ラウンド形状の防水ボディに込めた、“手放したくなくなる”ケータイ──「TROPICAL 823P」:開発陣に聞く「TROPICAL 823P」(2/2 ページ)
ソフトバンクの夏モデルは「女性」をターゲットにする機種を多くそろえる。中でも丸みを帯びたボディと防水性能を備えるパナソニック モバイル製端末「TROPICAL 823P」は、サブネームが示すとおりの“トロピカル”な若々しい機種に仕上げられた。TROPICAL 823Pは何を目指した端末か、その意図と開発の背景をTROPICAL 823P開発チームに聞いた。
2つの色を重ねて、“TROPICAL”っぽい透明感やみずみずしさを表現
初の防水、しかも機能を妥協することなく丸いボディデザインを実現させるという困難な設計に取り組む設計開発チームをさらに悩ませたのが、デザインチームがイメージする透明感やみずみずしさの表現。これは「二色成形」という工法を採用して実現した。
二色成形(ダブルモールド)とは、色の異なる2つの材料を組み合わせて造形する工法。TROPICAL 823Pは、ベースになるカラー樹脂の上に、さらに色の着いたクリアの樹脂を重ねて成形することにより、あの質感を出している。なおカラーごとにサブディスプレイ面の色が少し異なるのはこのためだ。
「あとから塗装するのではなく、素材そのもの複数組み合わせることにより、色のあざやかさや奥深さ、そして透明感を演出しました。ただ、重ねる色のバランス調整は苦労しました。この作業だけでも何度も徹夜しましたね」(粂氏)
メープルブラウン、ピュアホワイト、オーシャンブルー、チェリーピンク、ライムグリーン。最終的にこの5色に絞り込まれるまで、何十パターンもの組み合わせを長い日数をかけて試したという。この5色はいずれも“TROPICAL”っぽい、あざやかで透明感のあるカラーと質感に仕上げられた。
また、それぞれのカラーにあわせて、待受画面やメニューのデザインも南国ムード漂うUIデザインを盛り込んだ。
「TROPICALのコンセプトからまず思い描いたのが“南国の花”や“フルーツ”、そして“ビーチ”でした。デフォルトのメニューUIはその本体カラーに合わせて作り込んであります。開くたび、画面を見るたびに晴れやかな気分になれると思いますよ」(メニューコンテンツ担当のボンガード・ケルスティン氏)
工場と密にやりとりし、シビアな設計を製品として結実
“TROPICAL”っぽさを最大限に演出するために用いた2色成形は、ボディ表面だけでなく内部設計のハードルも上げた。樹脂を重ねた分だけ厚さが増すので、内部スペースはより圧迫されることになるためだ。
「サイズはキープしつつ、3インチの大型ディスプレイを入れる。しかもデザインを損ねるので表面に露出するようなネジ止めの手法も使えない──。特にディスプレイ周辺の設計は苦労しました」(粂氏)
加えて防水性能の実現のため、部品によっては構造から見直す必要も生じた。
「例えば、裏面の外部スピーカーは防水のために膜を被せてあります。普通は膜を被せるとその分、音圧も下がってしまうわけですが、着信音などが聞こえにくくなってしまってはそもそもだめです。そのためこの膜は、“水は通さないが空気(つまり音)は通す”素材を新たに採用しました。そのほかにも細かい工夫が要所にあります。これらは製造工場そのものの精度も高くないと、歩留まりが悪くなってしまうんですよ」(粂氏)
この要求に応えるため、工場の製造管理を担う政本亨氏は何度も開発チームのもとに足を運んだという。「ほかの機種以上に打ち合わせを重ねた気がします。防水性能に関しては、よくある防水評価テストに加え、ユーザーが端末をどう使うかといったあらゆるケースを社内にワーキンググループを使って議論しました。防水端末だけにユーザーの利用シーンも広がりますから、テスト項目を作成するだけでも大変な苦労がありました」(政本氏)。
「少しでも精度が狂うと防水性が損なわれてしまいます。この調整は大変でしたね」(粂氏)
こうしたテストと試行錯誤の末に誕生したTROPICAL 823Pは、水流をかけても真水の水槽に沈めても浸水しないIPX5/IPX7相当防水性能を確保。水回りやお風呂、水辺やプールなどでも安心して使える防水ワンセグケータイとなった。
「わたしたちは“単なる防水性能付きケータイ”ではなく“置いていかずにすむケータイ”ができたと思っています。今後も、どんなときでもケータイを手放さずにいられる、そして“手放したくなくなるケータイ”を開発していきたいですね」(井端氏)
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