料金最強、ネットワーク最強、端末の機能も数カ月先行――KDDI田中社長らが語る「iPhone 5」と「LTE」:石野純也のMobile Eye 特別編(2/2 ページ)
テザリング対応や料金プラン、そしてエリアの広さや通信速度、基地局数――。iPhone 5をめぐり、あらゆる点で“ガチンコ対決”を繰り広げるソフトバンクとKDDI。改めてKDDI側の優位点を聞いた。
iPhone 4Sでキャッチアップし、iPhone 5で凌駕
3Gについても、iPhone 5は下り最大9.2MbpsのWIN HIGH SPEEDに対応した。門脇氏は「HSPA+(21Mbps)と比べると、スペック的な差はあるが、実効速度は今もトントンだと思っている。その点を考えると、今回のiPhone 5では我々の方が速くなる」と語り、LTEと3Gを合わせたトータルでのネットワークはKDDIが有利との見方を示した。また、「Wi-Fiもコスト的には5GHz帯を入れない方が安いに決まっているが、いつかこういう時がくると思ってがんばってきた」(田中氏)と、速度の出やすい5GHz帯のWi-Fiスポットを導入してきた実績をアピール。並行してAppleとの交渉も重ね、事前の設定が不要になるようプロファイルを端末に埋め込んだという。こうしたKDDIのネットワーク対応については、「Appleにもパーフェクトだと言われた」(田中氏)と胸を張る。
KDDIのネットワークは、iPhone 5のバッテリーの持ちにも差が出るというのが同社の主張だ。「iPhone 4Sの時は電池の持ちが3Gで4割ぐらい違った。緊急地震速報をオンにしていると、2倍弱違う」(田中氏)といい、LTEではiPhone 5に合わせて通信が終わるとすぐに電波を切断するアイドリングストップのような仕組みを導入した。バッテリーの持ちが悪いと思われがちなLTEだが、むしろ、通話と通信両方の電波を見なければいけないCDMAよりもバッテリーの持ちはよくなる可能性もあるという。「eCSFB」という高速なCSフォールバック(音声着信時にLTEから3Gに回線を切り替える技術)を導入するなど、細かな部分の使い勝手にも磨きをかけてきた。
ここまでiPhoneへの対応に力を入れるのは、KDDIのiPhone 4Sが発売当初、FaceTimeやMMS、国際ローミング時のキャリア設定などに対応しておらず、「非常にくやしい思いをした」(田中氏)からだ。時には「技術屋に檄を飛ばしまくった」(田中氏)こともあるという。技術部門出身の田中氏には、ソフトバンクに技術で負けるのがどうしても許せなかったというわけだ。このように改善策を急速に進めた結果、今では両社のiPhoneに大きな差はなくなった。田中氏は「ソフトバンクとの比較でいうと、ほぼキャッチアップできたと思う。劣後解消に普通なら数年かかるが、短期間で追いついてしかも凌駕した」といい、次のように語る。
「テザリングは最初から対応できているので、来年1月15日からのソフトバンクに約4カ月先行した。数カ月先に行けたのは、よく頑張った部下のおかげで自慢したいところ。料金もあちらは値上げだが、KDDIは耐えてiPhone 4Sと同じ。ネットワークが先行しているのは明らかだ。あとは自慢の商品をがんばってプロモーション、営業していくことが必要」(田中氏)
さらに、「3M(マルチデバイス、マルチユース、マルチネットワーク)戦略の世界観をiPhoneの世界にも広げていきたい」と語る田中氏。「コンテンツレイヤーにももう一歩踏み出したい」(田中氏)といい、iPhone向けのサービスにも力を入れていく方針だ。
ただ、KDDIのiPhone 5にも弱点はある。ソフトバンクがたびたび指摘する音声通話とデータ通信の同時利用はその1つ。KDDI版では、データ通信中に音声着信があると後者が優先されてしまう。ソフトバンクのiPhoneも「W-CDMAでもLTEは音声通話と同時に利用することはできず、着信があったらデータ通信が3Gになってしまう」(門脇氏)というが、テザリングが解放されたからこそ、多少回線の速度が遅くても両方を同時に行いたいというニーズは出てくるだろう。また、料金も確かに値上げはしていないため欠点ではなくなったが、横並びであることに変わりはない。
このKDDIのiPhone 5に、市場がどのような評価を下すのか。戦いの幕が切って落とされた。
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