いい方向性のように感じます。そうすれば、めでたしめでたしじゃありませんか。この主張には、エゴは一切ありません。
「MVNO中心主義」のオープンワイヤレスネットワークは絶対当選する
石川 オープンワイヤレスネットワークが落選するはずはないとおっしゃいますが、その根拠は。
松本氏 ビジネスモデルのオープン性に関して、うちのやり方では落選するはずはないと考えています。総務省はオープン性を実現することを重視していると明言し、レイヤーを分けました。さらにボトルネックを独占させないために3分の1ルールを作ってて、力のあるキャリアが重要な部分をコントロールしないようにして、新規参入事業者にチャンスを与えようと考えたはずです。
だからこそ、オープンワイヤレスネットワークはMVNO中心主義を主張しています。総務省の方針に真っ正面から答えたのがオープンワイヤレスネットワークです。「MVNOをやります」と言うだけなら誰にでもできます。しかし、それでは何のコミットにもなりません。
オープンワイヤレスネットワークは、キャリア自らはインフラの整備に専念し、サービスは提供しません。すべてがMVNOです。MVNOが成り立つ価格や条件を出せなければ、会社は成り立たない訳です。株主であってもなくても、同じボリュームであれば、同じ条件で公平に扱うと言っています。MVNOを考えている事業者は安心して参入できるはずです。
しかし他の会社はそういうことを言っていません。総務省が求めたことを、身をもってビジネスモデルにしている我々が落選し、その他の事業者が当選するなどということがまかり通るのでしょうか。
優等生のオープンワイヤレスネットワークは落選して、KDDIがコントロールするワイヤレスブロードバンド企画が早々と当選という情報が流れては、疑惑が起こらないわけがありません。何かの間違いだと信じたいです。
ビジネスモデルのオープン性については、自信があります。他の事業者が当選したら、ネットワークがこじんまりしたものになるのではないか、本当にMVNOとして参入させてもらえるのかという不安が残ります。
我々の主張に何か間違いや誤解があるなら、ぜひ指摘していただきたいと思います。
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