auの「よしもとケータイ」とフルチェンサービスに見る、「冷え込む携帯市場」対応策
よしもと芸人プロデュースの「よしもとケータイ」完成披露イベントが都内で行われた。各芸人がそれぞれカスタマイズ箇所の監修を担当し、外装と内蔵コンテンツを一気に変更できるフルチェンサービスとして、主に若年女性ユーザーをターゲットに据えて展開する。このサービスとともに、今後さらに冷え込むと予想される国内携帯市場に対応するための戦略もかいま見えた。
東京・原宿のKDDIデザイニングスタジオで10月17日、よしもと芸人がプロデュースするau携帯「よしもとケータイ」の完成披露イベントが行われた。
よしもとケータイはソニー・エリクソン・モバイルコミュニケーションズ製の「フルチェンケータイ re」をベースに、外装や待受画面、メニューUI、メール着信音などを千原ジュニア、宮川大輔、ケンドーコバヤシ、麒麟、千原せいじらよしもと芸人が各パーツを企画、監修したオリジナルモデルとして展開する。発売は11月12日。価格は1万3545円(フルチェンセット価格が1万3020円、パーツ交換手数料が525円)で、既存フルチェンケータイ reユーザーでない場合は別途端末本体の購入も必要となる。
auのフルチェンサービスは、背面パネルやバッテリーカバー、ダイヤルキーといった外装と待受画面やメニューUI、着信音、ピクトアイコン、内蔵コンテンツなどの内装を変更できる携帯着せ替えサービス。着せ替えは端末をauショップに持ち込んで依頼する手法で実施し、「1つの端末を長く使いたい」「好みのデザインに変更したい」「人とは違うケータイがほしい」といった細分化するユーザーニーズに応える主目的とともに、キャリアや端末メーカーにとってはショップに出向いてもらうことで生まれる営業チャンスやブランド力の向上、そして1つの機種を長く販売できるメリットなどもある。
フルチェンケータイ reは、2008年夏モデルとして7月に発売された機種。オリジナルの着せ替えパーツや今回のよしもとケータイ以外に、サザンオールスターズコラボの「サザンケータイ」(限定3000台、現在は販売終了)やサッカー鹿島アントラーズコラボの「鹿島アントラーズケータイ」、ファッションブランドのCOACHコラボモデル、プロ野球セリーグ球団コラボモデル、漫画キャラクターや歌舞伎コラボモデルなども登場する。
メール着信ボイスは麒麟の川島明さん、包装箱は麒麟の田村裕さんがプロデュース。「今までで一番低く、格好いい声がとれたと思います。先ほどKDDIの幹部の方がケンドーコバヤシさんに“あれ、イイ声ですね”と間違えて言っているのを見たのが今すこしショックですけど(笑)」(川島)。「“なんで俺だけ箱やねん。普段見せびらかせるようなものでもないし”と最初は思いましたけどね。ぼろい段ボール風ですが、実はしっかりしたつくりになってますのでいろいろな用途にも使えますよ」(田村)
また、本体そのものも10月下旬に新たなカラーバリエーションモデルを追加し、2008年秋冬商戦向けとして継続販売する。さまざまなユーザーニーズに応じたコラボ展開を行ったソフトバンクモバイルの“キャラケー”「fanfun. 815T」の例があるように、コラボレーションの仕方や戦略によってはさらに長く販売される可能性もあるだろう。
「auは、ユーザー全員のニーズに合うケータイをそれぞれ提供したいという考えが根底にあります。ただ、“細分化してカスタマイズした本体”というスタイルだと、製造上の都合で大量のロットが必要で、コストがどうしてもかかります。もちろん製造メーカーの労力も相当なものとなります。一方、“フルチェン”のようなスタイルであれば、小さなロットでも柔軟に実施できるメリットがあります。そういう意味で、今後も幅広く、さまざまなユーザーの要望に応えられるような展開もより行いやすくなると考えています」(KDDI コンシューマ事業統括本部 コンテンツ・メディア本部長の雨宮俊武氏)
2007年末、販売奨励金制度の見直しで携帯の購入方法が大きく変わった。中には「高価になったうえ、2年も使わなければならない」とネガティブなイメージを持つユーザーも多く、1度購入したら“年数縛り”による買い控え傾向も現れる。現に2008年8月の販売台数は前年同月で51.4%と、例年より大きく落ち込んだ。
この状況においてフルチェンのようなサービスは、ユーザーが次に新機種を購入するまでの“間”を埋める新たな商品として展開できることになる。また、商戦ごと、年に数回新機種を開発する端末メーカーにとっても、1つの機種を“できるだけ長く販売できる”ことで負担を軽減できるメリットも考えられる。
最近は同一機能の兄弟機やリニューアルモデルといった機種を複数投入することで、コストをできるだけ抑えつつ多様なユーザーニーズに応じるメーカーも増えている。この点、フルチェンやナカチェンといったサービスなら“年数縛りがある本体”とは異なる形で既存ユーザー向けの中継ぎ策として展開できるのがポイントといえる。撤退や再編が進み、“厳しい”といわれる端末メーカーにとっても、飽和しつつある国内コンシューマー向け携帯市場、特に普及層に向けた今後の商品戦略の1つになってきそうだ。
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