検索
インタビュー

au版iPhone 5のLTEエリアは、テザリング対応はどうなるのか――KDDI 田中社長に直撃(1/2 ページ)

米国サンフランシスコに滞在中、偶然KDDIの田中孝司社長とお目にかかり、「iPhone 5」についてお話を伺う時間をいただいた。KDDIの2.1GHzのLTEエリアは今どういう状況なのか、テザリングは解放するのか、などなど気になるポイントを聞いた。

PC用表示 関連情報
Share
Tweet
LINE
Hatena
Photo
iPhone 5は、KDDIとソフトバンクモバイルから販売される。日本でもLTEの高速通信ができる予定だ

 米国サンフランシスコのYerba Buena Center for the Artsで、次世代の高速通信規格LTEに対応した「iPhone 5」が発表された。発表内容は別途伝えられている通りなのでここでは割愛するが、日本ではこれまでと同様、ソフトバンクモバイルとKDDIから、9月21日に発売される。従来と異なるのは、ソフトバンク版とau版が異なるハードウェアになっている点だ。

 Appleの発表、それに日本での展開についてはまだ詳細が判明していない部分があるので別記事に任せたいが、実はサンフランシスコで偶然KDDIの田中孝司社長に出くわした(田中氏はAppleのイベントに出席するため、筆者はIntelが開催しているIDFの取材でサンフランシスコに滞在していた)。そこでiPhoneに関するインタビューを申し込んだところ、快く取材を受けていただいたので、ここに速報としてお伝えすることにしたい。

KDDIの2.1GHz帯のLTEサポートやいかに?

 冒頭でも述べたとおり、iPhone 5は高速通信が可能なLTEをサポートしたが、日本で使われるさまざまなLTE向け周波数のうち、対応しているのは2.1GHz帯(LTEバンド1)のみである。しかしこの周波数は、KDDIが当初策定していたLTEの導入計画にはなかったものだ。

 かつてKDDIが総務省に提出した計画では、同社のLTEは800MHz帯で全国をカバーしつつ、都市部は1.5GHzを重畳するというものだった。iPhone 5が2.1GHzしかサポートしないのであれば、KDDIの主力LTE網にはつながらないことになる。

 しかし、田中氏によると、iPhoneの発売が決まった段階で、この計画は変更されたという。

Photo
KDDI 代表取締役社長の田中孝司氏(写真は2012年1月のインタビューのもの)

 「データ通信の帯域は今後、爆発的に増えていくため、混雑するエリアでは持っている周波数はすべて重畳していかなければなりません。そうした意味では800MHzも1.5GHzも、もちろん2.1GHzでもエリアを作っていく必要があるのです。iPhoneをやると決めた段階で、すでにiPhoneが対応する日本のLTEバンドは2.1GHzになることが決まっていました。2.1GHzは多くの地域で使われる共通バンドなので、基地局に対する投資も安くなりますから、ならば2.1GHzの基地局も打って(設置して)しまおうということで計画を変更しました。いずれはすべての周波数でLTEの基地局を配置しなくてはならないのです」(田中氏)

 KDDIが「iPhone 4S」の取り扱いを開始したのは2011年末のこと。その後、2012年になって2.1GHzのLTE基地局を設置しているという噂はあったものの、急ごしらえの2.1GHz LTE網は、エリアの面ではかなり狭いのではないかという気もする。そこでこの点を田中社長に聞いてみたが、「時間の問題で良くなる」と胸を張った。

 「我々の主力帯域は800MHz帯ですが、実は2.1GHz帯のCDMAのネットワークも、かなりのエリアで重ねて構築しています。このCDMAの基地局に、すさまじい勢いでLTEの基地局を併設しています。PHSの制御帯域の移動に伴い、2GHz帯CDMAの5MHz分が移動可能になりました。LTEの開始当初は、この空いた5MHz分で2GHz帯のネットワークを作っていきますので、既存基地局を生かしたままLTEのネットワークを重ねていくことができます」(田中氏)

 補足すると、通常、3Gで使っている周波数をLTEに更新していく場合、端末の普及状況に応じて3Gで使う周波数を削り、徐々にLTEへの割り当てを増やしていくことになる。しかし、KDDIの2GHz帯CDMA(3G)は、LTEに使う帯域幅を別の帯域に移動させることができたので、従来の3Gユーザーが利用する帯域に全く影響を与えることなくLTEが併設できるということだ。

 ソフトバンクの場合、主力である2.1GHzのUMTS(3G)に使う周波数を減らしながらLTEに移行しなければならないため、トラフィックが溢れているところはLTE対応端末がある程度普及して3Gの収容量が減っても問題ない状況が生まれた後か、あるいはプラチナバンドで2.1GHz帯3Gの負担を軽くしたエリアからでなければ、LTEへの移行は難しい(あるいは地方など帯域に余裕のあるところは先行してLTEを入れることができる)。

 これに対して、混雑がひどく2.1GHzを重畳していたエリアから順に、3Gユーザーへの影響なくLTE化できるというのは、確かにハードルが低そうだ。とはいえ、KDDIのLTE基地局は、まだ2000ぐらいしかないとの情報もある。

 「総務省が公表している数字には2種類あります。1つは免許の申請数。まとめて申請する会社と必要な数だけ申請する会社がありますが、KDDIは後者で、必要な数しか免許申請していません。もう1つの数字は、電波を出せる状態になった基地局数です。今お話ししているのは、電波を出せる状態の基地局数です。ただ、この基地局数の情報が更新されるまでには、実は6週間ぐらいのタイムラグがあります。具体的にいくつになるとは言えませんが、iPhone 5の発売時点でも、今とは桁が違う数の基地局が電波を出しますし、完全併設で2.1GHzの基地局にLTEを入れていっているので、混雑する都市部では毎週のようにエリアが広がっていくのを実感できると思います。こればかりは“口だけ、数字だけ”は避けたいので、利用者の方々の実感としての声を待ちたいと思います」(田中氏)

 ではKDDIのLTEは、今後2.1GHzが主力になるのか?というと、全方位的にLTE化を進めるというのが正解のようだ。KDDIは2012年秋冬に向けての新端末にも、LTE対応モデルをラインアップしていく。これはWiMAXとLTEに3Gのトラフィックを分散させる意味もあるようだが、実はこの秋冬に登場するLTE対応のAndroidスマートフォンは、800MHzと1.5GHzに対応しており、2.1GHzは使わない。

 「2.1GHzをiPhone専用のLTEとして構築しているわけではないので、この先どうなるかは別の話です。しかし当面の間、AndroidのLTE対応スマートフォンは800MHzと1.5GHzのデュアルバンドになる予定で、2.1GHzは使いません。結果的に2.1GHzのLTEはiPhoneだけで利用することになります」(田中氏)

       | 次のページへ

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

ページトップに戻る