“俊敏で活気と結束力のあるドコモ”に変わる――ドコモ、山田新体制がスタート
「新生ドコモのキーワードは変革とチャレンジ」――。初の定例会見に臨んだドコモの山田隆持社長は、今後の事業の方向性をこんな言葉で表現した。顧客満足度の向上に向けた具体策にも触れ、携帯電話へのエージェント機能の搭載やドコモショップの拡充などを挙げた。
6月23日、取締役会の承認を受けてドコモの社長に就任した山田隆持氏が、初の社長会見に臨んだ。会見の冒頭、山田氏は「責任と緊張の中にあるが、よりよいサービスを提供し、お客様に永く愛していただくドコモとして全力を傾けていきたい」と抱負を述べるとともに、今後のドコモの取り組みについて説明した。
山田氏が、今後のドコモの取り組みを表すキーワードとして挙げたのは「変革とチャレンジ」。これを実現するためのポイントは(1)顧客視点での変革(2)新たな価値の創造に向けたチャレンジ(3)明るく元気で活力ある会社づくり の3つだ。
ドコモショップを増やし、顧客の声に応える――顧客視点の改革
ドコモは4月、一人負けからの脱却を図るべく、“顧客視点の改革”を目指す「新ドコモ宣言」を打ち出しており、山田氏は「この改革の実行こそが、第1の大きな使命」と強調。この改革が成功するかどうかがドコモの将来を大きく左右するとし、「何としても成功させたい」と意欲を見せた。
新ドコモ宣言では、顧客の要望に基づく25のプロジェクトを立ち上げており、ドコモは順次改革を進める計画。山田氏はその中の具体的な取り組みについて説明した。
1つはドコモショップの拡充だ。現在、約2000店舗が稼働しているドコモショップに150店舗を追加するとともに、ショップより小規模なドコモスポットをドコモショップに拡大。利用者との対話チャネルを広げることで、より細かいユーザーの要望に応える方針を打ち出した。また、多岐にわたる利用者の要望に迅速に答えるための「フロント支援センター」を本社機構として立ち上げ、接客の最前線に立つスタッフを支援する。これは、判断が難しい利用者からの要望を本社組織の権限でさばき、顧客に迅速に回答することを目的としたものだ。また、「まだ構想段階」(山田氏)としながらも、ドコモショップに予約システムの導入を検討していることも明らかにした。
ネットワーク品質については、スポット的に電波が入りにくい場所の改善に注力するとし、電波が入りにくいという問い合わせを受けてから48時間以内に利用者を訪問し、対策を講じる体制を整える。当初は関東を中心に展開し、順次対応エリアを拡大する計画だ。
山田氏は本社側の体制にも言及し、複雑になっている料金やサービス、商品を使いやすく分かりやすいものに変えていくと説明。また、現場スタッフに対しては、新ドコモ宣言の精神を理解するよう働きかけるとともに、自らも支店や代理店に足を運び、「お客様と接している人の意見をしっかり聞き、どうしたら本当に顧客満足が得られるのか議論したい」という。「何としてもこの宣言で“ドコモは変わった。顧客の心に目を向けるようにた”と、お客様にいってほしい」(山田氏)
エージェント機能をケータイに――新たな価値創造へのチャレンジ
ケータイの契約数が1億を超え、パケットや音声の定額制導入が進むなど、収益がこれまでのような右肩上がりの推移を見込めなくなる中、各キャリアが注力しているのが“新たな価値の創造”。ドコモは、ユーザーが“いつも身近に手にしている”という携帯電話の特性に着目し、「さらに便利に快適に使ってもらうこと」にチャレンジすると山田氏。新たな価値の創造については、(1)生活サポート(2)インターネットの携帯化(3)携帯と他事業との融合サービス(4)グローバル&ボーダレス の4点を重要視していると話す。
生活サポートでは、個人の好みや行動に基づいた情報を配信するエージェント機能を携帯に取り入れ、高度化したサービスの提供を目指す。「簡単な設定でさまざまな情報が携帯に提供されるのは、お客様にとって便利。エージェント機能は(提供に向けた)一歩手前まで来ている」(山田氏)
インターネットの携帯化は、携帯ならではの認証やGPS、リアルタイム性を生かしたサービスを提供することで、“インターネットをさらに進化させる”というビジョンに基づく施策だ。「PCでできることは、どんどん携帯でできるようになってきている。動画やリッチコンテンツにも取り組むが、さらにケータイの特性でインターネットを進化させることにも取り組んでいきたい」(山田氏)
この取り組みで実現するのは、こんな世界だ。「例えば絵の好きな人が、銀座の歩行者天国を歩いていると、携帯側で“銀座にいること”“絵が好きなこと”に基づいた“今日の夕方5時まで、銀座の画廊で絵の展示会をやっている”という情報をプッシュで配信したらどうか」(同)。ただ、こうした情報は、たくさん送られると迷惑メールになりかねないため、「ユーザーの好みに合わせて、どういうどころを出せば喜んでいただけるかを、これから研究開発するところ」(同)と付け加えた。
融合サービスは、他の事業ドメインとの連携でシナジー効果を発揮できる分野へのアプローチ。携帯網と固定網の融合や通信と放送の融合、ITS、情報家電など、さまざまな分野において、顧客視点で「何が望まれているのか」を検討しながら連携を模索する。「シナジー効果が出るなら、異業種と積極的に提携していきたい。これまでもマクドナルドなどと連携してきたが、さらにドコモの営業の範囲を広げるということで取り組んでいきたい」(山田氏)
グローバル&ボーダレスは、収益面でも好調に推移している海外戦略の推進だ。これまでは、コネクサス・モバイル・アライアンスへの参画など、アジア・太平洋地域の主要キャリアとの連携強化を図ってきたが、今後はバングラディシュへの投資のように、成長が期待されるエリアへの投資も検討するという。
“元気がない、腰が重いドコモ”からの脱却――明るく元気で活力ある会社づくり
番号ポータビリティの開始以降、純増数で一人負けを喫し、シェアを落としたことなどから、「最近のドコモは元気がないとか、対応スピードが遅く腰が重いといわれているのではないかと危惧している」という山田氏は、今後のドコモは「活気のあるドコモ、俊敏なドコモ、結束力のあるドコモに変わる」と宣言。社員にその能力は備わっており、それを刺激し続けることが社長としての責務だと強調した。
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