携帯OSの王座を守るために重要な3つのポイントとは――シンビアンの久社長
携帯電話向けOSベンダー最大手のシンビアンで社長を務める久晴彦氏が、2008年のビジョンを説明。GoogleがLinuxベースの携帯電話向けOS「Android」を発表するなど、携帯業界に新しい流れが生まれつつある中、3つの方針を軸にさらなるシェア拡大を目指すとした。
携帯電話向けOSベンダー、シンビアンの久晴彦社長が、メディアを集めて開催した新年会の席で、2008年のビジョンを説明した。GoogleがLinuxベースの携帯電話向けOS「Android」を発表するなど、携帯業界に新しい流れが生まれつつある中、シンビアンは3つの方針を軸にさらなるシェア拡大を目指すとした。
1つは、モバイルブロードバンドへの適切な対応だ。Symbian OSをプラットフォームとして採用しているドコモは、今春にも下り最大7.2MbpsのHSDPAを開始する予定で、その後の高速化ロードマップには上りを高速化するHSUPAやスーパー3Gが控えている。また、ドコモがどのような形で参入するかは決まっていないが、国内外ではモバイルWiMAXにも注目が集まっている。
久氏は「2008年は、これをいかにスムーズに、シームレスにサポートしていくかが重要になってくる最初の年」と位置づけ、「2010年から2011年くらいにかけてどんどん広がるスーパー3Gに向けて、メーカーや通信キャリアを技術的にサポートしていくことが重要な方針の1つ」と説明した。
2つ目は、見やすく使いやすいユーザーインタフェースの開発だ。回線が高速化すると、通信キャリアやコンテンツ/サービスプロバイダには“それをどう使うか”が大きな課題となり、「太いパイプ(高速回線)によってなだれ込んでくるいろいろなサービスやコンテンツをいかに見やすく、使いやすくするかというユーザーインタフェースが重要になってくる」と、久氏は指摘する。
3つ目として挙げるのは、品質やパフォーマンス、セキュリティ面など、携帯電話の基本的な部分のサポートだ。携帯電話は、日々の生活をサポートするツールとして手放せないものになっており、「リブートしたり、フリーズすることがあってはならない」(久氏)。また、決済機能が普及や情報保護などの観点から、セキュリティの強化もますます重要になってくる。こうした基本性能のサポートも引き続き強化するとした。
「今までの経験から、さまざまなコンポーネントを集め、互換性を保ちながら品質とパフォーマンスのよい製品を作っていくのは大変なことだと認識している。“Google対抗をどうするか”という話があるが、シンビアンとして、この3つの課題を着実に責任をもってやっていくことが重要だと考えている」(久氏)
こうした方針を支えるのが、Symbian OS v9.5に新たに追加した3つの機能だ。新たなUIを開発するためのベースとなるScreenPlayや、さまざまなネットワークが混在する環境で最適なネットワークを自動で選択するFreeWay、消費電流を抑えるSMP(Symmetric Multi Processing)は、今年の方針をサポートする主幹の技術だと久氏は説明した。
日本のSymbian OS搭載機の累計出荷台数、3000万台を突破
2007年はシンビアンにとってよい1年だったと久氏は振り返る。2007年11月7日に開催した年次イベント「Symbian Summit Tokyo 2007」は、800人超の来場者を集めて盛況のうちに終了し、年末にはSynbian OSを搭載したドコモのハイエンドモデル「D905i」「F905i」「SH905i」「SO905i」も出荷された。日本におけるSymbian OS搭載機の累計出荷台数は2007年11月末時点で3000万台を突破し、うち1500万台は2007年に出荷されるなど好調に推移。1月22日には防水ケータイ「F705i」が店頭に並ぶ予定で、これが日本で70機種目のSymbian OS搭載機になるという。
先進機能を搭載した端末が主流の日本市場はシンビアンにとって重要な市場であり、久氏は「2008年もここでフラットになることなく、日本メーカーの海外展開をサポートするなどの施策で市場を活性化させたい」とした。
関連記事
スマートフォンはPC、携帯電話、インターネットの中心に――英Symbian CEO
英Symbianのナイジェル・クリフォードCEOが、年次イベントで同社の現状とビジョンについて説明。ユーザビリティ、ネットワーク、バッテリー消費の3点を改善する、Symbian OSの新たな機能拡張にも言及した。日本の市場ニーズが世界のスマートフォンをデザインする――シンビアンがプライベートイベントを開催
シンビアンは、今年で5回目となるプライベートイベント「Symbian Summit」を開催。スマートフォン用OSの最新動向について紹介した。携帯に押し寄せるPCのトレンド、「業界大手との競争には慣れている」――英SymbianのクリフォードCEO
年次イベント「Symbian Summit Tokyo 2007」の開幕を目前に控えた11月6日、英SymbianのクリフォードCEOとウッド副社長、シンビアンの久社長がSymbian OSの現状と今後のビジョンについて説明。同日、Googleが発表した携帯向けOSについてもコメントした。パチンコ屋でも聞こえる通話、セキュリティの機能強化は「趣味です」――富士通ケータイの作り方
開発体制の一新が功を奏し、販売ランキングの常連入りを果たすようになった富士通ケータイ。端末開発を率いるモバイルフォン事業本部長の佐相秀幸氏が、最新モデル「F905i」「F705i」を紹介するとともに、富士通の目指す携帯開発のあり方について説明した。デバイス部門、家電部門との連携と“初”へのこだわり──シャープが見通す携帯の未来
最後発としてスタートしたシャープの携帯電話事業は、今や国内ナンバーワンのシェアを誇る。その裏には社内各部門との連携と、“初”へのこだわりがあったことを常務取締役 通信システム事業本部長の長谷川祥典氏が語った。アプリの一部も共通化を検討――ドコモの共通プラットフォーム「MOAP」のこれから
携帯電話開発の現場は、高機能化とコスト低減という相反する課題を抱えている。これを両立させるための施策として、ドコモが2004年に開始したのが共通プラットフォーム「MOAP」の提供だ。ドコモの山田隆持副社長は今後、ミドルウェアだけでなく、アプリの一部についても共通化を検討しているとした。携帯はいずれPCの機能を凌駕する──三菱電機の端末開発の方向性
Symbian Summit Tokyo 2007では、三菱電機の通信システム事業本部 副事業本部長の石毛謙一氏も登壇。端末開発の現場の声として、Symbian OSの利点と今後の進化に対する要望を紹介した。2009年度中をめどにスーパー3Gの開発を完了させたい──ドコモの中村氏
ドコモのロードマップの中で、現行3Gから4Gへの架け橋的な役割を担う「スーパー3G」。NTTドコモ 無線アクセス開発部の中村氏は、2009年度中をめどに開発を完了させる見通しだと話した。2008年にはHSUPAのサービスを開始できる──NTTドコモ 中村維夫氏
Mobile Asia Congress 2007の基調講演に登壇したNTTドコモの中村維夫氏は、ドコモが目指すシームレスなユビキタス環境や、HSUPA、スーパー3G、4Gの早期導入を目指していることについて説明した。
関連リンク
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.